第16話 謎の新生物(ロボ)

「――そうして出来上がったのがこちらです」


「うむっ!」


 と3分間クッキングの仕上げのような台詞だけど――


 え? ウソでしょ? たった1週間でマスコット造っちゃったの小豆ちゃん!?


 ――あれから1週間。いつも通りファミレスでミーティングのために集まった私達だけど――小豆ちゃんの肩には小動物が乗っていた。


 たぶんベースはフェレット? だけどフェレットよりちょっと太い……といってもこれはグレーちゃんのリクエストに応えてモッフモフにしてるから太いというか大きく見えているだけで、実際にはフェレットと同じくらいの大きさだと思われ? だもんでパッと見で言えばタヌキっぽいフェレットって言うのが1番しっくりくるかもしれない。


「凄いですね小豆さん。メチャクチャカワイイじゃないですか! ロボットにも見えないですし……この子って触っても大丈夫ですか?」

 と、謎の新生物に触れないようにしつつゆっくりと手を伸ばすグレーちゃん。

「あ、私も私も!」

 と私も便乗してみると。

「大丈夫だ問題ない……寄生虫にだけ気をつければな」

『えっ?』

 途端に私とグレーちゃんの伸ばしていた手が止まる。

 ……けど私の口は勝手に動く。

「ロ、ロボットなのに寄生虫居るの? てゆーかそれ中の小さいおじさん大丈夫なの?」

「ははは、寄生虫は冗談だ。それと最新鋭の小さいおっさんは中に乗っていない。宗教上の問題で乗れないとの事だ。なのでこいつはAIだけで動いている」

「だね!」

 宗教上の問題でロボットに乗れないってどんな宗教なんだろう……

 とか考えていると小豆ちゃんが続ける。

「因みにこいつは撫でられるのが好きなので触るならたくさん撫でてやってくれ。特に頭、アゴの下、背中、それと隣の家の親父のハゲ頭なんかを撫でてやると喜ぶ」

 いや、最後のは喜ぶというより見て楽しんでるだけなんじゃないの?


 とはいえ撫でていいとの事なので私とグレーちゃんは早速分担して謎の新生物を撫でてみる。

「うわ~もっふもふだ~」

 グレーちゃんの言う通り。ってゆーかモフモフもそうだけど、もうね……触った感じロボじゃなくて生物ナマモノなのよ。これ中の機械マシンの部分って相当小さいんじゃないの?

 と謎の新生物の謎のテクノロジーに想いを馳せていると。

「うきゃ~キモチィ~」

 あ、しゃべった。さっきから「うむ」とか「だね」とか言ってたっぽかったけど、ちゃんと喋ってるの初めて聞いた。そしてやはりプロの声優さん……声もカワイイ。

「苦しゅうない。もっと撫でて良いぞ」

 お? 調子ノってるね~カワイイから許すけど。ってか調子乗ってるのか単純に気持ちいいからなのかわからないけど、マスコットちゃんが小豆ちゃんの肩から落りて私とグレーちゃんの方に寄って来る。……宙に浮いたまま。


 まぁそっか。羽はないけど空飛べるって設定だったもんね。――ん?


「小豆ちゃん……この子ってどうやって飛んでるの?」

 魔法とか超能力ってのはあくまで設定。実際にはドローンみたいに飛ばすのかな? とか思ってたんだけど――この子。フワフワ浮いてるだけで音もしないし風も起こさなければ風に乗っているワケでもない。

 ……のでどうやって飛んでいるのか小豆ちゃんに訊いてみたんだけど。

「それはまぁ……その、アレだ」

 なんか歯切れ悪いね?

「……気合だな」

 気合? 気合で空を飛んでいると?

「いやそれエンジニアが1番言っちゃいけないヤツじゃないの?」

「うっ……まあ本当は愛とか勇気とか、邪神に生贄を捧げるとか方法は色々あったのだが、実際には糸で釣っているだけだ」

 どれもこれもエンジニアがとっていい手段じゃないのよそれ……特に邪神。

 しかし小豆ちゃんがそう言うのであれば私は眼を凝らして確認してみるけど――糸なんて絶対にない。てゆーかそれ以上に糸で釣ってるとしてどこからどう釣ってるのかが不明過ぎる。

「いや……どう考えても糸で釣ってる動きじゃないよね? ヌルヌル動いてるし……てか糸全然見えないし」

「そうか? ほら、よ~く見てみろ……心の目で」

「心の目っ!?」

 って驚いてみたものの。小豆ちゃんは一つ頷き。

「ああそうだ。心の目(物理)で」

「(物理)って、それただの目視じゃん!」

 てゆーかどっちにしたって見えないんですよ!


 ――と。結局この子がどうやって飛んでいるのかは不明瞭なまま話は進む。


「そんな事よりつみれ。こいつに名前を付けてやってくれ。性格の方は私がAIに学習させておいたが、名前はビジュアルが完成してから……という話だったのでまだ決めていないのだ」

「よろしく! つみれ!」

 小豆ちゃんにマスコットちゃんが続いて片手――いや、前脚を上げるけど。

「え? うん、別にいいけど……でもなんで私なの? 普通にみんなで決めれば良くない?」

 と私はみんなを――特にこういう事には口を出さずにはいられないレッドとブルーを中心に一望するけど、小豆ちゃんは肩を竦め。

「まあ皆で決めてもいいのだが、マスコットと言えど扱いとしてはペットだ。ならばやはり名前は飼い主が決めるべきだろう?」

 あ~なるほどね。

「って飼い主っ! 私が?」

 全員が揃って無言で頷く。

「えっ? なんで? 普通マスコットって主人公の側にいつも居るじゃん。となったら戦隊ヒーローの主人公はレッドなんだからレッドが飼い主になるんじゃないの?」

「それは戦隊ヒーロー……の主人公だったらの話だろう?」

 とレッド。


 ……。

 ……。

 …………。


 え? 違うの? 私達ってスーパー戦隊ヒーローじゃなかったっけ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る