第21話 野球回

 メンバーが5人に戻りマスコットも獲得した私達は順調に敵を倒していくものの、ラスボスであるスク水のシッポはいまだに掴めないでいた――ものの。ついこの間ようやく四天王野球回を相撲で倒す事に成功した。


 ――ものの。


 今度は四天王野球回と仲の良かった四天王温泉回が野球回の仇と野球で戦いを挑んできた。……温泉回のクセに。


 なので私達は果麺ライダーさんとパンストセイントちゃん達に協力してもらって野球で戦う事になったんだけど、今日のミーティングはそのためのポジションと打順を決めるミーティングである。


 ――で。

「まあ、俺達の実力なら誰が何番を打っても問題はないだろう。大事なのは守備……ポジションとみた」

 レッドの言葉にみんな無言で頷く。

「パンストセイント達には『外野は私達に任せて下さいください』と連絡を受けているので任せて問題ないと思っている。そして果麺ライダーは『一通りどのポジションでもこなせる』と言っていたので最後に残ったポジションを埋めてもらうとしよう」

 みんな再び無言で頷く。


 うん。良かった。前回パンストセイントちゃん達と仲良くなっといて……安心して外野は任せられる。


「で、だ。やはり1番肝心となるのはバッテリーだが……我こそはという奴はいるか? 無論ピッチャーでもキャッチャーでも構わない」

 とレッドが促すも……


 ……みんな顔を見合わせるだけで誰も立候補せず。

「なんだ? 誰もいないのか?」

「あの……ちょっといい?」

 なので堪らず私が口を挟む。

「たぶんなんだけど――みんなあんたがピッチャーに立候補すると思ってそれ待ちだと思うんだけど? どうせあんたの事だから魔球の2個や3個持ってるんでしょ?」

「なんだそうなのか? まあ確かに魔球は投げれるが――俺の球を捕れるのは恐らくブルーかグレーくらいだろうから俺はどちらかと言えばキャッチャーに立候補しようかと思っていたのだが? だから逆に俺はブルーかグレー辺りがピッチャーに立候補するか様子を見ていたのだ」

 なるほど。それで全員が様子見になっちゃったのね。

 そしてここでブルー。

「ふむ。となれば――レッド殿の魔球がどんなものか聞いて私かグレー殿が捕れそうならばレッド殿がピッチャー。無理そうならばレッド殿がキャッチャーで私かグレー殿がピッチャー……という感じでしょうか?」

 それを聞いた私。

「それでいいと思う。私と小豆ちゃんは変身して身体能力上げてもブルーやグレーちゃんほどピッチング能力もキャッチング能力もないだろうから」

「同感だな。私に至ってはドカベンを読んでいなかったらルールすら知らなかったからな」

 と小豆ちゃんが続くけど、ドカベンでルール覚えたって逆にコアなんじゃない? というところに更にグレーちゃんが続く。

「奇遇ですね小豆さん。実は私も北斗の拳を読んで野球のルールを覚えました!」

 どうやって? あんな世紀末にヒャッハー言いながら野球やってるモヒカンいないでしょ?


「よし。まぁお前達の野球事情はわかった。今の話からするとピッチャーとキャッチャーは俺かブルーのどちらかがどちらかをやるのがベストのようだな?」

 というレッドの意見にブルーが頷き、私達もそれに続く。

「ではどちらがどちらをやるかだが――俺はキャッチャー第1志望なのでブルーよ。まずはお前がどんな魔球を投げるのか訊いておきたい。一応訊くが当然魔球は投げれるのだろう?」

 これにブルーは一つ頷き。

「無論。しかし恐らくですが口振りからしてレッド殿は本格派かと思いますが、私はどちらかと言えば技巧派なのでそれを念頭に置いて聴いて頂きたい」

「わかった。ではどんな魔球が投げられる?」

 するとブルーは思索に耽るかアゴを一撫で。

「そうですな。まず最初の魔球は『炎の魔球』ですかな?」

 耳馴染みのあるような、割りかし名を聞く魔球のようだけど……?

「この魔球は投げると球が炎を纏う……というようなものではなく、投げると球ではなく打者の家が燃える――つまり打者の家を火事にして全焼させる魔球ですな」

 や、野球やってたらいきなり家が火事になるって事っ!?

「ほぅ? 家を全焼させる炎の魔球か……メンタルを削るとは技巧派らしい魔球だな」

 け、削り方エグくない? 技巧派ってそんな感じなの?


 っと考えているもブルーは構わず先へ行く。

「次の魔球は『七色の魔球』。これは投げると球が七色に輝き――打者の家が燃えます」

 またっ? 名前違うだけでさっきの魔球と殆ど効果一緒じゃん!

「そして次の魔球は『分身魔球』……」

 展開はやっ! レッドのコメントもなしにもう次?

「この魔球は投げると球が分身する……なんて事はなく打者の家が分身します」

 また打者の家っ!

 としているとレッドが驚愕の表情を浮かべ。

「バ、バカなっ! では分身魔球を投げたあとに炎の魔球や七色の魔球を投げると――ッ!?」

「フフッ。お察しの通り打者の家が倍燃える事になりますな」

 フフッて笑うとこブルー? ワザワザ家倍にして燃やすとかどんだけ性格悪いのよ。


 そしてブルーは微笑んだまま。

「次に最後。私の決め球となる魔球で『消える魔球』……」

 って、どうせ球が消えないで打者の家が消えるんでしょ?

「これは投げると球が消える訳ではなく、打者の大事な思い出だけが記憶から消えていく魔球ですな」

 なんなのあんたの魔球っ! どんだけ打者の精神すり減らしたいのよ。技巧派ってそんなのばっか…………あ、いや違う! そうかこいつ元魔王だった! 技巧派とか関係なくて性格悪い魔球とかお手の物なのかっ!

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