第80話 忍転道

 それは突然の報告だった。

「あの……おかずファイブさんを襲撃した人達の事が少しだけわかりました」


 ……。

 ……。

 …………。


『ええっ!?』

 あまりの突然な発言に、みんな若干のタイムラグを発生してから反応する。

「誰なんだっ?」

「どうしてわかったの?」

 あのレッドでさえ驚いているのがわかる。そしてレッドと私に続けざまに質問をされたグレーちゃんは――

「えっと、直接聞いたんです。おかずファイブさんに」

 あ、その手があったか!


 ――そう。突然の報告をしてきたのはグレーちゃんだった。


 そしてグレーちゃんは続ける。

「おかずファイブさんって別に死んだワケじゃなかったのでお見舞いも兼ねて聴取しに行ってきました。平日だとピンクさんや小豆さんは会社ですし、レッドさんは学校。ブルーさんもレンタル力士リキシで忙しいと思ったので私一人で行ってきました」

「え? あ、うん。それはいいんだけどレンタル力士って何よ?」

 と私はグレーちゃんからブルーへと首を向けると。

「うむ。要はレンタルおじさんやレンタル彼女の力士バージョンですな?」

「いや、たぶんそうだとは思ったんだけど別にあんた力士じゃないじゃん? なんで忙しいのよ?」

 するとブルーは眉をハの字に曲げ。

「いやいやピンク殿。私はレンタルされる力士ではなく、力士殿をレンタルしてもらっている客だという事です」

「んじゃ借りる借りない、忙しい忙しくないは全部あんたの匙加減じゃん! 大体力士借りて何すんのよあんたっ!?」

 するとブルーは今度は小首を捻り。

「まあ、主に恋愛相談とかですかな?」

「あんた恋愛してたのっ!?」

「あ、いや、ははは。恋愛相談するのは力士殿の方で私は相談に乗る側です」

「な ん で 金 払 っ て る 客 の あ ん た が 相 談 さ れ る 側 な の よ っ !」

 普通逆でしょう!? いや、もうこいつらに普通を求めるのは無理だ。無視してグレーちゃんの話に戻ろう。


「えっと、それで? おかずファイブを襲撃した人達の何がわかったの?」

 気を取り直して私がグレーちゃんに質問をすると。

「はい。個人までは特定出来なかったんですけど、おかずファイブさんは戦う前に『悪の秘密結社 忍転道』の者達だと名乗っていたのを聞いたそうです」

『に、任天堂!?』

 多分だけど、このリアクションはみんな「任天堂」を想像したんだと思う。けど任天堂の前に「悪の秘密結社」が付いているから漢字が違うんだろうな〜〜っと私は思ったんだけど。

「に、任天堂というとあのワルイージやオーキド博士を生み出した、あの任天堂の事かっ!?」

 レッドだった。


 いやさぁ、確かにワルイージもオーキド博士も任天堂が生み出してるんだけど、そこはストレートにスーパーマリオとかポケモンでいいじゃん。なんであんたはいっつもキャッチャーに向かって投げた変化球が曲がり過ぎてファーストへの牽制球になっちゃうかな? ボークよそれ?


 とか考えていると私の先の考えはどうやら正しかったらしく。

「あ、いえ、その任天堂ではなくて忍びが転ぶ道と書いて忍転道だそうです。なので『ポケットモンスター 赤・緑』や『ポケットモンスター 力・士』の任天堂とは無関係です」

 うん。いや、グレーちゃんさぁ申し訳なさそう言ってるけどポケモン力とポケモン士って聞いた事ないんだけど……ってゆーかそこポケモンだけで通じるよね別に?

 と、しつつもグレーちゃんは続ける。

「あとそれと、数少ないわかった事の内の一つですが。おかずファイブさんを襲った人達は2人組ではなく3人組で合っているそうです」

 そっか。じゃあ敵は最低でも3人って事ね。まあ悪の秘密結社っていうくらいだからもっといっぱい居ると思ってて間違いなさそうだけど――

 ――と。

「それともう一つ。これが物凄く重要なんですけど――忍転道の人達がおかずファイブさんを襲撃した理由は肩慣らしで『おかず戦隊ごはんですよと戦う前の腕試しと言ったところ』と言っていたそうです」


『――ッ!!』


 恐らくだけど私だけじゃなく全員に衝撃が走った――

「敵の本命はおかずファイブではなく俺達………………がレンタルしたおじさんだという事かっ!?」

 うぉい! お前はもうちょっと黙ってろレッド!!

 というところで小豆ちゃんが割り込んできてくれる。

「ちょっと良いか? 敵が悪の秘密結社であって、我々と戦うための腕試し……という名の準備をしている。この話を総合すると忍転道の真の狙いは世界征服辺りで、その障害となるであろう我々をどこかのタイミングで排除しようと画策していると考えるのが妥当ではないか?」

 あ、やっぱり小豆ちゃんもそう思う?

「ってなるとさ、これって新しい侵略者かそれに準ずる存在が現れた……って考えて今後は行動した方がいいって事だよね?」

 と私が付随してみた。するとレッド。

「そうだな。敵の明確な目的はわからんが悪の秘密結社と名乗り、挙句に俺達を標的としている奴等を放っておく訳にはいかんからな? ライダーやパンストセイント達には他を担当してもらい、俺達は忍転道を重点的に探っていこう」

 というレッドのセリフに私達全員が頷いた。

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