第40話

 翌日は、難しい気持ちだった。それでも七見は学校へ行った。

 教室で、一日の授業を受ける。昼休憩になっても、京一は教室へやってこなかった。水巻からの情報もなかった。校内で京一の姿もみなかった。

 まるで、まるまる引き抜かれたみたいに、七見の世界から京一が消えた。向こうの教室まで探しに行った。こちらから連絡を入れることをしなかったのは、どちらかといえば、我慢の部類に入った。探しそうになるし、連絡しそうになる。

 だが、けっきょく、七見はそれをしなかった。

 前の席に座る水巻も、何もいわない。今日は、クラスの女子生徒の輪の中にくわわり、七見へは最小限の反応にとどめていた。

 さけているとではなく、気を使われている。それがよくわかった。

 そして翌日、七見は学校を休んだ。両親は仕事で家にはいない。四歳下の妹も学校へいっていた。

 学校を休み、七見はスマートフォンを操作すると、その日の朝から夜までずっと配達のアルバイトを入れた。休憩の時間もわずかにしかとらず、走り続けた。日曜、祝日に一日中走り続けたことはある。それでも夜になる頃には、見たこともない配達数、アルバイト料金が画面に表示された。

 夜のコンビニの前で、画面の数値をじっと見る。自分の時間を、自分の方へ引き寄せて叩き出した結果の数値だった。

 京一から連絡はいまだに無かった。七見からもしていない。

 そのまま画面の数値をみつめていた。最高の数値を達成して、表情には晴れ晴れしたものはない。無表情に、乱れた呼吸があるだけだった。

 そのときだった、着信が入る。画面に相手が表示された。

 所属事務所からだった。

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