第17話 生…………モノ。

 結局どういう理由なのか良くわからないけどマスコットちゃんの飼い主は私という事で私以外は満場一致となった。


――ので。

「ねぇ小豆ちゃん。この子を飼うのに何か注意点ってある?」

 と私の肩に移動したマスコットちゃんを撫でながら小豆ちゃんに訊いてみると。

「いや、特にはないな。結局はロボットなので普通のペットを飼うのとは訳が違う。餌をやる必要とかないからな……ウンコはするが」

「どーゆー原理っ!」

 なんで食事しないのにウンチだけするの?

「ははは、そんな顔をするな。安心しろ……ウンコといっても本当にウンコをする訳じゃない。実際に尻から出てくるのはタピオカだ」

「どーゆー原理っ!」

 いや確かにタピオカってカエルの卵とかウサギのふんみたいとか言われてるけど本当にウンチにしなくていいから。

 と考えつつ。

「まあロボットだから食事は必要ないだろうなとは思ってたけど――充電とかはどうやってするの? それとも電池?」

「いや、それも必要ない。こいつは電気で動いてる訳じゃないからな」

「え? じゃあこの子って何で動くの?」

かねで動く」

 鋭い眼光のキメ顔で言ってきたけど、金で動くって凄腕の殺し屋か何かですかっ!

 とか思っているとマスコットちゃんは毛繕いしながら。

「ほら、僕って現金なヤツだから」

 いや、そーゆー問題じゃないんだけどね……。


 ――とゆー意味のない注意点のやりとりを経て。


「それよりつみれ。早くこいつの名前を決めてやれ。でないと不便だろう?」

「あ、そっか!」

 といっても、いざ決めろって言われるとパッと思い浮かばないなー。えっと、性別は女の子でボクッ娘か。この見た目でボクッ娘ねぇ……

 と私が何も思い浮かばず悩んでいると。

「しかし見れば見るほどナマコに似ているな……」

 と零したのはレッド。

「いや、どこがナマコなのよ。全然違うじゃん」

「そーだそーだ」

 自然と口が出てしまう私にマスコットちゃんが続くも。

「勘違いするな。俺が言っているのはこの世界のナマコの事ではない」

「ん? どゆ事?」

「実は俺の居た世界にコイツそっくりな生物が居てな……それがナマコと呼ばれている生物だったという話だ」

「奇遇ですな」

 と突然湧いたのはブルー。

「実は私の居た世界にも似たような生物ナマモノりまして。名はチンアナゴという名でしたな」

 なんでよりにもよってナマコとかチンアナゴとか海の生物ナマモノばっかなのよ。

「ならこいつの名前はチンナマコでいいんじゃないか? 略すとチ〇コになるし」

「何がどういいのよっ! 最悪でしょう女の子なのにっ!」

 とレッドにツッコミを入れていると。

「いやぁ、やっぱ飼われるのこいつじゃなくてつみれで良かったぁ」

 マスコットちゃんが肩の上でボソッと呟いていたけど私も完全同意。


 しかしレッドは反省の色なし、怯んだ様子もなしに。

「ならどうする? 何か他にいい名前が浮かんでいるのか?」

「う……それを言われると……」

 私が言い淀んでいると。

「まあまあレッド殿。やはり『おかず戦隊ごはんですよ(仮)』のマスコットとなれば、我々と同じく名前は食べ物の方が良いのでは?」

 と珍しくブルーがまぁまぁまともな意見で助け舟を出してくれる。

「む? 確かにそれはそうだな。ピンク、お前もそれでいいか?」

「え? いや、私はマスコットちゃんがそれでいいなら別にいいけど?」

 と、この台詞でみんながマスコットちゃんに視線で投げかければ。

「僕はこのメンバーの一員としてみんなと一緒の食べ物の名前の方がいいかな」

 う~ん。小動物とは思えないこの殊勝さ。少しは見習えよレッド。

 ……としているとそのレッド。

「なら食べ物にするとして――。ピンクの代わりに参考までに訊くが、お前何か好きな食べ物とかあるのか?」

 ってマスコットちゃんに訊いてるけど……いや、だからロボットだし食事しないってさっき小豆ちゃんが言って……

「大トロ」

 食べるのっ!

「もちろんお寿司の大トロね! あとは松坂牛かな?」

 たっか! 全然殊勝じゃなかった! 贅沢小動物だった!

「ホラ。僕って基本食べる必要はないんだけど、タピオカのウンチするためには高価なもの食べないと出せないんだよね」

「どーゆー原理っ!」


 大トロ→タピオカ

 松坂牛→タピオカ


 錬金術師も裸足で逃げ出すレベルの等価交換無視だよっ! なんでそんな機能付けたかな小豆ちゃん!


 としているとレッドが首を捻り。

「大トロに松坂牛か……あまり参考にならんな? 他には……逆に嫌いな食べ物とかないのか?」

「キャッサバ! これだけは絶対に食べられない……」

 なんでっ! なんでタピオカのウンチするクセに原材料のキャッサバ食べられないのっ! 確かにキャッサバって毒だから毒抜きしないと食べられないけど――それを抜きにしても原材料キャッサバなしでタピオカ作るとか錬金術師もカツラごと脱帽ものね。


 ――と。


「あの〜ちょっといいですか?」

 片手を上げて申し訳なさそうに会話に入ってきたのはグレーちゃん。

「今フッと思い浮かんだんですけど『キリン』とかどうですか?」

 キリン? と頭に疑問符を浮かべながら私は口を開く。

「いや、今までじゃかなりまともな名前だけど、でもそれだと食べ物じゃなくない?」

「あっ……すみませんキリンとゆーかフルネームは『キリン一番搾り』ですね」

 ビールッ! なんでそれがフッと浮かんだのか謎過ぎるけど。

「キリン一番搾りか……いいね! 気に入った!」

 と何故か喜んでいるマスコットちゃん。


 どういう基準なのか良くわからない……けど本人が気に入ってるならそれでいいのかな?


 というワケで謎の新生物マスコットちゃんの名前はキリン一番搾りになりました。

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