第82話  レッドとブルー ファイナルシーズン

 グレーちゃんがウチと忍転道を掛け持ちする事が決まり、その後どうなったのか……というかちゃんと忍転道に採用されたのかどうかを次のミーティングで報告されるのを待っている状態の平日――


 いつものファミレスに昼食を摂りに来ていた私はレッドとブルーに遭遇していた。勿論いっつも通りヤツらが先に来ていていつもの席に陣取っていたので、私もいつものように後ろ隣の席へと滑り込んだ。そして――


「時にブルーよ。日本に住んでいる以上、お前も黒毛和牛という言葉は聞いた事があるな?」

 といつものようにレッドとブルーの会話が始まった。

「無論ですな。焼き肉屋などで良く耳にするかと?」

「だな。だが例えば馬の場合、白毛や栗毛や芦毛など聞くが何故か和牛は黒毛しか聞かないのは不思議ではないか?」

「ほぅ? 確かにアホ毛和牛やムダ毛和牛というのは聞いた事がありませんな?」

 いるワケないでしょ。だいたい色の話をしてたのに、なんだ急にアホ毛和牛にムダ毛和牛って……牛にとっちゃアホ毛もムダ毛でしょ。

 としているとレッド。

「だろう? しかも馬の場合はウマ娘(犬)がいるのでアホ毛も完備しているのに牛は不遇だとは思わないか?」

 いやウマ娘(犬)って馬なのか犬なのかどっちなのよ? っと私が内心でツッコミを入れているとブルー。

「うむ。そう考えると不遇ですな? せめてムダ毛和牛がムダ娘として擬人化されれば良いのですが?」

 何が良いの? てゆーかムダ娘ってウシじゃなくてムダ毛の方がピックアップされちゃってんじゃん! ほんっっっとあんた達の会話ってムダよね。


 ――と。私が考えていると奴等の会話は早くも次の話題へ。

「ところでレッド殿。私の方からも伺いたいのですが――。『桃から生まれた桃太郎』というように桃太郎殿は桃から生まれた事で有名ですが、金太郎殿は別に金から生まれた訳ではないのですよね?」

「そうだな。金太郎は金太郎飴から生まれているからな」

 逆じゃないっ!? 金太郎から名前をとっての金太郎飴でしょ?

「因みに桃を切ったら中から生まれてきたのが桃太郎だが、金太郎飴は切っても切っても金太郎が生まれてくる」

「なるほど」

 いや確かに金太郎飴って切っても切っても金太郎の顔が出てくるけども……。

 っというところでブルー。

「しかしその理論でいくと、やはりキャベツ太郎殿はキャベツから生まれたので?」

「いや違うな。キャベツ太郎は桃から生まれている」

 なんでキャベツ太郎が桃から生まれてんのっ!? てゆーかお菓子じゃん! 人物じゃないじゃん!!

 しかしレッドは。

「知っていると思うが。婆さんが川に洗濯に行って川上からどんぶらこっこどんぶらこっこと桃が流れてきたのが桃太郎だ。だが、キャベツ太郎の場合は川上からどんぶらこっこどんぶらこっことハムが流れてきた」


 …………?


 ハム太郎じゃん!! 一瞬悩んじゃったけどそれだとキャベツ太郎じゃなくてハム太郎じゃん! どんぶらこっこじゃなくてとっとこハム太郎だよっ! てアホかっ!!


 私が内心で息を切らしながら一人ノリツッコミを入れていると更にレッド。

「因みに流れてきたハムは生ハムだ」

 どーでもよくない? その情報いるぅ? とっとこ生ハム太郎とでも言いたいの?

 と私は思ったけど正解は全然違ったらしくブルー。

「流れてきたのは生ハムですか。ではその生ハムを切って中から生まれてきたのが……?」

「ああ。ゲゲゲの鬼太郎だ」

 鬼太郎っ!? とっとこ生ハム太郎じゃなくてゲゲゲの鬼太郎なの? てかキャベツ太郎が全然出てこないわねその話!

「なるほど……鬼太郎殿はゲゲゲの女房から生まれたとばかり思っていましたが、実は生ハムから生まれたのですか」

「そうだな」

 うん。いやまぁある意味ゲゲゲの女房ってかゲゲゲの旦那から生まれたのは事実だけども……。


 ――と。レッド。

「まあ、そうして桃太郎がキャベツ太郎、ハム太郎、鬼太郎をお供にして退治しに行ったのが――」

「山田から生まれた山田太郎……と」

 ま、そりゃ山田太郎は山田からしか生まれんだろうけどもさ……。いやそれより退治される鬼役こそ鬼太郎きたろうってか鬼太郎おにたろうにするべきじゃないのそれ? あとハム太郎はどっから出てきた? 今のところハム太郎が出てきたのは私のモノローグの中だけで、あんた達の会話には一切登場してないんだけど?

「因みにアホ毛和牛のアホ毛を切ろうとすると空条承太郎が時を止めてくるぞ」

 急に出てきたな。桃太郎の鬼退治の話が終わったのかどうかもわからない内に急にアホ毛和牛と承太郎が出てきたな……?

 ……あ、もしかして承太郎はアホ毛太郎が誕生するのを阻止しようとしてるとか? でもそれだったらムダにムダ娘が誕生しないようにムダに時を止めて阻止して欲しいなぁ「無駄無駄ぁっ!」って…………あ! それは吸血「鬼」であるDIOディオの方か……。

 とか考えている内にレッドとブルーの姿が一瞬で席から消えて――


「――ッ!」


 ――次に気が付いた時には、2人はもうお会計をするためレジに立っていた。

 恐らくだけど催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなものじゃあない。2人のウチどちらかが時を止めたんだと思う。そしてどっちが止めたかは知らないけど、2人とも動けているから2人とも入門してるんだと思う。

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