第22話 ピッチャー交代レッド
「なるほどな。さすがは技巧派。徹底的に相手のメンタルを削り追い詰める……序盤に発動すれば後半かなり楽な展開にする事が可能と考えれば――ブルーの先発はアリだな?」
お? なんか珍しいな? どうせあってもレッドが先発でブルーが抑えとかかなーって予想してたんだけど逆になりそうかな?
「ともあれ今度は俺の番だな。確かに俺はブルーの言う通り本格派か技巧派かで言えば本格派に分類されるだろう。それを心して聴いてくれ」
「承知」
とブルーが頷くのを確認するとレッドが始める。
「まず最初の魔球は『ファイナル・デッド・マギカ・インパクト・ファストボール』。こいつは知っての通り俺の必殺技である『F・D・M・I・オーバーヒート』を拳ではなく球に乗せて放つ魔球。なので当然ながら投げると打者が死ぬ」
……でしょうね。
「……でしょうな」
と頷いていたブルーが口を開く。
「巨大化した怪人ですら軽くワンパンする威力……譬え直撃せずともストライクゾーンを通過しただけでも打者は鬼籍に入る事かと。私とて捕るのは数球が限界かと思われます」
いや、あの攻撃を数発でも耐えられる時点でブルーも相当な怪物だけどね……ってか元魔王だけど。
――としているとレッドは「フゥ」と鼻から息を抜き。
「やはりブルーでも数球か……ならば俺がピッチャーをやる場合こいつは決め球中の決め球。ここぞという時にだけ投げるとしよう」
「ですな。となると主軸となる球は別の球にするとして……他にはどのような魔球をお持ちで?」
「そうだな。他には『垂直落下式フォーク』や『超光速スライダー』なんてのがある」
ま、真下に落っこちるフォークと光より速く曲がるスライダーって事?
「だがコイツらはあまり投げたくない。何故なら名前がダサいからだ……」
そんな理由っ? 打者が打ちにこないとボール球になるからとかじゃないのっ!?
するとブルーはアゴを一撫でして。
「ではこういうのは如何か? 『垂直落下式フォーク〜季節の野菜を添えて〜』というのは?」
「採用」
判断はやっ!
「良い名だ。コイツを投げる時は冥土の土産に球と一緒に本当に季節の野菜もブン投げてやろう」
「ほほぅ。それは本格的ですな? さすがは本格派……」
本格派ってそういう?
というところで会話に躍り出て来たのはキリンちゃん。
「レッド。僕も光速スライダーの名前を考えてみたんだけどいいかな?」
「言ってみろ」
と偉そうに両腕を組むレッド。
「うん。『地中海風 超高速スライダー~ビスクソース掛け~』ってのはどう?」
するとレッドは腕を組んだまま満足そうに何度も頷き。
「なるほど。本格派の俺に相応しい本格中華って事か……」
中華料理!? 地中海とかビスクって言ってるのにっ?
しかしどういう訳かキリンちゃんは嬉しそうに。
「うん。ほら良く『本場中華は火力が違う』って言うじゃん?」
「ああ」
「だから中華ッポイ名前にすれば相手打者も良く燃えるんじゃないかなって?」
燃えるっ?
「ちょ、打者が燃えるってどういう事?」
私が思わずキリンちゃんないしはレッドに問えば。
「何を言っているんだお前は? 俺は技巧派のブルーとは違い本格派だぞ? 打者の家を燃やすといった間接的な事はせず、直接打者を燃やすに決まっているだろう?」
「それ料理とか関係ないじゃんっ! 結局相手打者殺すだけの魔球って事!?」
あっ! だから冥土の土産に季節の野菜一緒にブン投げるとか言ってたのか!
って、そんなんどうでもいいわと思っているとブルーが透かさず否定してくる。
「いや、それは些か違いますなピンク殿。『F・D・M・I・ファストボール』は打者や審判。そして場合によっては私をも殺す魔球かもしれませんが『季節の野菜』や『ビスクソース』は打者だけを殺す魔球。この差は非常に大きな差かと……?」
うん。もうね……季節の野菜とかビスクソースとか野球の話じゃなくて料理の話なのよ。しかもサラッと打者だけじゃなくて球審まで殺すとか言ってるし……。まあ、球が近くを通っただけで死ぬんじゃそりゃ審判も死ぬだろうけどさ……。と考えながら。
「いや、まあそうかもしれないけどさぁ。もっとこう――相手を殺すような物騒な魔球じゃなくて普通の平和な魔球はないの?」
「ありますかレッド殿?」
と私の代わりにブルーが訊ねると。
「平和な魔球か……ならば『魔球理不尽』だな」
……もう名前からして嫌な予感しかしないんだけど。
「一応訊いておくけど。どんな魔球なの?」
「安心しろ人畜無害の魔球だ。こいつは1球投げる毎に俺のチームに1点入るという魔球だ」
「いやもう守備側に点が入るってルールが捻じ曲がってんじゃん!」
相手からしたら名前の通り理不尽極まりない魔球だよ!
とゆー最強の魔球を有していたレッドだけど――結局。四天王温泉回との野球対決はブルーが先発してレッドが抑えとして出場。そしてわかりきっていた事だけど、それでも私達は圧勝だった。
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