第7話 新メンバーがやって来ました
遂に新メンバーの応募が来た!
とりあえず1人しかこなかったけど贅沢は言ってられないし今は1人でも上等! ――という訳で今日のミーティングはいつも通りのファミレスで新メンバーの面接という事になった。
そして今――私達はブルー、レッド、私の順で片側のソファー席に腰を下ろし、向かい側に応募してきた子が1人で座ってるんだけど――この子。明らかに見た事がある。つーか毎週見てる気がするんだよね。
私は頬に汗を垂らす。
この全身黒タイツに黒のフェイスマスクってか目出し帽っていうのかな? とにかく目と口の部分だけ穴が空いた被るタイプのマスク。これだけだど出来損ないのテロリストか貧相な銀行強盗ってところなんだけど、この子は両腕に包帯を巻いている……これが特徴的。そしてこの特徴を私達は良く知っていた。
何故なら――この格好は私達が毎週戦っている雑魚戦闘員の
つまり今回応募してきたこの子は敵の雑魚戦闘員という事になる。正直、本来なら形式的に名前とかから順番に訊くのが普通の面接なんだろうけどムリ! 私は面接開始と同時に率直な質問をした。
「あ、あの……あなたって私達の敵。雑魚戦闘員の人ですよね? なんでウチのメンバー募集に応募を?」
「はい。確かに私は組織内で『戦闘員A』と呼ばれています。今回の応募理由はやっぱりお金より大事な物があるな……と思ったからです」
うわっ! めっちゃ声綺麗。これが俗に言う透き通る様な声って言うんだろうな……。ぱっつぱつのタイツのせいでボディラインが丸わかりで、抜群のプロポーションしてる女性だってのはわかってたけど声までこんな綺麗だとは……。あとはあのマスクの下が美人だったら完璧なんだろうけど、
「え? お金より大事な物……?」
「はい。それはもちろん地球の平和を守る事です」
雑魚戦闘員とは思えない綺麗な姿勢できっぱりハキハキと答える戦闘員Aさん? ちゃん? だけど。
「あ、いやごめん。そっちじゃなくてお金って? 確かに今回時給1000円って命懸けるにはやっすい時給で募集しちゃったけど、安くてもいいから地球の平和を守りたいって事?」
そして実際私達は毎週日曜の朝30分しか戦わないから日当で言えば500円。はっきり言って余程の酔狂か余程の正義感の強い人にしか務まらない
「あ、いやそうではなくて……ウチの雑魚戦闘員って日当30万円のバイトなんですけど。それよりもやっぱり私の使命は地球の平和を守る事かなと思ったのです。だから応募しました! もちろん時給は1000円でも全く構いません!」
そっちもバイトだったの! しかも日当30万。時給で言えば60万! そりゃ毎週雑魚戦闘員いくら倒しても居なくならないワケだ。
――と。
「素晴らしい。正義感の塊みたいなヤツだな。良し採用だ」
拍手までして彼女を褒め称えるレッドだけど――ちょっと待って。
「いやいやレッド。彼女敵の戦闘員だったのよ? しかも同じ命懸けのバイトなのに日当30万円から500円の方に変えるってちょっと怪しくない? 敵のスパイかもしれないしもうちょっと慎重に面接してから決めようよ?」
するとレッドは何故か私をギロリと睨み。
「スパイだと? ピンク。お前はいつから仲間を疑うようなヤツになったんだ!」
「いや、だからその仲間になるための面接をしてるワケじゃん!」
――とここでブルー。
「敵か味方かわからない。白か黒かはっきりしない……では彼女の色はグレーで宜しいですな?」
「はい。ありがとうございます!」
声の抑揚からして嬉しそうに返事をしている戦闘員Aことグレーちゃんだけど。
「うん。別に私も彼女の色がグレーなのは反対しないけど、メンバーにするかどうかはもうちょっと慎重に……」
と私が言いかけているとグレーちゃんが遮る。
「わかりました。ピンクさんが私を疑うのはご尤もです。でしたら――私が敵の回し者でない証拠として、私の知っている限りで組織の情報を全てみなさんに開示します。しかしこれも情報の真偽を確かめる術のないみなさんは信用出来ないと思いますので……更にこういうのはどうでしょう? 明日の戦い、私1人で戦って敵の怪人を倒す。必要なら敵の幹部の首も2~3個討ってきます。その働きを見て決めてもらうっていうのは如何でしょう?」
「え? うん、そこまでやったらさすがに信用するけど……でも出来るの?」
正直。敵の雑魚戦闘員って私1人でも簡単に倒せるくらい弱い。けど、怪人となると負ける事はそうそうないけどギリギリ勝てるレベル。だから雑魚戦闘員だったグレーちゃんが怪人を倒せるとは思えないし、ましてや幹部なんて絶対倒せないと思うんだけど?
とか考えているとグレーちゃんは片手を振り。
「あ、それなら大丈夫です。みなさん既にお気付きの様に私エルフなんで」
気付くかっ! そんな全身真っ黒のタイツに目出し帽姿で! って言われてみれば抜群のプロポーションとか透き通るような声とかそれっぽい雰囲気はあったな?
「まあですので私いろんな魔法とか使えるのでそこらの怪人に遅れを取る事はありません。実際、幹部の中でも実力は上から数えた方が早いと言われてましたし、ラスボスよりも強いんじゃないか? って噂されてましたし」
いやもうツッコミどころしかないのよ……戦闘員Aなのに幹部なの? とかラスボスより強いんかい! とか……。でも、私が一番声を大にして言いたいのは――この娘が仲間になった場合。変身しない方が強いんだろうな……だった。
――そして翌日。彼女はやっぱり
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