第4話
「ウェンくん、起きてください!あー二度寝しちゃダメですよ!ウェンくんが二度寝しちゃうこと知ってるんですからね。今日はアクアさんと畑に水やりの仕事をやってください。じゃぁ切りますからちゃんと起きてくださいよ〜」
ウェンと呼ばれた青年の頭にパシーの声が響き渡る。ウェンがいる部屋は前日にチューズが眠っていた部屋と同じ部屋であるが、チューズはおらずウェンだけが部屋で寝ている。
「ふぁぁ、もう起きる時間になっちゃったか〜。もう少し寝たいんだけどな〜」
ウェンは自身の青い天然パーマの髪についた寝癖を手で整いながら起きる。身長はチューズと同じくらいで顔の輪郭もチューズと似ている。だが目は薄くしか開けておらずまだ眠そうであるのが伝わってくる。
「やっぱり眠すぎるな〜。もう一度寝るか」
ウェンは眠気に耐えきれず一度起き上がったベッドにもう一度横になってしまった。
ドンドンドン
「おい、ウェン起きろ!どうせお前が寝るから起こしにいけってパシーさんに言われたんだ。いるかー?」
ドアを叩く音とともに男がウェンのことを呼んでいる。
「もういないよ〜」
ウェンは布団にくるまりながら返事をする。
「やっぱりいるじゃねーか!入るぞ」
男が指先から鍵穴の中へオレンジ色のモヤの様なものを入れた後に鍵が開く音が聞こえる。そして男は部屋に入りウェンがくるまっている布団を無理やり剥がす。
「ちょっとやめてよ〜」
ウェンは悲しげな声を発して抵抗する。
「さっさと仕事行くぞ!俺も今日はハッカイさんと家作りの仕事があるんだ」
男はウェンの腕を握り玄関の方へ引っ張り出す。
「オーラ、分かったから引っ張んないでよ〜」
ウェンにオーラと呼ばれた男はチューズやウェンと同じ年であり、身長は高くないがガタイは良くウェンよりも一回り肩幅が広そうだ。
「起きたんなら早く行こうぜ!」
オーラはウェンを掴んでた手を離し、乱れていた黒髪をかき上げてセンター分けの髪型にする。
「ふぁぁ、分かったよ〜」
ウェンは大人しくオーラとともに外に出る。
「俺はこっちだから、じゃぁな!」
二人が外にでるとオーラはウェンに一声かけてから走り去っていった。ウェンは前日チューズが向かったゴミ処理場とは反対方向に歩き出す。
「はぁ、今日が雨でも降ってくれてたら仕事無かったのにな〜」
ウェンは歩きながら空を見上げてため息をつく。そして前を向き直すとそこには壮年の女性が立っていた。
「ウェンじゃないか、私も今から畑に向かうところだったんだ。ちょうどいいから飛んでいくか!」
女性はウェンを見つけるとウェンの所に駆け寄ってくる。
「アクアさん、飛んでいくのは怖いので一緒に歩いていきましょうよ、、」
ウェンはアクアと呼んだ女性に対して怯えた口調で話す。アクアは身長が高めの40歳の女性である。短い水色の髪にメガネをかけているのが特徴だ。
「お前の根性を鍛えるいい機会でもあるんだ、行くぞ!」
アクアはウェンの話に耳を傾ける気はないようだ。突然何もない空間から水が現れて二人の足元を覆う。
「あぁ、なんでこうなるんだ〜」
ウェンは自身の言い分を聞いてもらえずにこれから起こることに対して怯えることしかできない。すると足元に集まった水が勢いをつけて二人を空中に押し出す。
「うわぁぁぁあ!」
ウェンは空中に発射されながら絶叫する。横を見ると一緒に吹き飛ばされたアクアはさらに自身の足から水を噴射して勢いをつけていた。目的地である畑が見え始めた頃、徐々に高度が落ちていく。アクアは一足先に畑の横に着地をしている様だ。
「水玉(ミズタマ)」
ウェンは衝突から自身を守るために自身を覆うように水の球体を作り出す。その後地面と衝突し、水は破裂するが中にいるウェンに怪我はないようだ。
だが衝撃によってウェンの体勢は崩れてしまい地面に尻もちを着く形での着地となった。
「上手く着地できたじゃないか。さぁ早速水やりを始めるぞ!」
アクアはウェンに激励を送ると空に手をかざす。
「少しくらい休ませてくださいよ〜」
ウェンは不満をこぼしつつアクアと同様に空に手をかざす。
「「雨降(レイン・シャワー)」」
二人は同時に手から大きな水の塊を出した後にそれを空に飛ばす。
すると二つの水の塊はぶつかり粉々になると畑に雨のように細かく降り注ぐ。
「よし、次行くぞ!」
この技は限定された範囲にしか水を与える事ができないらしく、全体の20分の1程度にしか水は届いてはいない。そのため何度も行わないといけないのだ。
「はぁこれ疲れるんだよな〜」
ウェンはまたもや溜息をつく。
「業務連絡です。超能隊本部で道場破りが現れました!ブレイクさんがその人物と修練場で試合をするみたいなので時間が空いてる方は是非来てくださーい!」
頭の中に急にパシーの声が響き渡る。
「アクアさん聞きました!?道場破りだそうですよ?これは行くしかないですよね?」
ウェンは仕事をサボれるかも知れないと期待した眼差しでアクアを見る。
「ダメに決まっているだろ、まだ始めたばかりで全然終わっていないんだ」
アクアはウェンの言葉を無慈悲にも一蹴する。
「そんなぁ〜」
ウェンはあまりの絶望に地面に膝をつく。
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