第6話 必殺技

 それからまた一週間。


 メンバーの募集はかけ直したものの応募はなし。


 なので今日も緊急ではないけどいつも通りのミーティングとなったワケだけど――


「ピンク。前にも言ったがお前やっぱり地味だな?」

 え? いきなりそれっ?

 レッドの突然の発言に私は多少「ムッ」としながら食べ終わったパフェのグラスをテーブルへと戻す。

「先週の戦いを見ていて思ったのだが、お前の戦い方にはどうも華がない。何か必殺技とかないのか?」

 あ、地味ってそういう? そりゃ派手な魔法を使えるあんた達と比べたら私は地味だろうけど――けど。

「え? いる? 確かに私は普通のOLだから必殺技なんてないけど、変身した時に最初から装備されてる丈夫で切れ味のいい剣と、軽くて撃ちやすいビーム銃ガンで十分戦えてるし、何よりあんた達2人が強過ぎて私まともに戦う必要なくない? だから華のためだけに必殺技って言われてもねぇ?」

 と小首を捻っているとブルー。

「いやピンク殿。この先の戦いで何が起きるかはわかりません。やはり切り札的な存在として必殺技は持っていても良いかと?」

 更にレッドも便乗して。

「そうだぞ? 大体今時のOLといえばみんな瞬間移動とか時間停止くらい普通に出来るだろ?」

「出来るかっ! そんなん出来たらみんなOLしてないわ」

 とは言えブルーの言ってる事にも一理あるので。

「でもまあ確かにあって損はないと思うけど急に必殺技って言われても……。参考までに訊くけどあんた達ってどんな必殺技持ってるの?」

 と2人に投げかければ、まずはレッドが口を開く。

「そうだな。まず俺の場合『ファイナル・マギカ・インパクト』という技がある。こいつは俺の全魔力を拳に集中し、殴ると同時に全て放出して敵にぶつけるという一撃必殺だ。但し全魔力を一瞬で放出するという荒業故に体への負担が大きく、一度撃つだけで寿命が10年ほど縮む」

 うわーよくある命を削る系の必殺技かぁ。ちょっと私には真似出来ないな。……と考えているとレッドが続ける。

「あとはこの『ファイナル・マギカ・インパクト』をもっと強力にした『ファイナル・デッド・マギカ・インパクト』。こいつは全魔力だけでなく俺の全生命力も懸けて放つ一撃だ」

「ちょ、全生命力って……じゃあ撃ったあとあんたは?」

 レッドは両の瞳を閉じると静かに頷き。

「ああ。察しの通り寿命が10年延びる」

「な ん で だ よ っ ! どーゆー理屈だ! それなら『ファイナルデッドマギカインパクト』だけ撃ってればいいじゃん!」

 私がレッドを怒鳴りつければ、珍しくレッドが怯えた様子で。

「いやだって……どういう理屈で寿命が10年延びるのかわからないのにポンポン撃つのは恐怖じゃないか?」

「お前も理屈わからんのかいっ! じゃあどうやって寿命が延びてるってわかったのよ!」

 ホントにこいつは……

「まあまあ落ち着けピンク。だから俺も最近F・D・M・Iを改良し、更にその上をいく技を開発しているところだ。名は『ファイナル・デッド・マギカ・インパクト・オーバーヒート』。こいつは前2つの必殺技より遥かに威力が高いが撃ったあと息切れするだけで済む」

「きゅ、急にデメリット小さくなったわね?」

「ああ、名前が長いから大声で叫びながら撃つとどうしても息切れしてしまってな」

「そーゆー理由!?」

 バカでしょこいつ。こいつバカでしょ。ならいちいち必殺技の名前言わなきゃいいじゃん! てか寿命関係ないならこれだけ大人しく撃ってなさいよ。


 頭が痛くなってきた私が片手で額を押さえていると。

「ブルー。今度はお前だ。お前もピンクに必殺技を教えてやれ」

「私ですか? そうですな。まあ私はレッド殿ほど大した技は持ち合わせていませんが、あるのは『科学忍法火の尻』『超破壊尻光線ちょうはかいしりこうせん』『反動三段尻はんどうさんだんじり』といったところですな?」

「なんで元魔王のクセにそんなヒップアタックばっかりバリエーション豊富なのよ」

 てゆーかブルーってタツノコプロ好きなの?

 とツッコミを入れるもブルーは私を無視して淡々と話を進行していく。

「どうでしょうかピンク殿? 我々の必殺技は参考になりましたか?」

「なるワケないでしょ。何をどー参考にしろってのよ。もっとこう……普通の人間でも出来そうな必殺技とかないの?」

「ふむ。そう言われましても……」

 と虚空を眺めながらアゴを撫でるブルーだけど。

「……というより私の必殺技は基本オナラなので誰でも真似出来るハズなのですが? オナラを燃やして火の鳥にしたり、オナラを圧縮して光線化して撃ち出したり、オナラの反動で勢いをつけて三回尻子玉を飛ばすとか……?」

「だからそれが真似出来ないっつーの! てか最後の必殺技尻子玉飛ばして死なないの?」

「うむ。寿命が10年延びるだけですな」

「お前もかい! てかそれが理屈だった!?」


 私は「ハァ」と溜息を吐き……とゆーか溜息しか出ないけど、なんとか次の言葉を捻り出す。

「もうさ、あんた達の必殺技は参考にならないから私でも出来そうな必殺技をちゃんと考えて……」

 と、まともな意見を述べてもまともな返事は返ってこないんだろうなと考えているとレッド。

「そうは言うが――ゼロから考えるのは難しいぞ? 何か基礎ベースとなるものはないのか? たとえば学生時代何かスポーツをしていたとか暗殺拳を習っていたとか」

「いやそれだったら暗殺拳習ってる内に必殺技習得してるわ」

「だろうな。なら仕方ない……今俺が開発しているF・D・M・I・OHだが実は剣にも応用が出来る。なのでこれが完成した暁にはお前にこの技を伝授しよう」

「う、うん……」

 わ、私魔力なんてないけど大丈夫なのかな? ま、まあでも変に寿命が延びたり縮んだりする技よりは息切れだけで済んだ方がいいし、たぶん魔力がないと威力が落ちるだけだろうから私にはこの技がベストなのかな?


 ……という事で私は後にこの技を習い。『ファイナル・デッド・マギカ・スラッシュ・リミットブレイク』という必殺剣技を覚えた。

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