第23話 続・レッドとブルー
「嘘でしょ……」
私は思わず立ち尽くした。
今日も外でランチにしようかと思い、いつものファミレスに立ち寄ってみたけど……なんであいつら居るのよ? ブルーはともかくレッドは学校あるはずでしょ? たまたま休みにしてもなんでこう私が来る時にピンポイントで居るかな?
……と愚痴愚痴考えながらも私は半分条件反射で前と同じ席。レッドの後ろの席に隠れるように、そして滑り込むようにして着席した。理由はまあ……今回もあいつらの会話を一応聴いてみようと思ったからである。
――んで。
「ブルーよ。前からフト疑問に思っていた事がある」
「なんでしょう?」
「アイドル……特に女性アイドルグループに良く見られるのだが、アイドルがそのグループを抜ける時に何故学業でもないのに『卒業』という言い方をするのだ? 普通に『脱退』や芸能界をも辞めるのであれば『引退』が適切ではないか?」
「なるほど。言われてみれば確かに……? アイドルはでなくバンドやアーティスト、そしてプロスポーツ選手などは『脱退』や『退団』そして現役を退くなら『引退』という言い方をしますな」
うん。そこはまあイメージの問題でしょ? てかなんでそんなどうでもいい事にばっか興味持つかなこの男は……。
としているとブルーが続ける。
「しかしレッド殿。逆の発想をすれば何故プロスポーツ選手などは引退する時に卒業と言わないのでしょう? 引退試合という言葉は耳にしますが卒業試合という言葉はまず聞いた事がないかと……?」
「ほぅ。言われてみればその通りだな? 更に逆を言えばアイドルの卒業ライブまたは卒業コンサートは聞くが、プロスポーツ選手の脱退ライブや退団コンサートなんてものは聞いた事がないな?」
いやなんでプロスポーツ選手が何かしらのライブならまだしもコンサート開く必要があるのよ……。
……と思っていたら。
「いや待てブルー!! 学生は当然として女性アイドルグループ以外にも卒業を使うヤツ等がいたぞ……童貞だ!」
なに世紀の大発見みたいなノリで言ってんだこのウメボシ。
「童貞卒業――なるほど。言われてみれば童貞も女性アイドルも卒業が決まると良く卒業コンサートを開いていますからな?」
見た事も聞いた事もねぇよストロガノフ。いや、女性アイドルのはあるけど!
「そうだな。昨今の童貞は握手会や総選挙と大忙しだ」
ど、童貞の総選挙っ!? それでセンター決めるの?
「ふむ。こうやって改まり考えてみるとアイドルと童貞は共通点が多いですな? 例えばどちらもウンコをしないところとか……」
いやアイドルはウ○チしないって都市伝説があるけど童貞は普通にするでしょ……。
「あとは恋愛禁止とかか?」
あ〜そりゃ童貞だわ。
「会いに行ける
そりゃそうだろっ! ってかそれもう『童貞=アイドル』じゃん!
でまぁ本人達は至って真面目に話しているんだろうけど……一通りボケ終わったところでレッドが。
「しかしまあ、そんな童貞も卒業コンサートで最後の曲を歌い終わった時『明日から普通の童貞に戻ります』と言ってマイクを床に置いて卒業していく……感慨深いな」
何が? てか女性アイドルが『明日から普通の女の子に戻ります』って言うならわかるけど童貞が『普通の童貞に戻る』ってどーゆー状況なのよっ!
っとしているとブルー。
「そう言えば――普通の童貞で思い出しましたが、この世界では30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしいですな?」
あ、普通じゃない童貞ってそういう?
「らしいな? 俺の居た世界ではその10分の1。3歳まで童貞なら魔法使いになれたものだがな?」
「ほぅ? レッド殿のところは3歳でしたか。私のところは『生まれた時は誰もが童貞』をモットーに生まれた時からみな魔法使いでしたな」
いやいや。この世界では童貞を30年間守ってようやく得られる力って設定なんだからさ……あんたのところはモットーとか童貞関係なしに生まれた時からみんな普通に魔法使いなだけじゃないのソレ?
と内心でツッコミを入れているとレッド。
「しかし童貞から魔法使いにジョブチェンジするのに30年か……」
いやジョブって言ってるけど、どっちも仕事じゃないし……。あ、でもRPGとかならあり得るのか……。ただステータス画面開いたら職業欄に童貞って書いてあるのは嫌だなぁ。
「つまり魔法使いは立派に童貞道を歩んだ一流の童貞と言っても過言ではない……」
童貞道とか一流の童貞とか――なんか無理に童貞を
「うむ、そうだな。そしてこんな話をしていたせいか血が滾ってきたな」
「ほぅ? レッド殿もですか?」
「良し、ではブルー。近くで童貞が卒業ライブをしていないか探すぞ! そして参加だっ!」
「御意!」
と返事をしてからの2人は早い。以前同様、颯爽とお会計を済ませると素早くお店を後にする。
……やっぱりアイツらアホだな。さ、ご飯食べて会社戻ろ。
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