第9話 日曜の朝ってこんな感じだよね

 と。その時だった。


「どうやらお困りのようだな? その野球回の時にはオレを呼ぶがいい」

 突然湧いた声に私達全員がそちら――隣の席に顔を向ければ、そこには見ず知らずのワイルドなイケメンが優雅にコーヒーを啜っていた。

「あんたは?」

 レッドが率先して全員の疑問を投げかければ、ワイルドなイケメンは両肩をヒョイと竦め。

「オレか? オレは通りすがりの果麺かめんライダーだ」

 か、果麺ライダー! き、聞いた事がある。毎週日曜日の朝、私達とは違う時間帯に悪と30分だけ戦って地球の平和を守っているっていうあのヒーロー!


「あんたがあの……噂には聞いている。あんたが野球回に外国人助っ人枠として来てくれれば心強い」

 言ってレッドは私達を代表するか席を立ち上がり、果麺ライダーに握手を求める。するとライダーの方も立ち上がり。

「そう言ってもらえると嬉しいね。だが先に言っておく、オレが変身して戦えるのは3分間だけだ」

 と言ってレッドの手を握り返した。

 さ、3分間だけなの? なんかウルトラマンみたいだな?

 と。

「それともう一つ。オレは外国人じゃなく宇宙人だ。ワケあって他の惑星から来たのだが、なりゆきでこの星の人間と一心同体になっている」

 いや、だからそれ果麺ライダーじゃなくてウルトラマンの設定じゃない?


 レッドは握手を終えると深く一つ頷き。

「そうか。あんたも複雑な事情があるみたいだな? だが、お互い地球の平和を守る仲間として歓迎する。で、ライダーネームはなんというんだ?」

「果麺ライダータロウセブンだ」

 タロウにセブンってやっぱウルトラマンじゃん!

「地球人の方の名前は?」

「ハヤタ・ダン」

 早田進と諸星弾……ウルトラマンじゃん!

「必殺技は?」

「ああ、腕から光線を出せる」

 スペシウム光せ……ライダーキックじゃないのっ!? もう果麺ライダーの要素一つもないってゆーかウルトラマンの要素しかないじゃん!

「なるほど。『連邦の白い悪魔』という噂は本当のようだな……」

 急にガンダムになっちゃったよ! 急にハンドル切り過ぎてハンドル取れたわっ! てかどこでそんな噂を聞いたのレッド!

 としていると設定が迷子になっている果麺ライダーはニヒルな感じで笑顔を浮かべ。

「フフッ。νガンダムは伊達じゃない……とだけ言っておこう」

 ニューガンダムってはっきり言っちゃったよこの果麺ライダー!


 とまあそんな感じで通りすぎて行ったライダーの話は置いといて。

「しかし困ったな。果麺ライダーが助っ人に来てくれるとして、俺達が元々5人組だから元の人数に戻ったとしても野球をするには3人足りないな……どうしたものか」

 あくまで野球をする事にこだわるレッドだけど――


 ――ん? なんかうるさいな?


 やたらとあっちの方から咳が聞こえてくるなとお店の端っこ……角の席へと視線を向ければ――

「へっ?」

 そこにはなんとプリティーでキュアしてくれそうな美少女3人組がワザとらし咳払いを何度もしながらこっちをチラチラ見ている。

 ――あ。目が合った。

 彼女達は私と目が合うとアイコンタクトなんだと思う、頻りに頷き訴えかけてくる。

 あ〜これはつまりそーゆー事か……。と考えた私はレッドに小声で。

(レッド。もう1回大き目な声で野球をするのに人数が足りないな〜って言ってもらっていい?)

 すると何かを察したのかレッドも小声で。

(それは構わないが何かあるのか?)

(いいから、いいから)

(よし。まあいいだろう)

「く、くそー。野球をやるのにどうしても人数があと3人足りないなー」

 スッゲー棒読み。大根役者か。まあ声の大きさは合格点だけどさ。

 というところで例の彼女達の方へ視線を向ければ、彼女達は席を立つとすぐにこちらへとやってくる。そして先頭に立つリーダーらしき娘が。

「お話は一部始終聴かせてもらいました」

 でしょうね。

「おかず戦隊ごはんですよの皆さんですよね?」

「そうだが? お前達は?」

 とこちらのリーダーであるレッドが訊き返す。すると。

「私達はプリティーでキュアしを売りにしたアイドルユニット『パンケーキ・ストロベリー・セイント』略して『パンストセイント』と呼ばれている者です」

 そう略すのっ? しかもその割に誰もパンスト履いてないミニスカ生脚の脚線美軍団!

 ……に対してウチのレッド。

「話には聞いた事がある。毎週日曜の朝、俺達とは別の時間帯に30分だけ悪と戦っているプリティーでキュアしな聖闘士セイントがいると……。それがお前達というワケだな?」

「プリティー、キュア……」

 やめてブルー。その呟きはギリギリ過ぎる。と思っているとブルーが続ける。

「申し訳ない。私はそういった事に疎くパンストセイント殿の名を聞いた事がないのですが?」

 するとリーダーの娘はパタパタと片手を振り。

「気にしないで下さい。私達はアイドルといっても地下アイドルの更に下を行く地底人アイドルなので名を知らなくて当然です」

 地下アイドルの更に下を行く地底人アイドルって斜め上を行かれたわ。

「それで? そのプリ、キュアが俺達になんの用だ?」

 それもう言ってるのとかわらないのよレッド。

 と考えているのは私だけのようで、当のパンストセイントちゃんは続ける。

「先程も言いましたが話は全て聴かせてもらいました。もし野球回で人数が足りないのであれば、その時に私達も呼んで頂ければ助っ人として駆け付けます」

「本当かっ? それはありがたい」


 ――というワケで一応? 人数が揃った私達だけど――。実際に四天王野球回と戦った時は人数揃えたのに何故か野球ではなく相撲で戦ったという……もう、ね?

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