3、パススピードの重要性 好例も挙げます

 ここで挙げたシーン以外にも、90分通して見て頂ければ、パススピードの違いが嫌というほど分かると思います。何でもかんでも、ただ速ければ良いというものではありませんが、サイドチェンジやタテパス等の攻撃の起点になるパスであれば、速ければ速いほど良いです。パスを受けるまでの0コンマ何秒の差で、受ける選手に余裕が生まれ、次のプレーの幅が広がります。バックラインで時間を使いながら回すパスでも、浦和レッズとマンCの差は明らかで、更にタテパスの時はもっと顕著だという話です。もう少し、この試合での例を出していきましょう。立ち上がり5分頃まで、浦和レッズが高い位置からプレスをかけて良い試合をしていましたが、その後は徐々に押し込まれ、防戦一方になりました。通常、深く引いて守る相手を崩すのは難しいのですが、マンCはいとも容易く穴を突いてきます。5分20秒頃、最後尾から一気に浦和レッズディフェンスの背後を狙うパスは、鋭い弾道で跳ね返せません。直後、浦和レッズも同じように裏を狙いますが、山なりの遅いパスで質が全く異なり、ノーチャンスです。5分50秒頃、楔のパスはスピードがあったため、浦和レッズの選手も狙って囲みに行きますが間に合いません。6分30秒頃、サイドへのパスを浦和の選手が狙いに行きますが、一歩及ばず入れ替わってしまいます。7分頃、何度も入れてくる楔のパスもスピードがあり、浦和の選手が密集している中でもシンプルに、ダイレクトで繋いできます。こうして浦和レッズの包囲網をかい潜りながら、足が止まったところですかさずシュートを打って来るわけです。これを浦和レッズのパススピードでやろうとしても、すぐに相手に捕まって逆襲を受けてしまうでしょう。


 冒頭で述べた通り、浦和レッズの選手で唯一、マンCのレベルのパスを出せていたのが、28番・ショルツ選手でした。浦和レッズの良かった例も挙げましょう。77分頃に岩尾選手が下がり、代わってショルツ選手がキャプテンマークを巻きました。見て頂きたいのはその直後、79分頃のシーンです。右サイドから攻め込んできたマンCの攻撃をペナルティエリア内で堰き止めると、ラインを割りそうなボールを追いかけてキープ。自陣コーナー付近から、鋭いタテパスを使ったワンツー、ワンツーで相手陣内まで持ち上がり、逆サイドで待っていた10番・中島翔哉選手へ。このパスも強めのものでしたので、中島選手は余裕を持って前を向き、そこから中に切り込んで、最後はあと一歩という惜しいチャンスを作りました。ショルツ選手のパスを受けた瞬間、目の前には相手ディフェンダーが一人しかいませんでしたので、中島選手の受け方次第でそのままシュートまで行けたでしょう。このシーン以外でも、ショルツ選手のタテパスのスピードは、マンCの選手に劣るものではありませんでした。気になる方はフル動画で、そうしたシーンを探してみて下さい。幾つか見付かると思います。逆にこのシーンの少し後、83分頃には、岩尾選手と交代で入った22番・柴戸海選手が、クリアボールを拾ってサイドへ展開するのですが、これも弱くて気の抜けたパスだったため、マンCの10番・ジャック・グリーリッシュ選手に奪われ、あわやカウンターというピンチを招きました。パススピードの重要性がご理解頂けたでしょうか。

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