第15話

チューズはいつも通りゴクウとフレイと一緒にゴミ処理場で仕事をしており、たった今仕事が終わったようだ。


「よし、今日もよくやったな!俺はムサシのとこに向かう」


仕事を終えるとそそくさとゴクウは雲の上に乗りながらどこかに行ってしまった。


「チューズ、先週出来なかった分も含めて稽古をつけてやる」


「はい、お願いします!」


フレイはチューズの方を向くと全身から炎を出していく。それを見たチューズも同様に全身から炎を出す。


「行くぞ!」


フレイはチューズの元に素早く詰め寄ると右拳を振り下ろすが、チューズはフレイの腕を弾いて防ぐと蹴りをフレイの胴体に入れる。


だがフレイは足元から火を噴射することで勢いよく後ろに下がることで蹴りを防ぐ。


「やっぱり体術は合格点まであるな。ならこっちの方はどうだ?」


「火輪(かりん)」


フレイは上空に巨大な火の玉を作りチューズに向けて放つ。


「ちょっ、いきなり大技すぎませんか!?」


チューズはフレイが生み出した巨大な火の玉を見て冷や汗をかく。


「爆熱炎拳(バクネツエンケン)」


チューズが右手に炎を凝縮させて、フレイが生み出した火の玉に向かって叩きつける。しかし、火の玉の勢いに負けて叩きつけた拳が徐々に後ろに押されていく。


「炎流避(エンリュウヒ)」


チューズは残った左手を火の玉に押し付けると火の玉はチューズの左右に流れていき炎の直撃を免れる。


「避けたな?まだまだ火力の方は低いようだな」


「フレイさんの火力が高すぎるんですよ」


フレイは地面に座り込むチューズに手を差し伸べると、立ち上がらせる。


「お前は体術の方はかなり良いから、火力が課題だな」


「そうですね、俺は炎を放つことは苦手なので体術との併用で補っているのですが、あーいった大技には弱いですね」


チューズはフレイからのアドバイスを受けて自分の弱点を確認する事が出来たようだ。


「緊急連絡!超能隊本部に謎の男が現れて宣戦布告後に消えました。ブレインさんから詳細を話すので超能隊の皆さんは今すぐ本部に来てください!」


パシーの声が突如頭に響き渡る。


「はぁ、何でこうも毎回アクシデントが起こるんだ」


フレイはため息をついた後に頭を掻いてだるそうな表情になる。


「ため息吐いてないで急いで本部に戻りますよ!」


チューズは文句を言うフレイに注意をすると走り出す。注意をされたフレイはもう一度ため息をつくと足から火を噴射して飛びながら本部に向かう。


---5分前


超能隊本部はいつも通り賑わっている。テーブルでトランプをしている人達やバーのカウンターで酒を飲んでいる人など様々である。


トントントン


本部の入り口にある扉をノックする音が響き渡る。


「またバルのやつが道場破りにでも来たか?」


カウンターで酒を飲むビースが扉の方に笑いながら目を向ける。


だが扉を開けて入ってきたのはバルでは無くコピであった。


「こいつは前に任務を邪魔してきたコピっていう奴だ!」


テーブルでトランプをつかって遊んでいたオーラが立ち上がり、体からオレンジ色のモヤを出して戦闘体制になる。


「ご紹介頂きありがとうございます。私はメシアのリーダー、コピと申します。今回は皆さんに忠告をしに来ました」


コピは華麗な動作でお辞儀をすると口を開く。


「関係ねぇ!今ここでぶっ飛ばす!」


コピが口を開くが問答無用でオーラはコピに駆け出す。


「オーラ!止まってください!」


オーラがコピとの距離を詰め切る前にオーラと同じテーブルに座っていた眼鏡をかけた少年が声を張り上げる。


「何だよナーブ!」


オーラは声に反応して止まるとバックステップで元いた位置に戻る。


大声でオーラを止めた人物はナーブ・フープ。身長は低く茶髪のおかっぱ頭で丸眼鏡をかけているのが特徴である。


「ナーブさんですね。話のわかる方がいてくれて助かります」


コピはブレインに目を向けると軽く微笑む。


「それで忠告とは何だい?」


ナーブは年齢が低く幼い容姿をしているが、知的な話し方でコピに問いかける。


「それでは単刀直入に言いますね。明日の正午に私の仲間達がこの街を攻め込みます。四方の門に攻め込ませますので、しっかりとご準備して下さい」


コピは両手を広げてこの部屋にいる全員に注目を集めながら話している。


「なに?そんなことを我々になぜ知らせるのです?奇襲でもした方が良かったのではないのですか?」


ナーブはコピの話を信用できないようでさらにコピに質問をする。


「ふふ、それでは意味がないのです。それでは忠告は終わりましたのでこれで私は帰らせていただきます」


再びコピがお辞儀をするとビートが飛び込んでくる。


「黙って帰すわけねーだろ!」


パチン


ビートが鋭く伸びた指の爪でコピを切り裂こうとするが、コピは一瞬でその場から消え去ってしまいビートの爪は空を裂くだけで終わってしまった。


「パシーさん、超能隊の人達を本部に集めてください!」


ナーブはコピが居なくなるとパシーに超能隊を集めるよう伝える。


「分かった!」


パシーは人差し指を額に当てて連絡をする。


---10分後


本部には多くの人達が集まっており、皆の視線は壇の上に立つナーブに向けられている。


「先ほど以前話題になった、メシアと名乗る集団のリーダー、コピという人物がこちらに現れて宣戦布告をしに来ました。内容は明日の正午に四方の門に攻め込むというものでした」


ナーブは先ほど現れたコピの発言を皆んなに説明する。


「内容の真偽は定かではないのですが、対策をしないわけにはいきません。そのため超能隊の皆さんを各地に配置する必要があります。ブレイクさん、僕が皆さんの配置を決めても良いでしょうか?」


ナーブは2階の扉の前の柵を掴みながらブレインの話を聞いているブレイクに確かめると、ブレイクは黙って頷く。


「ありがとうございます、では配置を発表致します。北門をカインズ。南門をブルーム。西門をファビュラス。東門をサイユウ。街中の警備をネイチャーとファイターに行ってもらいます」


ナーブからの発表に文句を言う人は誰もおらず、皆黙って話を聞いている。


「反対意見は無いですかね。それでしたら皆さんには今言った配置について頂きたいです。明日の正午とは言われましたが本当にあちらが指定した時間通りに攻めてくるとは限らないので」


ナーブは一通り説明を終えるとブレイクに視線を送る。


「全員よく聞くのだ!今回の相手は何を考えておるのか分からず戦力も未知数である。だがお主達なら大丈夫であろう。超国最強の自警団の力を見せつけてやるぞ!!」


...「「「「おぉぉぉ!!!!!」」」」...


ブレイクからの檄を受けて全員が歓声をあげる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る