戦隊ヒーローのピンクだけどウチのメンバーがクレイジーで困る
高谷
第1話 プロローグという名のモノローグ
私はどこにでも居る普通のOL。
……だけど地球を侵略する悪の怪人が現れた時だけはスーパー戦隊ヒーローのピンクとして悪と戦い地球の平和を守っている。
OLの仕事も地球の平和を守る事も大変だけど別段不満はない。不満はないんだけど――私は唯一ウチのメンバー……つまり戦隊の他の面子にだけは不満を抱いていた。
ウチのメンバーは教科書通りな5人で構成されていてピンクはモチロン私。以下レッド、ブルー、イエロー、グリーンとオーソドックスな感じになっているんだけど私はコイツ等に納得がいかない。どこに納得がいかないのか例を挙げると――
――まずレッド。
普通。戦隊もののレッドと言えば熱血漢のリーダーで戦隊ものの主役である。ウチのレッドも御多分に漏れず熱血漢のリーダーだけど……この男。戦隊もののヒーローにあるまじきかな変身した後より変身する前の生身の人間の時の方が圧倒的に強い。変身しないで敵の怪人をワンパンしたり、ザコ戦闘員を良くわからないスゴイ魔法で一網打尽にしているのを何回か見かけた。
何でも訊いた話によると彼は以前。異世界で勇者をしていたらしく――魔王を倒した暁に神様に褒美として異世界に転移してスローライフを送りたいと願い出たところ快諾され現在に至るらしい。
「いやそれ結局この世界で悪の怪人と戦ってたらスローライフって言わないでしょ?」と私が前にツッコミを入れてみたところ「向こうの世界じゃ毎日、毎時の様に魔王の手下と戦っていた。それからすれば毎週日曜日の朝に最長でも30分弱の戦闘をして終わりなんて俺からすれば十分スローライフ……悠々自適。毎日が日曜日みたいなものだ」と言われた。うん、毎日が日曜日だと結局毎日戦う事になるじゃん! っというツッコミはさすがに面倒臭くてしなかったけど――。以上の理由からこいつはレッドのクセに殆ど変身しないし、地球の平和もバカンスついでで守っている……戦隊ヒーローのリーダーとしては目に余るものがある。
――次にブルー。
戦隊もののブルーと言えばレッドのライバル的ポジションでサブリーダー。クールでニヒルな感じである事が多いと思う。ウチのブルーもこれに当てはまり完全にレッドのライバルポジションをほしいままにしている。何せこの男も変身する前の方が強くて変身するとレッドと同じく弱体化する。しかしそれ以上にライバルとされる理由は……実はこの男は異世界から転生してきた元・魔王らしい。
因みにブルーはレッドの居た世界とは別の世界で魔王をしていたらしく、勇者に倒される際に「次は良い奴に生まれ変われよ」と言われ、それを神様が聴いていたらしく「世界を救った勇者の願いは叶えてやりたい」という事で良い奴に転生させられたらしい。ただ、魔王だった奴がいきなり同じ世界で良い奴として転生しても信じてもらえないだろうし、本当に良い奴になったか確証がないのでこの世界でお試し復活……という流れとの事だけど、そりゃいい加減過ぎでしょう神様……?
更に因みにだけどレッドとブルーは前の世界で勇者と魔王だけあって普通に魔法が使える。だけど変身するとバトルスーツの力が変に作用して魔法が撃てなくなるらしい。更にスーツがピチピチ過ぎて動き難いらしく、肉弾戦でも著しく戦闘力が低下する。なのでこいつらは変身すると弱体化してしまう…………ってふざけてるのか?
――更に次はイエロー。
イエローといえばステレオタイプだとひょうきんで明るくお調子者。あと古いイメージで言えばカレーが大好物、三度の飯よりカレーが好き…………いや、カレーも飯だけどそれは置いといて。うん、まぁ……仮にカレー好きという設定だったとして、仮にカレーが好き過ぎる設定から安易にイエローがインド人だったとしてもまだ許せる。けど、いくらなんでもウチのイエロー……カレーそのものってあり得ないでしょう! 人間ですらないただの食事ってどういう事っ? 当たり前だけどヒーローに変身出来ないしっ!
――もうついでだから最後のグリーン。
……グリーンカレー。
まさかのカレー被りっ!? おかしいでしょっ! 戦隊ヒーローの5人の内2人がカレーっておかし過ぎるでしょっ? ってかカレーを『2人』って数えるのもどうかと思うけど、それはそれとして――。レッドは変身しない、ブルーも変身しない。イエローとグリーンは変身どころか移動すら出来ない。いっつも私がレンチンして温めてから現場に運ばなきゃいけない始末。……まぁレンチンする必要があるのかどうかは甚だ疑問だけど。
――と。
とにもかくにも勇者、元魔王、OL、カレー、グリーンカレー……こんな5人でスーパー戦隊ヒーローって非常識にも程がある。チビっこ泣くでしょうこんな戦隊ヒーロー。
でも、泣き言は言ってられない。現状この5人で頑張って――特に私が頑張って地球の平和を守らなきゃいけない! ……と思う。
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