第2話 早速イエローとグリーンが殉職しました
「どうも。世界初のバーチャルしてないバーチャル・ユーチューバーのレッドです」
「いやそれ、ただのユーチューバーじゃん……」
のっけからのレッドの挨拶に社交辞令でツッコミを入れる私だけど、レッドは素早く私に首を向けるとどうでもいい反論をしてくる。
「それは違うなピンク。俺はあくまで世界初の
「……あそ」
なんだ実写化された刺身って? 意味わからん。その譬えいる? てかそもそもあんたユーチューブやってないじゃん。
……と頬に汗を垂らす私だけど――。私達のミーティングはいつもこんな感じで始まる。
知っての通り私達は毎週日曜日の朝だけ地球の平和を守っている。なのでその前日にあたる土曜日に毎週ミーティングを行い、先週の反省と翌日の対策を練ったりしている。そして残念な事に私達には秘密基地といった物がなく、ミーティングはいつも私の会社の近くのファミレスで行っていた。
――なので。土曜日である今日もファミレスに集まった私達だけど……今回のミーティングは緊急の議題があった。それは先週の戦いでイエローとグリーンが殉職してしまった事である。まあ、殉職と言えば聞こえは良いけど奴等はカレーとグリーンカレー。実際のところは戦闘が始まった瞬間に敵怪人に食べられただけである。つまり殉職というよりかは殉食なんだけど、でも敵怪人がカレーに夢中になってる間に私達は後ろからの不意打ちで楽々勝つ事が出来たのでイエローとグリーンをレンチンしてた甲斐が多少はあった……と今にしてみれば思う。
まーそんな訳で今ファミレスに集まっているのは私とレッドとブルーの3人だけ。んで3人だけになってしまって今後どうやって活動していくのか……そのための緊急ミーティングといった感じである。そして緊急と言っても今日明日でどうにかなる問題でもないので、明日はとりあえず3人でなんとか乗り切ろう――ってかレッドとブルーがちょっと本気(変身なし)になれば、私すら戦う必要はないんだけどそれは置いといて、一先ず明日は3人で乗り切る。そして明後日以降は2人の欠員をどうするのか? ……が議題であった。
私は啜っていたホットコーヒーをテーブルへと戻すと。向かいに座るレッドとブルーを交互に眺め。
「それでどうすんの? やっぱスーパー戦隊ヒーローとして欠員は
と二人に質問を投げかければ、レッドが両腕を組んだまま一つ頷き口を開く。
「それは当然だな。とりあえずネット求人でアルバイト募集はかけておいたのであとは応募があり次第面接……2人採用となれば御の字だな」
バイトゥ!
「ほほぅ。さすがはレッド殿は仕事が早い。しかしアルバイトの伝説ですか……」
いやいやブルーっ! そこしみじみ頷くところじゃないでしょう? しかもバイトの伝説じゃなくてバイトの面接ねっ!
と声を出してのツッコミはエネルギーを消費するので私が内心でツッコミを入れていると話は勝手に進む。
「その通りだブルー。知っているか? 初めはバイトだったが
ゆ、勇者って役職だったのっ!? てかそれ店長から勇者って一気に出世し過ぎじゃない?
……と思っていたけどブルーの言葉で引っ繰り返る。
「お~勇者の段階で魔王を倒すとは伝説ですな? 普通はバイト→社員→店長→勇者→本部長→常務→専務→社長の順で出世し、専務か社長辺りで魔王を倒すのが一般的ですからな?」
そうなのっ! 勇者の地位低っ!
「いや、てかさぁ。レッドってその勇者だったんでしょ? もしかしてそれ自分の話?」
堪らず私はレッドにジト目を向けるも、レッドは何事もなかったかの様に涼しい顔で。
「馬鹿な。俺の居た世界では『勇者』は職ではなく称号だ。俺は勇者を冠していただけで職業はちゃんと別に就いていた。今のバイト伝説はこの世界の話だ」
聞いた事ねぇよそんな
――と。
「因みに私を倒した勇者殿も『勇者』は称号で別の職を持っていましたな」
そっちの世界もかいブルー。
「更に因みにですが私を倒した勇者殿の職業はVチューバーで、私を倒した時には『
不謹慎じゃなーいっ! てかさすがにそいつレッドじゃないの? つーかあんたの居た世界にもVチューバー居たんかい!
と相変わらずレッドとブルーの元居た世界の良くわからない滅茶苦茶な世界観に内心で不服を唱えながらも、私はなんとか舵をとろうと試みる。
「いやあのさ……話脱線し過ぎじゃない? アルバイトの伝説話はもういいから、ちゃんとメンバー募集の話をしようよ」
「うむ」
「そうですな」
私の言葉に頷く2人だけど――。
とりあえず今日のところはレッドがネット求人を出しておいてくれたという事で、応募がくるまで素直に待とうという話になり、この日のミーティングはここまでとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます