第5話
---パシーが超能隊に連絡する5分前
街の中に一際でかい建物が存在する。その建物の中はバーの様になっていて昼間から酒を飲んでいる人や複数人で話している人たちなどがいる。
そんな平凡な光景であるが、突然ドアを勢いよく開けて入ってきた人物によって非日常の光景に変化していく。
「ここのトップと今すぐ戦わせろ!」
茶髪のツンツンヘアーで耳にはピアスをつけている柄の悪いヤンキーのような人物がドアから入りながら叫んでいる。
「なんだおい、急に入ってきたかと思えば道場破りのつもりか?だったらまずは俺と戦って勝ってみろよ!」
カウンターでお酒を飲んでいたボサボサ頭の黒髪の男が立ち上がり、ドアの方にかけ出すと空中にジャンプする。すると男の両腕はゴリラの腕のようなものに変化し、ジャンプした勢いを利用して殴りかかろうとする。
「やめぇぇぇい!!!」
突如2階の中央に位置する扉が開き出てきた老人が叫ぶ。その声に反応して殴りかかろうとしていた男は体をピクリと反応させた後、背中から翼が生え翼を羽ばたくことで勢いを殺して後方に着地をする。
「なんでだよブレイクさん!あっちから売ってきた喧嘩なんだ。買ったっていいだろ!?」
男は腕と背中の翼を元に戻しながらブレイクと呼ぶ老人に抗議する。ブレイクは黒と白が混ざった髪色が特徴で筋肉質な体格をしている。
「ビートよ、どうやら喧嘩を売られとるのは私のようではないか。ならば私が買ってやるのが筋であろう」
ブレイクは興奮するビートを宥めると同時に自分自身が戦うと主張する。
「ここのトップは話が分かるやつみたいだな。じゃぁ早速やろうぜ!」
ツンツンヘアーの男は拳を突き合わせ戦闘態勢になる。
「待て待て。ここでやったらこの部屋がメチャクチャになるだろう。奥に修練場がある。そこで勝負を受けてやろう」
部屋にいる他の超能隊のメンバーは沈黙を貫いていたが、一人の艶のある白髪で長髪の女性がブレイクに向かって口を開く。
「ブレイクさん!修練場で試合をすると言うのはここにいない超能隊の人達にも伝えていいですかね!?」
女性は笑顔でブレイクに問いかける。
「パシーか、好きにせい」
ブレイクはパシーに向かって一言返事をすると奥の部屋に向かう。
「りょーかいです!」
パシーは元気よく返事をして、人差し指をおでこに当てる。
「業務連絡です。超能隊本部で道場破りが現れました!ブレイクさんがその人物と修練場で試合をするみたいなので時間が空いてる方は是非来てくださーい!」
パシーは超能隊の人達に向けてテレパシーの力を使って連絡をする。
ツンツンヘアーの男はブレイクの後ろを着いていき、部屋にいる超能隊のメンバーも奥の部屋に向かう。
奥の部屋に入ると広い空間があり、床や壁は堅そうな鉄の素材で作られているようだ。家具などは一切なく武器が壁に立てかけられている。
「壁などが壊れて後から修復するのも面倒くさいからの、ゴジョウよ、結界を張ってくれるかの?」
ブレイクは長身のスキンヘッドのゴジョウという人物に話しかける。
「承知しました」
ゴジョウが持っている杖をかざすと部屋の壁と天井に結界が張られた。
「さぁこれで準備ができたの。所でお主の名はなんと言うのだ?」
ブレイクは男に向かって改めて名を尋ねる。
「バル・ジャック。これからお前を倒して超能隊のトップになる男だ!」
バルと名乗った男は自信満々な口調でブレイクに言い放つ。見守っている超能隊のメンバーの反応は怒りを表すもの、笑っているもの、無表情のものなど様々である。
「うむ、威勢がいい若造が来たな。いいだろう。私を倒すことが出来たらトップの座を譲ってやろうではないか。では、かかってこい!」
ブレイクは堂々とした態度のままバルに言う。
「後悔するなよ」
バルが手をかざすと手の平サイズの泡が出てくる。
「泡弾(バブル)」
泡は一直線にブレイクに向かっていく。飛んでくる泡に対しブレイクは右手を突き出して泡に触れると、何も起こらずに泡は消え去る。
「何?なぜ爆発しない?」
バルは自身の能力が発動しなかったことに驚きの表情を浮かべる。
「何かしようとしていたのか?お主の実力はこんなものか?」
ブレイクは何事もなかったかのように話し、バルに対し挑発する。
「はっ、まだまだ!」
今度はバルの周囲に大量の泡が出現する。
「泡機銃(バブルマシンガン)」
バルの周囲に現れた大量の泡がブレイクの方に飛んでいく。
飛んでくる泡に対してブレイクは未だに一歩も動かずに右腕を素早く振り回して、全ての泡は右手に触れると今回も泡は何も起こらずに消え去ってしまう。
「くっ、これならどうだ!」
バルが両手を上にあげると巨大な泡が出現する。天井の高い修練場であるが、天井に届くほどの大きさまで膨らむ。
「巨大泡(ヒュージバブル)」
巨大な泡はそのままブレイクに向かって突き進む。
ブレイクは右手を向かってくる泡に向けて構える。そして泡と右手が触れると巨大な泡であったが一瞬で消える。
「そんな、俺の最強の技が通用しないなんて、、」
バルは地面に膝をつき、これ以上戦っても勝つことが出来ないと悟ったようだ。
「俺の負けだ、俺の能力が通じないんだからな。まさかここまでの差があるとは思わなかったんだが」
バルは両手をあげてブレイクに降参の意思表示をする。
「うむ、まぁ相手が悪かったの。だが、いい能力ではあるようだ。どうだ超能隊に入ってその力を一緒に鍛えていかないか?」
ブレイクはバルの実力を認めたようで超能隊へ誘う。
「いや断るよ。トップにならなきゃ意味がねーんだ」
バルはブレイクからの誘いを断りながら立ち上がり入ってきた扉の方に向かう。扉の前に行くとブレイクの方に振り返る。
「急に戦いを挑んだ俺と戦ってくれてありがとう。俺はまだまだ実力が足りない事に気付かされた。また一から鍛え直すことにするよ」
バルはスッキリとした表情をしながらブレイクに頭を下げる。
「うむ、鍛え直したらまた挑戦しにくるがよい。」
ブレイクは右手を挙げ、バルに激励の言葉を送る。
バルは頭を上げて軽く頷くと部屋から出ていく。
「勝負に負けた途端礼儀正しくなりましたね。もうちょっといい勝負になると思ったんですけど〜」
パシーは少し残念そうな表情でブレイクに話しかける。
「私の能力に気づいたらもう少し良い勝負になったんだろうがな。だが彼はこれから伸びるぞ」
ブレイクは笑みを浮かべながら言うと部屋から出て行った。
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