第4話 心の変化
慧人が少女と出会ってから3ヶ月が経過した。その間2人は特に何をするでもなく旅を続けた。
変わったことは特にない。唯一あるとすれば、慧人が魔物との戦いなどで自殺行為をしようとした時に少女が止めるようになったことだ。
「……そう言えば、名前を聞いてなかったな。お前、なんて言うんだ?」
「レミア……レミア・ルリファよ」
「レミアか」
「あなたは?」
「慧人。時任慧人だ」
「慧人……いい名前」
レミアはそう言って何度も呟いて名前を頭に刻み込む。そして、絶対に忘れないようにした。
「……渓谷か……。確か、ここを通れば街があったな。食材を調達しよう」
慧人はそう言ってその渓谷に足を踏み入れた。
「……そう言えば、あなたの着ている服はどこで買ったの?」
「服?どうでもいいだろ」
「そう、気になっただけ……」
レミアはそう言って少し暗い顔をする。慧人はその顔を見てため息を1つついて言った。
「はぁ、これは自分で作ったものだ。魔物の毛皮を使っている」
「そう、器用なのね。凄いわ」
「それほどでもない。それに、たとえ俺に特技があろうとも、その特技を見せる時もなければ見せたところで褒められることも無い」
「なら私が褒めるわ。慧人、凄い」
「……勝手にしろ」
2人はそんななんでもない会話をしながら渓谷をぬけていく。その間にも魔物が襲ってきたが、慧人の前では相手にすらならない。
「アークシャークよ。気をつけて」
レミアは襲ってきたサメを指さしてそう言った。そして、戦闘態勢をとる。しかし、慧人は全く動揺することなく手を前に突き出して魔法を唱えた。
「”
その瞬間、アークシャークは動きを止める。そして、一瞬で死んだ。
「行くぞ」
慧人は何事も無かったかのように歩き始める。しかし、レミアが何故か着いてこない。
「……」
「どうした?」
慧人は疑問に思って聞いた。するとレミアは言う。
「なんでそんな力を持っているのに自分に使わなかったの?時を戻して嫌われる前に戻らばよかったはずよ」
「俺の力は万能じゃない。範囲は対象とした物質から2メートル以内、戻せる時間は5分が限界だ。だが、それは代償無くして発動できるもの。基本的に代償を払えばなんだって出来る。戻せる時間も増えれば、範囲も大きくなる。だが、それには全て自分の命を代償とする。1時間も戻してしまえば俺の寿命は10年……いや、それ以上減ってしまう。俺はまだ死にたくないんだよ」
慧人はそう言って前を向いた。そして再び足を進める。それから2人は何事もなく渓谷を抜け街へと辿り着いた。慧人はその街で正体をばらすことなく食材などの調達をする。そして街を出た。
「今日も野宿?」
「当たり前だ。俺達はこの世界では嫌われ者。騒がれる前に去るぞ」
慧人はそう言って街を後にした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━そして、それからさらに3ヶ月が経過した。これで慧人はこの世界に来て半年が経つ。さすがにそれだけ時間が経てば2人の関係も進展した。
「慧人、ご飯よ」
「分かった」
2人の仲はこれまでより近くなり慧人にある感情が芽ばえる。それは、好きという恋愛感情だ。慧人は半年の旅の末レミアのことが好きになっていた。
「どう?美味しい?」
「あぁ」
2人はそんな会話をして一緒に夕食を食べる。そんな幸福に満ちた生活をしていた。
慧人はそんな時間がずっと続けばいいと思っていた。しかし、そんな願いや思いを世界は許さない。その日、慧人を悲劇が襲った。
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