第14話

チリチリチリチリ


アラームの音がいつも通り部屋に響き渡る。


「ふぅ、よく寝たよ」


本日も今までこの部屋で寝ていた人物とは違う人物が起きたようだ。起きて真っ先に全身鏡の前に立ちクシを使って首元まで伸びている金髪を整えている。


「よし、今日も僕はイケてるな!」


自身の姿をチェックした後に黄色の目立つ服に着替えるとそのまま外に出る。


「今日も街中のパトロールだ!」


街中を元気よく歩いていく。


「お嬢さん、朝食中ですかね?私も同席しても良いですか?」


外に出てから5分も経過しないうちにナンパをし始めたようだ。


「マンさん。仕事をサボって女の人に声をかけちゃダメですよ」


女性は軽く笑いながら断る。


「ダメですか、、じゃぁまた今度の機会にお茶をしましょう!」


マンと呼ばれた男は女性にあしらわれるも、めげていないようだ。


「はいはい、さっさとパトロールしてきなさい」


女性は片手をヒラヒラと動かしてマンにどっかいけという意思を見せる。


その後、マンは通りすがりに女性がいるたび声をかけては失敗を繰り返している。


マンがパトロールを始めて30分が経過した頃にパシーの声が頭に響いてきた。


「マンくん、どうせパトロールをしないで女性を口説いてるんでしょ!マンくんに仕事があるから超能隊本部に来てください。寄り道しないでね!」


パシーはマンのことを見張っていたかのようにマンの行動を当ててきた。


「パシーさんには全部お見通しのようですね。私に何の仕事でしょうか。怒られてしまうので大人しく本部に向かいましょう」


そう言って30秒後にまた女性に声をかけるのであった。


---5分前


超能隊本部はいつものように賑わっていた。


だが突然ドアのノックする音が響き、全員が喋るのをやめてドアに注目を集める。普段ドアをノックするものはおらず、全員が不自然に思っているようだ。


「失礼します!道場破りにもう一度来させていただきました!」


茶髪のツンツンヘアーのヤンキーのような容姿をしているバルが再度訪れてきた。


「おうおう、性懲りも無くまたきやがったか。次こそは俺が相手してやるよ!」


カウンターに座っているボサボサ頭の黒髪の男、ビートが立ち上がりバルに歩いて近づく。今回はいきなり飛びかかったりはしないようだ。


「やめぇぇぇい!!!」


2階の扉からブレイクが出てきて大声で叫ぶ。


「まだ何もしてねーよ!」


後ろからのブレイクの大声にビートは体をビックリさせた後にブレイクに向かって反論する。


「そうなのか、悪いことをしたな。お前のことだからまた突っかかってるんじゃないかと思ったな」


ブレイクは悪びれる様子もなくビートに謝る。


「また来たかバルよ。だが今日はワシは忙しいからな、他の者と戦ってくれんか?そやつに勝てたら次はワシが戦ってやろう」


「あぁ、一度負けた俺に拒否権はないからな。分かった」


ブレイクからの申し出を素直にバルは受ける。


「じゃぁ今度こそ俺がやっていいっていうことだな!」


ビートはやる気満々でブレイクに声をかける。


「ビートよ、お主はこれからブルームでの任務があろう」


「げっ、バンさんを怒らせるのはマズイな。今回もお預けかよ、、」


ビートは落ち込みを隠しきれず膝から崩れ落ちる。


「私ちょうど今日暇なやつ知ってますよ!連絡しますね!」


パシーが元気な声でブレイクに声をかける。


「すまぬな、ワシは書斎に戻る」


ブレイクはパシーに一言発すると部屋に戻っていく。


「じゃぁ俺は修練場で待たせてもらうよ」


そう言ってバルは部屋の奥に歩いていく。


--- 一時間後


「やぁ待たせたね!」


マンは扉を開きながら、満面の笑顔で入ってくる。


「遅い!どんだけ連絡入れれば気が済むのよ!」


パシーは眉毛を吊り上げながらマンに対して怒鳴る。


「いやぁ、お嬢さん達が僕の事を呼び止めて来るから足が止まっちゃってね」


「アンタが呼び止めたんでしょ!修練場で待たせてるんだからさっさと行きなさい!」


マンは怒られているにも関わらず全然悪いとは思っていないようだ。


「修練場?誰かと戦うのかい?僕は危険ごとは嫌いなんだ。帰らせてもらうよ」


「こんだけ人を待たせておいて帰らせるわけないでしょうが!!」


帰ろうとするマンにパシーは鬼の形相で詰め寄る。


「わ、分かった、やるよ、、相手は誰なんだい?」


「こないだブレイクさんと戦った道場破りさんよ。話は聞いた?」


「あぁ、話を聞いた記憶はあるよ。懲りずにまた来たんだね。じゃぁもう一度追い返してあげよう」


マンは対戦相手を聞くとそのまま修練場に足を運ぶ。


ドアを開けると部屋の真ん中で正座をして目を瞑っているバルがいた。


「やぁ、君が例の道場破りさんだね。今回の相手をさせてもらうマン・ウィークだよ。よろしく」


マンの声で気づいたのかバルは立ち上がろうとするがそのまま前に倒れてしまう。


「いつつ、足が痺れちまった。もうちょっと早く来ると思ってたんだが、、まぁいい、バル・ジャックだ。よろしく頼む」


バルは何とか立ち上がるとマンに向かって挨拶を交わす。


「マン、修練場あんまり壊さないでよ!今ゴジョウがいないから結界が張れてないんだからね」


頭の中でパシーの声が響いてくる。


「はぁ、無茶な要求をしてくるね。しかしなぜ誰も試合を見に来てくれないんだ。ブレイクさんの時は結構居たと聞いていたのだが」


マンは周囲を見渡すがバルしかこの部屋にはいないことに疑問を持ったようだ。


「まぁ僕の戦いを見たら皆んな僕に惚れちゃうからしょうがないね」


マンはこの状況をポジティブに解釈したみたいである。


「始めていいのか?」


バルは一人で空に向かって話しているマンに向けて聞く。


「あぁ!いつでもいいよ!」


マンはバルに向けて満面の笑顔で返事をする。


「いくぞ!反発泡(リバースバブル)」


バルの足を覆うように泡が現れるとその足を思い切り踏み込む。

泡は破裂する事なく小さくなっていくが、瞬時に元の大きさに戻る。


その勢いでバルは加速しながらマンに近づく。


「硬化泡(ハードバブル)」


マンに近づきながらバルの両手を泡が覆うとマンに向けて拳を振り下ろす。


だが振り下ろした拳は空振り地面に当たる。拳に覆っていた泡は破裂する事なく地面を抉っている。


「そんなに遅い攻撃じゃ僕に当たらないよ」


いつのまにかマンはバルが最初に立っていた位置に移動していた。


「瞬間移動の能力か?」


「いや、僕の能力は光さ。さっきは光の速さで動いただけだよ」


マンは指先に光を灯してバルに自身の能力を明かす。


「なるほどな、接近戦では勝てなそうだ」


バルは手足を覆う泡を消すと上に手を挙げる。


「巨大泡(ヒュージバブル)」


手の上に泡が現れて徐々に大きくなっていく。


「大きな的だね。狙ってくださいと言ってるようなもんだよ。光線弾(レーザーバレット)」


マンは人差し指と親指を立てて銃のようにすると指先から光を巨大化していく泡に向けて放つ。


光が泡に当たると破裂する事なく泡が一気に分裂しだす。


「前の俺とは違うんだよ!分裂泡(ディビジョンバブル)」


バルは巨大化した泡を分裂させる事でマンの光線で泡が破裂するのを防ぐと同時に無数の泡をマンに飛ばしていく。


「反射光線(リフレクトレーザー)」


マンは両手の指から光線を出して泡を破裂させる。光線が泡に当たると泡が爆発し光線は他の泡に向かって反射する。光線が繰り返し反射していくと無数の泡を全て破裂させた。


「なっ、これでもダメなのか、、」


バルは苦しい表情を露わにする。


「なら、とっておきを見せてやる!巨大泡(ヒュージバブル)」


マンの周囲を囲うようにいきなり複数の泡が現れ、徐々に巨大化していく。


「これはまずいね」


マンは終始笑顔だった表情が苦笑に変わる。


マンを包むように泡が大きくなり、次の瞬間泡はいっせいに爆発する。


爆発が収まり煙が散るとそこにいるはずのマンの姿はなく割れた地面しか見えない。


「惜しかったね。僕じゃなかったらあそこで終わりだったかもしれないよ」


バルの背後で指をバルに向けているマンが立っている。だがその姿はボロボロで爆発による影響はあるようだ。


「参った。今のでもダメなのかよ、、」


バルは両手を上に挙げて降参の意思表示をする。


「良い線はいってたよ。最後のは泡を透明にしていたのかい?」


「いや、泡を目に見えないほどの大きさで配置した後に大きくしただけだ。結構自信のある技だったんだがな。」


マンはバルに向けていた手を下ろして、ポケットからくしを出して乱れた髪を整える。


「僕はダメージ覚悟で泡が大きくなる前に僕に光の防護膜を纏って突っ込むしかなかったね」


「はぁ、また課題ができちまったぜ。戦ってくれてありがとう」


バルはマンに向かって頭を下げる。


「戦ってくれた礼としてはなんだが、修行している時に子供を襲っている盗賊を捕まえたんだ。後でここに届けておくよ」


「盗賊?以前サタも盗賊を捕まえていましたね。そうですか、ありがとうございます」


バルはマンから礼を言われると軽く手を振りながら修練場から出ていく。


「はぁ、修練場結構破壊しちゃったよ、、パシーさんにまた怒られてしまうよ。まぁ怒った顔も可愛いから良いけどね」


マンは修練場を壊すなとパシーから言われていたのを思い出すがすぐに笑顔を浮かべ修練場をでていく。

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