第25話
現在シャナラ市に戻るのは危険すぎる。俺が強くなったとはいえ、あのクズ勇者に対しては未だ必勝の確信が持てない。奴がこの間何もせず、ただ女を弄んで遊んでいたのであれば話は別だが……。
いや、それもあり得なくはない。勇者として、あいつは決して努力家とは言えない。特にダンジョンズに入ることを嫌がっていた。ダンジョンズ内では女を抱くこともできない日々が続くのが嫌だとか、風呂に入れないのが嫌だとか、たらふく食べられないのが嫌だとか言い訳ばかり。ダンジョンズ内では食料を厳しく管理する必要があるし、補給ができるとは限らない。あいつがその辺りで勝手に食べすぎて、俺と何度も言い合いになったことを思い出す。そう考えると、あいつが俺を殺そうとしたのは、単にオリーブのためだけじゃなかったのかもしれない。
それでも、こんな推測に賭けるわけにはいかない。勇者に勝つには、もっと手札が必要だ。今の俺では100%の勝算はない……。
次にどこへ向かうかを相談しなければならない。北へは行けない。王都がこの北西の方角にあり、距離はあるが近づくのは賢明ではない。あのクズ勇者がどんなに問題を起こそうと、奴は王子だ。俺のような平民のために国王が勇者を罰することなどあり得ない。遠ざかるべきだ。最善はこの国を離れ、邦交のない国、例えば獣人国に行くことだろうか?
デージーが勝手に連れてきた虎人族の女を思い出す。今考えると偶然とはいえ興味深い展開だった。彼女は直感だと言っていたが、女の直感というのは時に恐ろしいものだ。俺も気をつけるべきだな。虎人族は大柄な種族で、アミリアのように小柄ではない。彼女の豊満な尻を思い浮かべると、歩く姿の優雅さに自然と俺の相棒が頭をもたげてくる。
みんなと話し合った結果、獣人国に向かうことに決まった。アミリアが反対するかと思っていたが、彼女は俺の腕に抱きついて「主人がアミリアを守ってくれる」と言って納得してくれた。ただし、他の奴らの殺気がすごい。胸を擦りつけるのはやめてくれないか?
「いや、二手に分かれた方がいいかもしれないな。」
俺の考えでは、アミリアたちはステラの隊に加わるのが良いと思ったが、
「ずるいよなぁ、あんたがご主人を独り占めだなんて!」
「じゃあ、全員で一つのパーティー組めばいいんじゃないのか?」
「そしたらご主人がひとりぼっちになっちまうじゃん?ご主人が強いのは分かってるけどさ……」
結論は出なかった。ただ、暫定的にステラたちがシャナラ市の冒険者ギルドに報告し、その後南西の獣人国へ向かうことになった。そしてデージーとアミリアも一緒に行き、デージーの隊での死亡者の報告や隊員変更をする。
一方で俺は村を出たがっているラクレジアを連れて南西に向かうことにした。その途中でいくつかの村を経由し、暗黒ダンジョンズのある村を通り、国境のモディック伯爵領に行く予定だ。いや、俺は一人じゃない。ラクレジアがいる……いや、ほんの数日間だけじゃダメか?
「もしご主人の命令だったら……」
それでいい。疑われるのは御免だ。
「ご主人がまだ生きてる情報を報告する必要ある?」
「いらねぇよ。」
「了解。」
村人たちは俺たちが出発することを知り、送別の宴を開いてくれた。ラクレジアは過去に過ちを犯して追放されたとはいえ、多年にわたり村人たちに貢献してきた。彼女の努力を称えるための宴だ。
焚火の明かりの下で、ラクレジアは涙を浮かべて村人たちに感謝の言葉を述べた。村長は俺を引き寄せて言った。
「お前の関係が少し複雑なのは分かるが、ラクレジアを裏切るなよ!」
分かっている。
その夜、世話をするという名目で満足を得た後、俺たちは翌朝早く出発した。
三日後、俺がモディック市に足を踏み入れたとき、魔力が俺の体内に戻ってくるのを感じた。
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