第10話

チューズ、ウェン、サースが寝ていた部屋には案の定本日も違う人物が眠っていた。


チリチリチリチリ


部屋中に置き時計のアラームが鳴り響く。


「ふぁぁ、よく寝たわ」


ベッドで横になっていた茶髪のオールバックの人物が起きる。部屋にあるネックレスとブレスレットを身につけると外へ出る。


「いつも通り、ゴエモンさんとポートさんと配達の仕事に行くかな」


外へ出た後、そのまま超能隊本部の前まで歩いていく。すると既に二人の人物が建物の前で話していた。


「サタも来たか。じゃぁいつも通り俺は東区。ポートは西区と南区。サタは北区に配達を頼む」


「また僕の担当が多いじゃ無いですか。たまにはゴエモンさんが二箇所担当してくださいよ」


場所の割り振りをした人物はゴエモン・イシ。高身長の男で白塗りの顔に黒髪のリーゼントが特徴的な人物である。


その割り振りに対して文句を垂れている男はポート・オライアスこちらも高身長で黒髪で細目が特徴である。


「お前の能力なら二箇所の配達でも俺らより早いだろうが。ケチケチしてないでやってくれや」


「かったるいな〜。まぁわかりましたよ」


ポートは渋々納得したようだ。


「サタもそれでいいか?」


「俺も大丈夫っすよ!」


ゴエモンからの問いにサタは了承する。


「じゃぁ頼むぞ!」


「はーい」


ゴエモンがサタとポートの肩を軽く叩いた後にポートは返事をする。返事をした直後ポートの姿は一瞬で消える。


ポートが消えるとサタの周囲に砂が舞い始め、砂はサタの足元に集まっていく。すると砂は上空にサタのことを持ち上げる。


「行ってくるっす!」


サタが空を飛んでいくのをゴエモンは見送る。


「あいつらは移動が便利でいいよな。こっちは走りだっつうのに」


ゴエモンは愚痴をこぼすと超能隊本部の壁を登っていき屋根の上に立つと家の屋根越しに走って移動していく。


---

「お届け物は以上になるっす!じゃぁ失礼します」


サタは荷物を玄関の中に入れるとお辞儀をして外へ出ようとする。


「ちょいと待っておくれや。わしの孫のアルーシカがもうじき日が暮れるというのに家に帰ってきておらんくての。森にキノコをとりに行くと言っておったと思うのじゃが、ちょいと見に行ってはくれんか?」


おばあさんがサタに申し訳なさそうな顔をしながら話す。


「それはちょっと心配っすね。ちょうど配達が終わったので大丈夫っす!」


「すまんのぉ、これはワシの能力で作った薬じゃ。怪我をした際に飲むと治してくれる。手間賃として受け取っておくれ」


サタがおばあさんからの依頼を快諾すると、おばあさんは丸い団子のようなものをサタの手に渡す。


「ありがとうございます、じゃぁ探してきますね!」


サタは外へ出ると空高くに砂を集めて大きなSの文字を作る。


「ちゃんと見てくれますかね〜」


サタが呟くと同時にサタから少し離れた位置にポートが急に現れる。


「ポートさん、こっちっす!」


「こっちか、一体何の問題が起きたんだ?」


サタが呼びかけるとポートが駆け寄って話を聞いてくる。


---

「なるほどな、じゃぁ俺はゴエモンさんに報告してくるから先に探しに行っておいてくれ。ちゃっちゃと探し出して仕事終わらせるぞ」


ポートは話し合えるとその場から一瞬で消える。


「じゃぁ行きますか!」


サタは砂を足に纏い森の方へ飛んでいく。


「森の中だと空からは見つけられないよなー」


サタは森が見えると地面に降りてアルーシカを探し始める。


「あんな子供を攫ってどうするんですか?」


少し離れた位置で話し声が聞こえ、サタは木の裏で様子を見ることにする。


「何でも西の方で子供を大金で買ってくれる人物がいるらしいぞ」


「なるほど、じゃぁもうちょっと探して手柄出しましょうぜ」


話している二人組の男はボロボロの服を着ており手には腰にはナイフを身につけている。 


「どうやらあいつらがアルーシカを攫ったようだな」


サタの背後にポートがいつの間にか現れており、ポートも話を聞いていたようだ。


「あいつら締めてアルーシカの場所聞き出しましょうか」


「だな」


サタは二人組の方に手を伸ばすと二人組の周囲に砂が集まっていく。


「ん、何だ?」


一人が異変に気付いたが瞬く間に砂は気づいた男の全身を包み込む。


「襲撃か!」


もう一人の男は砂に包まれた男を置いて走り去ろうとする。


「逃さねーよ」


逃げる男の前にポートは現れると男の腹部に強烈なパンチを打ち込むと男は白目を剥きながら倒れる。


サタとポートは砂で包まれた男に近づくと、サタは砂を散開させる。だが手と足には砂に包まれており逃げることは出来ないようだ。


「騒ぐなよ。騒いだら少し痛めつけないといけない」


「さっき話していた子供はどこにいますか?」


ポートが忠告した後にサタが男に質問する。


「お前らは超能隊か?舐めるなよ、こっちはダチュラ盗賊団に所属しているんだ。すぐに助けが来るぞ」


男は拘束されているが強気の態度を崩さない。


「ダチュラ盗賊団ですか。超国で一番大きな盗賊団ですね」


「ちっ、口が中々に硬そうだな」


「大丈夫です。印は出してるのでそろそろ来るはずですよ」


サタは指を上に向けて、上空に出している砂で作った矢印の存在をポートに教える。


「噂をすればだな」


隣り合う木を飛びながらこちらに向かってくる人物をポートが見つける。


「悪い、遅くなった」


「ゴエモンさん、良いところに来てくれました。こいつがアルーシカを攫った盗賊団の一員で口を割らせてるところなんですよ」


サタは合流したゴエモンに状況を説明する。


「なるほどな、じゃぁ俺の出番だ」


ゴエモンは砂で拘束されている男に近づく。


「おい、攫った子供はどっちにいる?」


「けっ。言うわけねーだろ」


ポキ


男がゴエモンからの問いを突っぱねるとゴエモンは素早く男の鼻を曲げる。男は悶絶して叫ぼうとするが口元が砂で覆われており声が出せず手足も拘束されている為、痛みを逃すこともできない。


「次は素直に答えてくれよ。攫った子供はどこにいる?」


男の口元の砂が消えた後にゴエモンが同じ質問をする。


「くっ、こっから海の方へ向かった所にいるはずだ」


「嘘だな、俺には嘘が分かるんだ。次に嘘をついたらどうなるかわかってるな?」


男が答えるとすぐさまゴエモンは嘘だと見抜く。


「そっちの木に小さく十字の傷がついてるだろ。それを辿れば拠点に着く」


男は嘘を見抜かれたことに驚きながら、もう一度口を開く。


「今度は嘘じゃ無いみたいだな。行くぞ」


ゴエモンは男の話を聞くと男の腹部に蹴りを入れて気絶させると砂の拘束が消える。3人は木の印を辿って奥に進んでいく。

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