第20話 渋滞☆魔法少女

 そして大雑把とはいえ自己紹介も終わったので。

「それで? 私に魔法少女になって欲しいってどういう事?」

 とアイリアちゃんに改まり訊いてみると。

「そのまんまの意味です。ただ、私達と契約してというのは私達の事務所と契約してという意味で、要はピンクさんにアイドルになってもらって『パンケーキ・ストロベリー・セイント』に加入してもらいたいんです。お気付きだとは思いますが私達は黄道12星座をモチーフにしたアイドル。なのでメンバーは全部で12人……あと9人集めたいのです」


 な る ほ ど 。


 ……う〜む。ちょっと前まで私達も人数足りてなかったもんね。どこも人手不足は否めない……か。でも。

「なんで私なの?」

「それはもうピンクさんでしたら容姿も戦闘力も申し分ないですし、私達の活動に1番理解があるかなと……。なので実はグレーさんと小豆さんも一緒に候補に挙がっています」

 そうなのっ? でも確かに2人の方が私より遥かに適任な気はする……けどそれは置いといて。

「いや、ちょっと待って。理解はあるつもりだし、戦闘力も変身すればたぶん問題ないレベルだとは思うんだけど――容姿はちょっと無理がない? あなた達って町を歩けば10人中10人の男性が振り返るくらいの美少女でスタイル抜群だけど、そこに私が加わったら顔面偏差値下げるだけだよ?」

 と言ってみたけどアイリアちゃんはクスクス笑い。

「そんな事ありませんよ。確かに私達が3人揃って町を歩けば10人中10人がメキシコ人です……」

 どーゆー状況?

「まあ正確には10人中10人が謎のメキシコ人ホセですが……」

 謎のわりには全員ホセって名前は判明してるんだ……。

「でもピンクさんが加わっても10人中9人がロドリゲスになるだけですよ」

「どーゆー事なのっ! 美の基準が全くわからない!」

 しかもホセって名前だけどロドリゲスって苗字だよね? つまり10人中9人がホセ・ロドリゲスって事! ってそんなんどうでもいいわっ!


 と思いつつ。

「それに私さ、魔法少女というには年齢的にギリギリアウトだと思うんだよね? ふつーに社会人だし」

 とアイリアちゃんに訴えかけてみれば。

「えっと、じゃあピンクさんは魔法少女ではなく物理少女という事ですか?」

「いやアイリアちゃん。年齢の話してるから魔法とか物理の問題じゃないのよ……」

「なら魔法おじさんでいんじゃない?」

 っと横から急にキリンちゃんの声が飛んでくる。

「なんで性別まで変えちゃうかなっ! おじさんって程の歳でもないし!」

 そこへ再びアイリアちゃん。

「わかりました。じゃあ物理とおじさんの間を取ってホセ・ロドリゲスというのはどうでしょう?」

「物理とおじさんの中間がホセ・ロドリゲスだったの! いや、じゃなくて今は魔法少女と物理おじさんの間の話をしてた……はず?」

 ん? いや違うか? もう良くわからなくなってきた。しかも魔法少女と物理おじさんって新しい対義語みたいになってるし……。


 なんて話の内容を見失いかけていたその時。

「いい加減にしろっ! さっきから黙って聞いていれば、貴様の意見は否定的なものばかりだな? そんなに我々の仲間になるのが嫌か?」

 と鬼の形相で私に人差し指を突き付けてきたのは――牛尾シャイカちゃん。

「我々は貴様のために明太子座のポストを空けて迎え入れる準備が出来ているのだぞ。何が不満なのだ?」

「いやちょっと待って。黄道12星座に明太子座なんてないよね?」

 と言っていると、そこへもう1人の娘。獅子川ランちゃんが入ってくる。

「そうだよシャイカちゃん。明太子座じゃなくて辛子明太子座だよっ!」

 ……え?

「いやランよ。タラコを辛くした物を明太子、または辛子明太子というのであってタラコと明太子は別物だが、明太子と辛子明太子は同じ物だぞ」

「あ、そうなんだ!」

 頬に汗を垂らすシャイカちゃんと驚くランちゃん。

 そんな2人のやり取りにアイリアちゃんは微笑みながら。

「でもどうですかピンクさん。獅子座レオのアイリア、牡牛座タウラスのラン、乙女座バルゴのシャイカ、辛子明太子座スケトゥダラのピンク……。かっこいい4人組になれると思いますよ?」

「あ、あの〜それっぽく辛子明太子座スケトゥダラって言ってるけどそれ介党鱈すけとうだらの事だよね? なんで私だけ日本語なの? 鰯野つみれだからせめて魚座ビスケス辺りじゃダメなの?」

「貴様はまたそうやって……」

 とシャイカちゃんが言いかけているけど。

「あのねシャイカちゃん……それにみんなも聴いてくれる?」

 と私はシャイカちゃんの言葉を遮り――そして続けた。

「みんなが私の事を高く買ってくれているのは凄く嬉しいし、色々言ったけど気持ちとしてはパンストセイントに加入するのも嫌じゃない。けど実際問題スーパー戦隊ヒーローと魔法少女の掛け持ちって簡単じゃないっていうか……やっていいのか私個人で勝手に決めていい事じゃないと思うの。だから前向きに検討するって事で答えは一旦保留にさせてくれない?」

「まあ……確かにそうかもしれないな。そういう考えがあったなら最初からそう言えばいいものを……」

 と、実につまらなそうに両腕を組みソッポを向くシャイカちゃんだけど、とりあえずは納得してくれたみたい。

 そしてアイリアちゃんは。

「わかりました。確かに簡単に答えを出せる話ではなかったですね。けど、私達はいつでも大歓迎なのでその気になったら声をかけて下さい」


 とゆー事で私の魔法少女への道は一旦保留となったけど、おかげでアイリアちゃん達とはちょっとだけ仲良くなれた気がする。そしてその仲良くなった事が――次の戦いでのカギとなるのだった……?

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