第3話:夢の中へ帰らないで。

夜、俺が風呂から出ると夢ちゃんは消えていなかった。

ああ、やっぱり夢の世界へ帰ったんだ・・・と俺は思った。


一時の夢とはよく言ったもんだよな。


「せっかく喜んでたのになんで夢の世界へ帰って行くんだよ・・・寂しいだろ・・・」


次の朝、俺はハッとして目を覚ました。

なんとなくだけど、体の右腕に重みを感じた・・・恐る恐る見てみると

いた・・・夢ちゃんが、いたんだ。


でもってやっぱり裸のままだった。

それも俺の妄想、願望が反映してるのかなって思った。

俺の考えは夢の中に影響を及ぼすらしい・・・俺の夢だから。


「よかった・・・戻ってきてたんだ・・・」


夢ちゃんは俺の横で可愛い寝息を立てて眠っていた。


それからも、ずっとそういう日々が続いた。

夢ちゃんは夜になると夢の世界に帰って行く・・・そしてまた次の朝、

俺の横で寝ていた。


不思議に思って夢ちゃんに聞いてみた。


「なんで夢ちゃんは夜になったら夢の世界へ帰って行くの?」


「カンちゃんが眠ると夢を見るでしょ・・・夢を見たとき、夢の中に

私がいなかったら寂しいかなって思って・・・」


その言葉を聞いて俺は夢ちゃんを目一杯抱きしめた。


「そんなに強く抱きしめたら壊れちゃうよ」


「ごめん・・・君の気持ちが嬉しくて・・・」


でもよく考えたら夜、夢ちゃんが夢の世界に帰っちゃったら、俺はいつに

なったらこの現実の世界で彼女とエッチできるんだ?

夢ちゃんがいる昼間にするのか?


「あのさ、夢ちゃんの優しさには感謝だけど、その気持ちを踏みにじるような

こと言ってごめんだけど・・・」


「俺としては、俺のこの現実の世界で夢ちゃんには夜もずっと俺と

いてほしんだ・・・

朝まで俺のベッドで寝て朝を迎えて欲しいんだけど・・・ごめんね」


「夢の中で私と会えなくてもいいの?」

「私がこっちにいると夢の中では会えないんだよ・・・」


「そりゃ、夢の中でも会っていたいけど、でも俺のベッドで俺のそばに

いてくれたほうが嬉しい・・・」

「だから夜になってももう夢の中には帰らないで欲しい」

「ここにずっといてよ・・・一秒でも長く君といたい・・・俺には君が

必要なんだ」


「なんだか、それって愛の告白みたいだね」

「プロポーズみたい・・・おかしい」


「俺は真面目に言ってるの・・・」


「私と夜を共にして、私とエッチしたいんだよね?」

「この現実の世界で・・・」

「それに夢の中ではエッチさせてよってしつこく迫ってきてたよ」


「うそ・・・まじで?そこは覚えてないわ・・・」

「で、夢の中で俺はやっちゃってるのかな・・・夢ちゃんと・・・」


「やっちゃってるね・・・え〜と何回くらいしたっけ?」


「数なんか思い出さなくていいよ?」

「そうなんだ・・・もうやっちゃってるのか・・・」

「悪い・・・夢の中とはいえ・・・ごめんね」


「誤ってくれても、遅いよ」

「夢の中だから・・・まあ、なにしても犯罪にはならないからね」


「犯罪って・・・俺、そんなにひどいこと君にしてたの?」


「さあ、どうなんでしょ」


「え〜落ち込むな〜・・・自己嫌悪だよ・・・最悪だな」


「うそだよ・・・」


「え?」


「う・そ・・・カンちゃんはいつでも私には優しいよ」


「まじで?・・・なんだよ、俺って最低って思ったのに、脅かすなよ」


「もしカンちゃんが酷い人だったら、私ここにいないよ」

「エッチだって絶対させてあげてないし・・・」


「俺って夢を見たら自分の人格が変わるのかと思った」


「でもさ・・・俺の気持ちは分かっただろ?だからさ、もう夢の世界に

帰らなくていいじゃん」


「分かった・・・じゃ〜ずっといてあげる・・・」

「朝はちゃんとカンちゃんを起こして、朝食作って食べさせて大学へ送り出して

で、お掃除と洗濯を済ませてご近所のスーパーでお買い物してカンちゃんが

帰って来るまでに夕食の支度をして晩ご飯食べさせて一緒にお風呂に入って、

仲良くベッドでラブラブね」


「何?一緒に風呂に入るの?」


「別に・・・夢の世界でしてたことを、するだけだよ」

それにエッチだって、もう夢の中でやっちゃってるんだから現実の

世界でだって、やっちゃってもなんの問題ないでしょ?


「あ、あのさ・・・エッチって・・いいかのな?」


「エッチしたくないの?」


「いやしたいけど・・・すぐにじゃなくてもいいから・・・できれば・・・」


「いいよ、女性に興味ない人だったら最悪で幻滅だけど・・・」

「まあカンちゃんは、どスケベだけど悪い人じゃないからね」

「スケベを超えるだけの優しさ持ってるから・・・」


「スケベで悪かったな・・・俺は自分に正直に生きてるだけだけどな」

「青春を謳歌して何が悪い?・・・愛を求めてが悪い?


つづく。

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