【ifストーリー完結】第46話 if  お互いの嫉妬 ~呼び方を変えたい、話し方を変えてほしい~

【前書き】2024.05.09

 これは第四章ではなく第一章の36~48話のifとなります。

 これを書くにあたった理由としましては、美玖と葉月の行動が非常識すぎるという指摘を受けまして、私自身も読み返したところ確かにそうだと思いました。


 一応、言い訳のようなことを言わせていただきますと、当初は

1.美玖と葉月が怜、桜彩の所へとやってくる。

2.四人で意気投合する。

3.怜と桜彩のトラウマについて告白

4.四人で桜彩の誕生日を祝う

 というプロットを組んで物語を書いていたのですが、小説家になろうの方へ投稿する直前に、桜彩の誕生日を四人ではなく怜と二人きりで祝いたい、と思って突貫作業で話を変更した結果、美玖と葉月の行動に充分な修正が効かずに現在のようになってしまいました。

 先述の通り、私自身も読み返して二人の行動にデリカシーが大きく欠如していると感じた為、当初のプロットに修正を加える形で36~47話を書き直してみようと思います。

 もしかしたら現在掲載している内容と入れ替えるかもしれません。

 修正に当たってのご意見、感想等あれば遠慮なくお願いいたします。


※書き直した美玖と葉月の行動全てにデリカシーが伴っているわけではありません。


 第四章は今週中には投稿開始出来るように頑張っていきますので引き続きよろしくお願いいたします。 




【本編】


「お、おはよう……」


「お、おはようございます……」


 次の日、共に朝食を作る為に桜彩が怜の部屋を訪れる。

 しかし昨日の別れ際の会話が頭に残っており、なんだか恥ずかしくて顔を赤くしてしまう。


「そ、それじゃあ作るか」


「はい、はい……」


 とはいえこうして固まっているわけにもいかないのでぎこちなくも朝食の準備を始めようとする。

 怜が先にキッチンに入るが桜彩はリビングに残ったまま。

 キッチンに入る前にやらなければならないことが残っている。

 手に持っていたそれを広げて着用すると


「あ、それ……」


「は、はい……。れ、怜さんに頂いた物ですので早速使ってみようかと……」


「そ、そうか……。使ってくれて嬉しいよ……」


 せっかくプレゼントしたのに使われないということがなくて良かった。

 やはりエプロンは使ってこそ価値のあるものだ。


「そ、それに、あの、怜さんが可愛いって言って下さったので……」


「あ……」


 頭に残っていた別れ際の会話。

 それを桜彩が口に出して、今まで以上に顔が赤くなってしまう。


「そ、その……き、昨日も言ったけど、可愛いって言ったのはエプロンもそうだけど、その、桜彩もだから……」


 昨日はその台詞を言った後ですぐにドアを閉めて逃げてしまった。

 しかし今ここは怜の部屋の中。

 当然逃げる場所などどこにもない。


「あ……そ、その……ありがとうございます……」


「あ、ああ……」


「……………………」


「……………………」


「そ、それじゃあ作るか!」


「そ、そうですね! せ、せっかくもらったエプロン、使わなきゃもったいないですよね!」


 沈黙を破るように大声を出して、二人は朝食作りを開始した。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 朝食を食べて食後にコーヒーを飲んでいると、傍らに置いていた怜のスマホがメッセージの着信を知らせる。

 横目でそれを確認すると、差出人は目の前に座る桜彩の姉である葉月からであった。


「えっ?」


 何かあったのかとスマホを手に取り桜彩と共にメッセージを確認する。


『桜彩のエプロン 良いじゃない』


 そのメッセージを見た怜が目の前に座る桜彩へと視線を向ける。

 怜がプレゼントを贈ったことは葉月は知らない、いや、美玖に聞いた可能性は十分にあるが、どのようなエプロンを贈ったかまでは分からないだろう。


「あ、実は昨日撮った写真、怜さんと別れた後で葉月にも送ったんですよ」


「そっか。それで」


 視線を受けて桜彩が説明をしてくれる。

 すると怜のスマホが次の着信を知らせた。

 そこには


『聞いたわよ あなた、桜彩のことを可愛いって褒めたらしいじゃない』


「えっ!?」


 思わず怜の口から驚きの声が漏れる。

 再び目の前の桜彩へと視線を向けると、桜彩は少し焦りながら


「す、すみませんっ……! そ、その……れ、怜さんに可愛いって言ってもらえたのが、その、う、嬉しくて……」


「う…………」


 面と向かって言われたその言葉に怜の方も照れてしまう。


「そ、その、ご、ご迷惑でしたか……?」


「う……い、いやその、め、迷惑ってわけじゃないから……」


 恥ずかしそうにしながらも上目遣いにそう問われた怜も何とかそれだけを口から絞り出す。

 迷惑というわけではないのだが、それでも恥ずかしい物は恥ずかしい。


『ちょっと怜、聞いたわよ あんたそんなエモい事言ったの? 成長したのね』


 今度は美玖からメッセージが送られてきた。

 葉月と美玖が親友同士ということは、桜彩が葉月へと送ったメッセージはすべて美玖に見られるわけで。


『ちょっと怜 既読スルーはやめなさい』


『怜 返事しなさいよ』


 そんな姉達のメッセージから目を背けて、とりあえず現実逃避することにする。

 ふと対面に座る桜彩へと視線を向けると、桜彩が少しばかり不満そうな表情をしている。


「桜彩?」


 気になった怜が言葉を掛けると、桜彩はなんとも言えないような感じで呟く。


「……怜さんって葉月と仲が良いですよね」


「え?」


 いきなり予想もしなかった言葉に怜が固まる。

 すると桜彩は先程葉月に向けた様に拗ねた表情をして


「私とは仲良くなるまでにかなり時間が掛かったのに……」


「いや、それは桜彩が誰にも頼ろうとしてなかったからで……」


「それは私も分かっています。怜さんは全く悪くはないって。でも、何か悔しいんですよ」


 桜彩も自分が原因であることは充分に理解しているので、それ以上強く言うことは無い。


「でも、葉月は私よりもスタイル良いし……。怜さんから見ても魅力的じゃないですか?」


「ええ!? い、いや……」


 桜彩の言葉に怜が更に驚いてしまう。

 というか、今の桜彩の感情は


「あ、ごめんなさい。……嫉妬、してしまいましたね」


 そう、今の桜彩は間違いなく葉月に嫉妬している。

 だからこそこんなに拗ねて不機嫌で。


「葉月は私なんかより、ずっと素敵な人だから……」


「桜彩」


 桜彩の言葉の途中で怜が優しく語り掛ける。

 その言葉に桜彩は怜の方を見上げる。


「そんなことは言わないでくれ」


「え?」


 桜彩が見上げる視線を真正面から受け止めて怜は言葉を続ける。


「確かに桜彩の言う通り、葉月さんは葉月さんで魅力的な人だと思う。だけど、それがどうした? 桜彩には桜彩の良いところがある。それに、少なくとも俺にとっては葉月さんよりも桜彩の方が立ち位置が近い」


「え……?」


「昨日言ってくれただたろ? 俺が辛い時は桜彩が俺を支えてくれるって。もしも俺が弱みを見せるような事があれば、その相手は葉月さんじゃなく、桜彩だ。俺は桜彩をそのくらい信用してる」


「怜さん…………」


「だから桜彩、自分を誰かと比べて卑下したりしないでくれ。少なくとも俺は、葉月さんよりも桜彩に隣にいて欲しいんだ」


「…………はい、ありがとうございます」


 そう言った桜彩の顔は、普段怜の前で見せる様な素晴らしい笑顔が広がっていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「あの、怜さん。一つお願いがあるのですが……」


 その後、お茶を飲んでいると桜彩がそう切り出してくる。

 少し恥ずかしそうに上目で怜を見ながら両手の指をもじもじと動かして恥ずかしそうにする桜彩。


「お願い?」


「はい。その、先日、怜さんのことを光瀬さんから怜さんと呼び方を変えましたよね」


「あ、ああ」


 それは怜にとっても忘れられない思い出だ。

 今思い返すだけでも恥ずかしさで顔から火が出そうだ。


「その、私も怜さんのことを……怜って呼んでも……構わないでしょうか?」


「え?」


「あ、その……駄目なら駄目で構わないんです。ただ、葉月がそう呼んでいたのが少し羨ましかったので……。で、ですけど怜さんにとって仲の良い竜崎さんでさえ呼び捨てで呼んでいないですよね。やはり同級生の異性がそのような呼び方は図々しいというのであれば……」


「ちょ、ちょっと桜彩、落ち着いて」


 焦って口数が多くなっている桜彩をひとまずなだめる。

 怜の言葉に桜彩は興奮しすぎたことを自覚したのか慌てて深呼吸して自分を落ちつかせようとする。

 そんな姿も可愛らしいが。


「桜彩、別に俺は桜彩に名前で呼ばれるのは嫌じゃないよ。ただ、そうだな。一つ、俺の頼みも聞いてくれるか?」


「頼み、ですか?」


 これまで怜は桜彩に対して見返りを求めて来ることはなかった。

 そんな怜の言葉に桜彩は疑問符を浮かべる。

 だが怜の人となりを知っている桜彩は、当然怜が不当な要求をしてくるなどとは考えていない。


「俺に対して、その、敬語はやめてもらえると嬉しい。まあ……俺も葉月さんと話す桜彩を見て、羨ましいなって思ったから……」


「羨ましい、ですか?」


「ああ。その……俺も、嫉妬、したというか……」


「えっ?」


 怜も顔を赤くしてそう答える。

 その言葉の意味を理解した桜彩もさらに顔を赤くする。


「まあ、葉月さんは桜彩とは姉妹だから、敬語を使わないというのはまあ当然と言えば当然かもしれないけど……」


「い、いえ、私も嫌ではありません……あっその……………………い、嫌じゃないよ、怜……………………」


 そう小さな声で桜彩が言い直した。


「そ、それでは……じゃなかった、それじゃあれ、怜……これからは怜って呼ぶから……」


「あ、ああ。わ、分かった」


「……………………」


「……………………」


 そしてまたしてもお互いに顔を赤くして視線を合わせられなくなってしまう。

 そのまま少し時間が経過する。


「…………そ、そろそろ登校の準備をするか」


「そ、そうですね、怜さん…………そ、そうだね、怜」


「そ、それじゃあ、桜彩」


「うん、怜」


 そうして二人はそれぞれの準備を始める。

 そして学校が終われば同じ場所へと戻ってくる。

 いくつもの偶然が重なった結果、半同棲生活という、二人が手にしたかけがえのない新しい幸せの舞台へと。



【後書き】

 これで姉二人の襲来のifストーリーは終了となります。

 最初期のプロットに手を加える形で怜が桜彩に二人きりでプレゼントを渡すというストーリーを描くことが出来ました。

 美玖と葉月についても現在本編として投稿されているものよりはまともな性格になったと思います。

 また、現在このifストーリーを本編と入れ替えようと思っております。

(その際には第三章における桜彩の両親との会話等に整合性を持たせられるよう書き換えます)

 ただ今は書き終えたばかりですので、そこは少し時間をおいてから冷静になって判断するつもりです。

 このifストーリーについて、感想等あればぜひお願いいたします。


 また第四章ですが、明日の昼頃から投稿出来ればと思っています。

 今後もよろしくお願いいたします。

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