第31話 階段の上から
四人で非常階段をのぼる。
いつの間にか京一が先頭だった。他の三人は自然と京一から充分な距離をとっている。
すると、階段をのぼって、すぐに階段の上から、女性が「きゃあ」と、悲鳴をあげた。ダンボール箱が三つ、階段の下へいた京一だけへ振りかかる。
ダンボール箱の中身は、すべてキャベツと記載されている。中身もしっかりと、キャベツが詰まっていた。よって、落下は、ギロチンの刃のごとく速い。
そして、京一は三つすべてのダンボールの箱の直撃を受ける。しかし、倒れることなく言った。
「サンタクロースがこけて、袋をぶつまけたとき、下にいたヤツの気持ちがわかった」
といった。
そのすぐ後、非常階段の天井の一部が京一へ落ちる。
頭頂部に激突した。それでも京一は倒れない。
「いたい」
と、いった。それから落ちた天井の一部を拾って壁へ寄せ、どこからかペンとメモ用紙を取りだし『オレが壊したじゃありませんから』と、メモ書きを添え、ふたたび先頭に立ち階段をのぼりはじめる。
ダメージより、自身を無罪であることを優先させた。
十五階まで階段であがると、ふたたび非常階段に防火シャッターが下りていた。階段では先へ進めなくなる。京一はそばにあった非常口扉を、ノックした後であけて、通路に出る。
真っすぐに伸びた通路の果てには、向かい側の非常階段の扉が見えた。京一が先頭に通路を進むと、今度は次々と、天井の一部が剥がれて落ちていった。連動するように、蛍光灯も割れて、破片が京一を襲う。
それらをすべて、京一へ直撃する。しかし、京一はふらつきつつも、倒れず、通路の反対側の非常口の扉までたどりつく。
そこで、ひどく背を伸ばしたまま、通路を振り返り、いった。
「すべて、いたかった」
「いや、事件だよね、これ」と、水巻がコメントを寄せる。「わたしの今日までの生涯でも、ナンバーワンの事件、および事故の数々が、いまここに集結している」
「だが、みんなは無事だ、だったら、オレも無事あつかいでいい」
水巻は「決して、いいセリフではない」と、述べた。
その後、京一の足を踏み降ろした階段の床板が急に抜けたり、住民らしき女性同士に口論へ巻き込まれたり、行倒れの女性がいたり、と、さまざまな出来事が京一だけを襲撃する。
階段の床がぬけたとき京一はいった。
「オレの存在感を、支えきれなかったか」
女性同士の口論に巻き込まれたときは。
「お金を払うので、ゆるしてください」
行倒れの女性がいたとき。
「この人は、だいじょうぶだ。きっとワケあって倒れたふりをしているだけだ。本当に絶命しかけて倒れている人は、こんなものではない。オレの数々の経験した過去たちが、そう教えてくれている。本当に絶命、もしくは生命の危機が迫っている人は、こんな倒れ方しない。」
それらの発言とともに、すべてをかわしてゆく。
そして、ついに階段をのぼり切り、三十階までたどり着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます