第05話 よくじつの教室
翌日、昼食時間になると、別のクラスである京一が七見のクラスの教室へやってきた。
京一は「昼ごはんを屋上で食べよう」と、告げた。
彼の上着のポケットが、やや膨らみ、若干布地を貫通して発光している。
ある意味、期待を裏切らないんだね。と、七見は心のなかでつぶやき、そして、特殊な安心を得た。
それから七見は窓の外を見る。雨がふっていた。
ざあざあぶりである。
「京一くん」
「七見くん」
「このランクの雨が降るなか、屋上で昼ごはん食べる人って、将来出世しないと思うんだ、あらゆる業界で」
「あきらめるのか」
鳳凰のような目で問いかけてくる。その眼光は鋭く、向けられた方は、迷惑な負担を追うことになる。
七見は「去年、雪が降ったときも、きみが屋上でごはん食べようっていったとき、じっさい、食べている間、白米に雪が積もった経験があるからね、あきらめるよ」と、返す。「白メシに、雪で、寒さより、切なさにやつけられそうになったし」
そういい、七見はカバンから弁当箱を取り出す。机の上に乗せた。包みをといて、蓋をあけ、箸をとり、箱のなかで、綺麗にひしめき合う品々のなかから、均整のとれた卵焼きを取りだし、口へ運ぶ。
「卵焼きがおいしい」と、七見は感想を告げた。
「くれるのか」
と、京一は問いかけた。
「なぜそう思った」
「自分でもわからない」
きっぱりと回答を返してくる。
「とりあえず」と、七見は言い「隣に座りなよ、今日もまた」と、告げた。
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