第12話
「よく来たな機国の王よ」
ここは帝国の王の間。
帝国の王ヒエン・リンカンが豪華な装飾が施されている椅子に座りながら正面に立つ人物に向けて話す。
「久しぶりだな、ヒエン」
言葉を返すのは機国の王トーマス・アルヴ。
丸い鉄の乗り物の中心に座っており、足元のプロペラが回転して宙に浮いている。
「アンタから話があると聞いた時は驚いたが、大体の予想はできてるぞ」
ヒエンが立ち上がると2メートルほどの身長で筋肉質な肉体を持っている。
「単刀直入に言う。以前から話を受けていた同盟の話を受ける」
「ようやく受ける気になったか。と言うことは近いうちに超国を攻めるんだな」
トーマスはシワまみれの顔で機嫌が悪そうにヒエンと話している。
「あぁ、こちらの戦力もとうとう整ったからの。早いうちに仕掛けたいと考えておる」
「王国にいるマルジンにはこの同盟は知られるだろう。あちらに用意はさせたく無いからな」
掠れた声で話すトーマスとは対照的に大きな声で話すヒエン。
「では、10日後にしよう」
「分かった、では10日後にうちは王国を、そっちは超国を攻め落とす。それでいいんだな?」
「通信機を渡しておく。何かあれば連絡する」
トーマスは乗り物にあるレバーを操作することで乗り物の横からアームが出てきて通信機をヒエンに渡す。
「次に会う時はこの世界から二つの国が無くなった時だな」
ヒエンが笑いながら通信機を受け取るとトーマスは何も言わずに部屋から出て行った。
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王国の円卓の間ではアース王と十騎士が円卓を並んで座っており、アース王の隣に老婆が立っている。
「マルジン殿の占いで帝国と機国が同盟を結ぶと予兆が見えたみたいだ。近いうちに帝国は王国に攻め込むだろう」
アース・ペンドラゴン
王国の王で頭には王冠を被っている中年の男性であり、金髪の天然パーマが特徴的である。
「このままでは王国の地があやつらに荒らされてしまう。こちらも超国と同盟を結ぶべきじゃ」
マルジン・エムリス
ボサボサの白髪の老婆であり、百寿を超えている。手には水晶の付いた杖を持っている。
「それはババァが言ってるだけだろ。ババァの予知は絶対では無いんだから信じすぎるのも危ないんじゃねーか?」
アース王の左隣に座っている人物がマルジンに対して攻撃的な口調で話す。アース王と同じく中年の男性で短い白髪である。
「カイ!マルジン様に向かってその口の書き方はダメだろ!」
注意をしたのはアース王と対角の位置にいるトリストラム。
三十路の男性で茶髪のオールバックで顎が長いのが特徴である。
「しかし、超国と同盟を結ぶのはかなり難しいと思います。神教の信徒が過半数を占める我が国が超国と同盟を結ぶのは無理なのでは?」
続いてトラストラムの右側に座るレイモラックが発言する。茶髪パーマで二十歳後半の男性である。左目が白一色であることが特徴である
「それに、マルジン様の占い結果はいつ起きるかまでは分からないため、同盟を結ぶとしたら長期に渡る可能性もありえます」
レイモラックの意見に賛同する形で発言したのは、トリストラムの左側に座っているボーマン。円卓に座る人物の中で最年少であり、中世的な顔立ちで性別がどちらか分からない。
「だが、機国と超国に攻め込まれた場合に同盟を結んで無いとなると、ニ国を相手に戦争をする事になる可能性が出てきます」
ボーマンの左隣の席に座るペルスヴァルが口を開く。顔を覆うほどの大きさのローブを羽織っており顔が隠れているが、声が低く男性であることは分かる。
「機国と帝国が相手だろうと関係ねぇ、俺様が全員相手してやるよ!」
でかい声を出しながら立ち上がる人物はペルスヴァルの左側に座るゴーヴァン。金髪の坊主頭で年齢は二十歳過ぎ程なのだが老け顔のせいで倍の年齢に見える。
「ゴーヴァンは少し黙っておきなさい。あなたは考えることが出来ないのだから」
ゴーヴァンの事を馬鹿にしている人物はレイモラックの右隣に座っているモードレッド。腰まで届いている長い金髪が特徴的でゴーヴァンの体の三分の一ほどの細さである。
「ただ超国と同盟を組むとなったら教会は勇者を貸してくれないですよね?これは結構な痛手になるよな〜」
ゴーヴァンの左隣に座るギャラハッドは明るい口調で発言する。容姿は編み込まれた赤髪でおしゃれな印象を受ける。
「教会としてはこの土地を王国が支配しようが帝国が支配しようがどっちでもいいというスタンスですからね」
謙虚な姿勢で発言するのはギャラハッドの左隣に座るパティピエール。円卓に座っている騎士の中で最年長であり、スキンヘッドに左目に縦の傷、左腕を失っているところを見るとかなりの戦場を渡り歩いていることが分かる。
「ランセロットお主はどう考える?」
皆んなの意見を聞いた後にアース王は右隣に座るまだ発言をしていない人物に向かって質問する。
「同盟を組んだ際の内乱は避けられないでしょう。今は国内でのいざこざは避けるべきだと考えます」
全身鎧で肌が見えない人物、ランセロットがアース王に進言する。
「なるほど、超国との同盟はリスクがデカすぎるという意見が多数だな。であれば同盟は無しだ。だが戦争が近いうちに起こる事を想定して兵たちに準備を整えさせておくのだ。皆良いな!」
アース王は全員の意見を聞いた上で騎士達に檄を飛ばす。
会議が終わり部屋にはアース王とマルジンの二人が残っていた。
「申し訳ありませんマルジン殿。機国と超国の同盟を予知していただいたのに結局は何もできませんでした」
「良いのじゃ。戦いの準備をさせることが出来ただけで価値はあったじょ」
アース王はマルジンに対して謝罪をするがマルジンは対して気にしていないようだ。
「アース王よそなたには死相が見える。決して前線には出るんじゃないじょ」
マルジンはアース王の目を見据えながら話す。
「私が国民に何と呼ばれていると思っているのですか?臆病な王ですよ。前線になんて出ませんよ」
アース王は自虐的な言葉を口にしながら窓の外の城下町を眺める。
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