第15話 ビジュアル?

「これまでの話を総合するとマスコットの見た目は猫以下の大きさの小動物……つまりパンティがベストだと思うが皆はどうだ?」

 お前はベストって言葉の意味を辞書で調べてこい。そもそもパンティは小動物じゃねぇし!

 レッドが私達に意見を促してくるけど、その中でまず答えたのはグレーちゃん。

「私は概ねそれで構いませんが……欲を言えばモフモフがいいですね?」

 概ねパンティでいいの?

「モフモフか……となるとシルクのパンティか?」

 否が応でもパンティは譲らんのかっ! てかシルクってどっちかっていったらスベスベじゃない?

 ……という、どうせ通じないツッコミを内心で入れていると次は小豆ちゃん。

「レッドよ。これはエンジニアとしての意見なのだが――空を飛ぶのであれば翼を付ける、魔法や超能力の類で飛ぶなら翼を付けない。……でマスコットのビジュアルも変わってくると思うのだが?」

「なるほど、確かに」

 と一つ頷くレッド。

「しかしパンティが何もなしに主人公の周りを飛んでいるのは不自然だから翼を生やすべきだろうな?」

 いや、翼の生えた絹のパンティが空飛んでるのもそれはそれで不自然でしょう? しかもそれ中に最新鋭の小さいおっさんが入って操縦する可能性があるんだぞ?

 ――と。

「うむ。そのビジュアルですとマスコットの挨拶は『お久しブリーフ』で決まりですな?」

 パンティのクセにお久しブリーフ!? お前はもう口開くなブルー。いやブルーフ。代わりに私が口を開く。

「いやあのさぁ……そもそもパンティが生物じゃないんだからちゃんと小動物でマスコット考えない?」

 するとレッドは透かさず。

「う〜む。確かにパンティは生物ではなかったな……ピンクにとっては主食だが」

「な ん で だ よっ! 何をおかずにパンツ喰ってんだ私はっ!」

 妖怪「パンツむさぼり」か私は……。頭の血管キレるかと思うくらい大声出したわ。気が付いたら鼻息は荒いし両肩で息してるし。


 私は首を振りながら息を整え。

「は~……もうさ、普通にリスとかフェレットみたいに見た目カワイイのにしようよ……」

 するとそこへ小豆ちゃんが援護をくれる。

「私もそれに賛成だな。尤もオリジナリティを出すためにリスやフェレットをモデルとした架空の新生物という体で作るが――もうそれでいいんじゃないかレッド? グレーもモフモフにすれば文句はないだろう?」

 小豆ちゃんが2人に問えば。

「私は可愛くてモフモフならなんでもオッケーです!」

 と片手で小さくガッツポーズをとるグレーちゃん。……に続いてレッド。

「別段俺も文句があるワケじゃない。見た目など中にきゅうりが詰まったちくわだろうと、中にきゅうりが詰まった縦笛だろうと、中にきゅうりが詰まったチョココロネだろうとモフモフでカワイイなら何も問題ない」

 うん。それはチョココロネじゃなくてキューリコロネじゃない? どの辺がモフモフでカワイイのかは知らんけど。


 ――と。ここで小豆ちゃんが両手を打ち鳴らし私達の視線を集める。

「よし! ではビジュアルは大まかには決まったな。あとは私のセンスに任せてもらおう。それで――あとは何を決める? 言っておくが性格はさっき言ったように外見が完成してからにしてくれ、あと名前もな。なのでそれ以外の意見を頼む」

 名前と性格以外か……。

 と考えた私はすぐに口を開く。

「これまでに出た基本的なところだと――まず人間の言葉を喋れるか、日本語を喋れるかだよね? あとは空を飛ぶ方法? 翼なのか魔法なのか超能力なのかそれ以外なのか……?」

 ――と。

「そんな事は全てどうでもいい!」

 両手でテーブルを叩き即座に否定してきたのはレッド。

「す、全てどうでもいい?」

 私のオウム返しにレッドは深く頷き。

「ああそうだ。それよりもっと大事な事……先に決める事があるだろう?」

 だったらもっと早く言えよっていう今更感があるけど――それは?

「それは何?」

オスメスか……つまり性別だ」


 ――あ!


「って思ったけどそれってそんな大事? 必要な事だとは思うけどさ?」

「バカか貴様は? 性別を決めなければ一人称……つまり喋り方やそれに性格も決め兼ねるだろう? 逆の言い方をすれば性別が決まれば喋り方や性格も決め易いという事だ」

 ウゲッ! バカにバカって言われたのはショックだけどアホの分際でまともな事言ってる!

 ――と。

「そして何より声を担当してもらう声優を決められないだろう?」

「ちょ、え? わざわざ声優さんプロに依頼するの? てかそんな伝手あんの?」

「当たり前だろう? 素人の声などロクなもんじゃない。そして伝手ならある……グレーだ」

「グレーちゃん?」

 小首を捻りつつグレーちゃんに視線を這わせれば、みんなの視線もグレーちゃんに集まる。

「そうだ忘れたのか? グレーは元々ゲームのキャラクター。つまり声は声優が当てている」

「あ、そっか! グレーちゃんの声初めて聞いた時、透き通るような綺麗な声って思ってたけど、あれってプロの声優さんがエルフをイメージして吹き込んでたからか!」

 良かった……豚足をイメージして吹き込んでなくて。

「わかったか? 要はグレーはゲームのキャラ故ゲーム会社と繋がりがある。なのでグレーから会社経由で声優事務所に袖の下や山吹色の菓子を送ればどうとでもなるという事だ」

 なんで袖の下とか山吹色の菓子とか賄賂前提なの? 普通にギャラ払って依頼すればいいじゃん。


 ――という事で私達はマスコットの性別を決め、その後も細かい設定を決めていった。

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