第81話 掛け持ち

「俺達は忍転道を重点的に探っていこう」ってレッドは言ったけど、向こうも私達を始末しようと動いてるみたいだし、双方が動き出すとなれば思っていた以上に早く接触する事になるかもしれない……。


 ――と。私が考えていると。

「みんな。早速だけどいいかな?」

 キリンちゃんだった。なのでみんなが黙ってキリンちゃんに視線を向けると。

「今ダメ元で忍転道をネットで検索にかけてみたんだけど……ビックリする事に普通に引っかかったよ」

 えっ? ホントにっ!

「サバの味噌煮の画像が」

「なんでっ!?」

 思わず声が出ちゃったけど。

「なんでって言われてもねぇ〜? まぁとりあえずサバの味噌煮の画像は置いといて、みんなも検索してみてよ」

 キリンちゃんに言われるがままに各々がスマホを取り出す。そしてすぐに忍転道と検索にかけてみると――

「あ、あった!!」

 サバの味噌煮の画像とは別。


『地球を征服しませんか?』


 っという文字が。

「え? 何コレ?」

 スマホから飛び込んできた電子文字に私が混乱をきたしているとキリンちゃん。

「どうやら忍転道は真っ白い豆腐をフォークとナイフで食べるのを作法としている集団みたいだね?」

 いやどっから出てきたのその情報は?

「でもまぁそれとは別で、このサイトでは一緒に地球を征服してくれるアルバイトを募集してるね」

「なんで地球征服を狙ってる悪の組織がアルバイト募集してるのよ!! って言おうかと思ったけどよく考えたら私達も同じだったーっ!!」

 ――そう。うっかり忘れてたけどウチも戦隊ヒーローなのにグレーちゃんがアルバイトだった……。

 と、そこへレッド。

「しかしこれでハッキリしたな? 忍転道はスイスの銀行に強盗に入ってインドカレーを奪うようなアメリカのこじらせ女子とは違い、地球征服を目論んでいてその邪魔となる俺達を排除しようって腹積もりだったという訳だ」

 まあ、スイスの銀行にインドカレーがなんであるのか謎だし、こじらせ女子おなごは大分こじらせてるみたいだけど――忍転道の方は確かにその通りね。


 ――と。


「ん? ちょっと待ってみんなっ! 忍転道の代表者の名前のところ見てっ!」

 キリンちゃんの声に全員が再びスマホに視線を落とす。そして画面をずらして代表者の名前を探してみると――


『忍転道 代表取締昆布 都こんぶ』


「えっ? 都こんぶっ!」

 私が思わず呟くと、レッドも同じく呟く。

「驚いたな? 臭影者の代表取締昆布と同姓同名の昆布じゃないか……」

「いや同姓同名の昆布じゃなくて同一人物でしょ? そんな名前の宇宙人が2人も3人も居てたまりますかっての!」

 とレッドにツッコミを入れていると小豆ちゃん。

「うむ。確かにつみれの言う通りだ。と考えれば、芸能事務所である臭影者は表向きの顔……つまりフロント企業で、裏の顔が地球征服を狙う忍転道なのだろう。そして当然だが都こんぶの真の目的はサバの味噌煮の画像をフォークとナイフで食べる事ではなく地球征服の方だろうな?」

 サバの味噌煮じゃなくてサバの味噌煮の画像をフォークとナイフで食べるのっ!? うん。そりゃまあ地球征服の方が真の目的になるよね……。


 ……という事はさすがに全員が理解したところでレッド。

「さてどうする? とりあえず都こんぶ、忍転道が俺達の敵……地球征服を狙う悪である事は間違いないとして、臭影者も敵視して問題はないと思うが――臭影者の事はパンストセイント達に任せておくか?」

 う~ん……確かに忍転道がどれくらいの規模の会社かわからないから、臭影者も一緒にマークするとなると大変かもしれない。って考えるとパンストセイントちゃん達に任せた方が安全且つ無難な気がするんだけど――


「あの〜それだったら私、掛け持ちしましょうか?」


 と突然片手を上げたグレーちゃんだった。

「掛け持ち? 俺達ごはんですよとパンストセイントをか?」

 レッドが問うとグレーちゃんは上げていた片手をパタパタと振り。

「あ、いえいえ違います。アルバイトの掛け持ち……つまりごはんですよと忍転道の掛け持ちです」

『――ッ!』

「ホラ。私ってこの中で唯一フリーターじゃないですか? で、忍転道がアルバイトを募集してるなら簡単に潜入出来ちゃうんじゃないかなーって?」

 まあ、実際にはブルーも普段なにやってるのかよくわからないけど、アイツはフリーターっていうより自由人フリーマンだから放っておくとして……。

「確かにグレーちゃんて普段から雑魚戦闘員の格好してるし、元戦闘員Aっていう実績もあるから適任かもしれないけど――敵の組織に入り込むって結構危険じゃない?」

 という私にレッドが続く。

「そうだな。貞子がテレビの中から出てくるのと入れ替わりでテレビの中に入り込むのと同じくらい危険だが……やれるかグレー?」

 危険以前にそれって物理的に可能なの? そしてやる意味は?

 っかしグレーちゃんは。

「たぶん大丈夫じゃないですかね? ただそれの場合、貞子さんの命の保証は出来ないですけど」

 危険ってグレーちゃんの事じゃなくて貞子の方だったの!!


 うん。でもまあグレーちゃんが潜入して情報を持ってきてくれたら戦局を有利に進められるのは事実。なのでグレーちゃんが大丈夫だって言うんだったらお任せしよう。ま、グレーちゃんて単独でも恐ろしく強いし、貞子も倒せるみたいだから大丈夫だよね。

 という結論に至った私達はグレーちゃんに忍転道に潜入してもらう事にした。

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