第3話 同じ境遇の女性
それから何日も旅を続けた。何を求めているのかも分からない。幸せを求めているのか?平和を求めているのか?何も分からない。
慧人はそんな旅で情報を集めた。それによると、この世界では時間魔法を使う者は畏怖の対象とされているらしい。そして、職業が時の魔術師の者は尚更。
そして、この世界でオッドアイは軽蔑される対象であり、さらに紺青色と水色は死を招く色だとも言われている。
だから、その全てに該当する慧人はこの世界ではいらない者であり、死の対象とされているのだ。
慧人はこれまで5つの街へと行き、どの街でも自分がオッドアイであること、時の魔術師であること、時間魔法を使うことを明かしてしまった。そのせいで全ての街から追い出され、それを知った。
慧人はそれを知りさらに絶望した。そして、もうこの世界には干渉しないことに決めた。だからその目にカラコンつけようとした。
しかし、どうやらこの世界にはカラコンというものは無いらしい。不幸にも慧人はカラコンを持っていないから隠すことは出来なかった。だから人との接触を嫌った。
そんなある日慧人はある少女と出会った。その少女は何故か道の真ん中で倒れていた。慧人はその少女を見て立ち止まり考える。
「……意識は無いのか……。脈はある。生きてはいるみたいだ。倒れて時間は経っていないようだな。なら、まだ助けられる」
慧人はその少女を見て思った。この少女も世界から見放されたのだと。そして、この少女は自分と同じで生きることに執着していると。
「……お前も死にたくないのか。生きたいのだな。なら、生かしてやろう。生へと執着し醜く生きろ。”
その瞬間、慧人が魔法をかけた少女は眩い光に包まれた。そして、少女は目を覚ます。
「ん……!」
「目を覚ましたか」
「っ!?」
少女は慧人の言葉を聞いてすぐに起き上がり慧人を見た。
「っ!?」
そして、当然のようにその目を見て驚く。
「どうした?俺が怖いか?それとも俺嫌うか?恩など感じなくていい。嫌いなら嫌いと言え。怖いなら怖いと言え。そして消えろ。俺には関わるな」
慧人はそう言ってその場から離れていく。しかし、その女性は何故か慧人の前に立ち塞がった。
「なんだ?俺を殺すか?やめておけ。死ぬだけだ」
慧人はそう言って手を前に突き出し魔法陣を作り出す。すると、手の周りを3つの魔法陣が回転しながら現れた。
「っ!?時間魔法!?」
「怖いか?死にたくないなら去れ」
「……っ!怖い……なんて言えない。私もあなたと同じ目を持っているから」
「その目か?水色の瞳……。死を招く色か」
「正確に言ったら病気を招く色。その病気が死病なの」
「どっちにしろ同じだ。俺はお前らが畏怖の対象にするものを全て持っている。もう俺に関わるな」
慧人はそう言った。しかし、その女性は言う。
「ダメ。それでも恩を返させて欲しい。たとえあなたがなんと言ってもついて行く。そして恩を返させてもらうわ」
「……フン、好きにしろ」
慧人はそう言って2人で旅を続けた。
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