オーダー7 大家の大屋
「えええええ、すごいじゃない、朋美ちゃん! もう資格取ったんだ!」
賑やかな声がお茶の間から聞こえて来た。誰かお客様なのだな。時也くんに荷物運びをさせるのは後にして、挨拶に向かおう。
「はあーい、こんにちは」
お茶の間には予想以上の人数がいた。時也くんと知らないイケメン。女子二人、幼児一人、中年女性一人。お茶の間が十二畳あって良かった。未だ少し余裕がある。幼児が寝そべってお絵描きできるくらいには。
「大家さん、どうしたんですか? 太腿が丸出しですよ」
すっとぼけたことを言う時也くんの声は、なんだか弱々しい。他の面々はポカンとした表情で無言で私を見上げる。
「お、大家さんなんですか?」
女子のうち年嵩の方(たぶん幼児の母親)が目を丸くしている。
「大家の
女子のうち若い方(たぶんまだ学生)に顔を向けると、ぺこりと会釈された。
「203号室の日振朋美です」
「ああ、ボロアパートの」
輪に入ろうと卓袱台の前に座り込む。大人っぽい方の女子がガン見してくる。よっぽど私の服装に驚いたものと見える。イタリア製のボディコンシャスなワンピースだ。三十年近く前に流行したようなタイプ。そのころ、彼女は産まれてすらいないだろう。
「大家さんって、お若いんですね」
おや、そっちか。
「もう若いとは言えないわねえ。今年、不惑になりますの」
「不惑……。伝統的な言葉のチョイスは大家さんっぽいかも」
そう言った年嵩女子に時也くんがそっと尋ねる。
「もしかして鳥子ちゃんも、大家さんのイメージってお婆さんだった?」
「うん。きれいな人でびっくりしてます」
「あら、きれいだなんてお世辞はいいですわよ」
そう言ってはみるが、本当のことだから、自分で否定したりはしない。ふと見ると、時也くんが肩を縮めている。先生にしかられている小学生みたいだ。
「すみません、大家さん。留守中に勝手に人を家に上げて」
「謝ることはないんですのよ。自宅と思って好きに使ってくれていいの。出かける時に、そう言ったでしょ。予定より早く帰って来たから、気を遣わせちゃったわね」
ふるふると首を横に振る時也くんは、やはり弱々しい。
「いえ、そんな。それより、旅行は中断したんですか? 船が沈没したんですか?」
「そんなタイタニックはありませんでしたわよ。旅行の目的を遂げたから、帰って来ただけ。世界中のドレスを買いそろえたわ。そうだ、時也くん。荷物を運んでくれる? たくさんあるのよ」
「それなら、俺が」
イケメンがさっと立ち上がる。続いて立とうとする時也くんを優しく手で制するところなど、仕草もイケている。
「あなたは力持ちそうだわね。お願いしますわ」
二人で玄関に向かうと、大きなスーツケース四つを見たイケメンがいぶかしげに眉を顰めた。
「これを一人で運んできたんですか」
「まさか。ポーターを頼みましたわ。あなた、時也くんのお友達? 面白いことを言うところ、似てるわね。お名前は?」
「小野虎狼と言います。時也とは幼馴染で」
「虎狼くんね、よろしく。荷物は納戸に運んで欲しいんだけど……、ボク、どうしたの?」
いつの間にか虎狼くんの陰に幼児が忍び寄っていた。
「僕もお手伝いします」
「まあ、嬉しい」
「島彦、重いものは危ないから」
「お手伝いします!」
幼児はきりっとした表情で右手を高く挙げた。やる気があって、たいへんよろしい。
「じゃあ島彦くんには、これを運んでもらおうかしら。大切なものだから大事にね。お茶の間までお願いね」
クロコダイルのハンドバッグを渡すと、幼児は両手でしっかり持ってそっと歩いていく。
「責任感の強いイイ男ね」
「はい。成長が楽しみです」
それ以上の無駄口もなく、虎狼くんは片手に一つずつスーツケースをひょいと下げて納戸まで廊下を歩いていく。勝手知ったる他人の家。ずいぶん居座っていると見える。
「虎狼くんは、いつからいるのかしら」
「先週から泊まらせてもらってます。無断で申し訳ないです」
「それはいいんですってば。きれいにお掃除してあるし、虎狼くんがしてくれたの? それとも島彦ちゃんのお母さんかしら」
「自分が」
ぼそりと短く言う姿は真摯で好感が持てる。
「ありがとう。時也くんは家事が苦手みたいだから、帰ったら、しっちゃかめっちゃかになってるかもって覚悟していたのだけれど。良かったわ」
「お役に立てたようで嬉しいです」
島彦ちゃんがとことこと迎えに来た。
「ねえ、荷物運び終わったよ」
「ありがとう。助かったわ、島彦ちゃん」
島彦ちゃんは口をいっぱいに引き上げてにっと笑った。
三人でお茶の間に入ると、座布団とお茶が準備されている。
「至れり尽くせりだわ。帰ってきてすぐに寛げるなんて。時也くんに家守を頼んでおいて本当に良かったわ」
時也くんが気まずそうに視線を泳がせる。
「じつは、俺一人だと、大家さんが帰って来た時に酷い状態だったと思います」
「なにかあったの?」
「俺、うつ病になって、ろくに動けなかったんです」
「あらまあ。それでなんだか、よろっとしているのね。病院には行っているの?」
「はい。なんとか」
「そう。落ち着くまで、ここにいたらいいわ。一人暮らしより安心じゃないかしら。それより今日はなんの集まり? 皆さん楽しそう」
楽しそうだった空気は、微妙な雰囲気に変わっている。不意に現れた大家には言いにくいことがあるのだろう。話題を少し変えてみよう。
「そうだわ。そちらのご婦人はどなた?」
虎狼くんが気まずそうに紹介する。
「俺の母です」
「突然お邪魔して、申しわけありません」
「ぜんぜん、ぜんぜん。いつでもいらして。賑やかなのは大歓迎ですわ。島彦ちゃんのお母さまはなんというお名前?」
「沖野鳥子です。私も居座ってしまって、すみません」
「もう、皆さん、遠慮しすぎですわ。そうだ、私も仲間に加えてくださいな。なんのお話をなさっていたのでしょう」
時也くんが弱々しいながらも笑顔を見せる。
「試食会の相談をしていたんです。カフェを始めようという話になっていて」
「まあ、素敵。どんなカフェ?」
朋美ちゃんが軽く眉根を寄せる。
「それが迷走していて。提供しようと思ってるメニューにまとまりがなくて。どうしようかと相談中なんです」
「人生は迷うためにあるようなものだわ。選択肢が多い方が楽しめますものね」
「でも、あんまりだと思うんですよね。こんな感じなんです」
そう言った朋美ちゃんが差しだしたのはA4サイズのパウチ加工されたメニュー表が二枚。一枚は「決定」、もう一枚は「要調整」と書いた付箋紙が張ってある。
「決定はサンドイッチ、白身魚のあんかけ、オムライス、カレー。あとはコーヒー数種類、紅茶いろいろ、ハーブティー。ふんふん。突然、あんかけだけ和食が入ってくるのね」
時也くんがそっと呟く。
「俺のリクエストで」
なぜか気恥ずかし気だ。
「要調整が、麻婆豆腐、トムヤムクン、小田巻蒸し、生ハムサラダ、おにぎり……なんだか取り留めがないんですのね」
「皆の希望が『美味しいものがあるお店』ということだけで。ヴィジョンとしては未来まで長く続けられるお店と思ってるんですけど。明確なコンセプトが決まってないから、世界観がぐちゃぐちゃで」
申しわけなさげに言う朋美ちゃんに笑顔を見せる。
「コンセプトなんて打ち破る尖ったセンスで行けばいいんじゃないかしら」
朋美ちゃんがさらに困った様子になる。
「私では、そのセンスを発揮できそうにないんです」
「あらあら。我こそはセンスの塊と自薦する方はいないの?」
お茶の間がしんとする。
「自薦ってなに?」
島彦ちゃんが手を挙げて聞くので、その手を指差してみせる。
「僕がやりますって手を挙げること」
「やります! なにをしたらいい?」
卓袱台を囲む皆の視線を受けて、島彦ちゃんは胸を張る。朋美ちゃんはその雄姿に掛けることにしたようだ。
「島彦くん、皆が好きな食べ物って、どんなものだと思う?」
「皆が好きなもの?」
「そう。皆が食べたいって思う食べ物ってあるかな」
寸分もおかず、島彦ちゃんが答える。
「僕ね、クジラみたいな食べ物がすごいと思うよ」
「クジラ? なんで?」
「大人の魚だから」
「クジラは大人なの?」
「そうだよ。大きいでしょ」
「じゃあ、子どもの魚もいるの?」
「金魚が子どもの魚」
朋美ちゃんは納得したようで頷く。
「なるほど。でもクジラ料理は難しいかな」
島彦ちゃんがシュンとしてしまった。子どもは表情豊かで楽しい生き物だ。もう一度、楽しい表情変化を見るため、尋ねてみよう。
「ねえ、島彦ちゃん。お野菜にも大人がいるのかしら」
途端に元気になった島彦ちゃんが笑顔を見せる。
「ダイコンが大人だよ」
「他には?」
「カボチャもハクサイも大人でしょ。ゴボウも大人」
「じゃあ、子どもは?」
「タマネギ。あと、ニンジン。カイワレダイコンは赤ちゃん」
「なるほど、深いですわね」
「もしかしたら」
時也くんがぼんやりと宙を見ながら発言する。
「赤ちゃんが一番未来っぽいのかもね。俺たちの中で、一番未来に近いのは島彦だ」
「僕は赤ちゃんじゃないよ」
「うん。例え話だよ」
虎狼くんのお母さんがぽつりと言う。
「確かに、そうかもしれないわ。私なんか先に見えているのは未来じゃなくて、老後だもの」
「あらま。そんな後ろ向きなことでは若者の夢を壊してしまいますわ。先を行く者は、いつも後から来る者の目指す輝きを持っていなくては」
「輝きですか」
「ええ。あんな大人になりたいって思われる対象なのですから、私たち。いつも背筋を伸ばしていましょ」
「そう、そうですね」
虎狼くんのお母さんは楽し気に笑う人だ。
「あなたのお名前を聞きそびれていましたわ。なんとおっしゃるの?」
「
「瞳さん、未来について、どんな展望をお持ち? 夢とか」
「そうですねえ。一人旅に行きたいです」
名前に負けず、きらきらした瞳で語る。
「子どもたちも独り立ちしましたし、もう好きなことをしてもいいかなって」
頷いていると、虎狼くんがポカンとしているのが目に入った。
「どうしたのかしら。お母さんに見捨てられてショック?」
「いや、まさか」
「もちろん、冗談よ。虎狼くんったら真面目。で、なにをそんなに驚いているの」
虎狼くんは話すかどうか迷って何度も口をぱくぱく動かした。
「母さんが一人旅って、それは大丈夫なのかと」
瞳さんが苦笑する。
「もしかして、私はお父さんがいないとなにも出来ないと思っていたりする?」
「いや、そんなことは……」
否定してみせるが、顔に全部出ている。
「もともと、お父さんと出会ったのは一人旅の途中だったのよ」
「あら、素敵な馴れ初め」
途端に瞳さんの頬が赤く染まった。
「やだ、恥ずかしいこと言っちゃったわ。話を戻しましょう。過去のことはおしまい。議題はカフェについてですもの」
「でもね、瞳さん。過去がなければ未来も存在しないのですわよ。カフェだってそう。皆の過去が形作るの。さあさ、馴れ初めを伺いましょうか」
瞳さんは深く俯いたまま首を振る。
「いえいえいえいえいえ。ろくな話じゃありませんから。皆さん、ほら、お話を続けて」
「俺もおばさんの話、気になります」
ぼんやりしていた時也くんが楽し気にしているのを見て、瞳さんはしぶしぶ話し出した。
「若いころは旅行会社に勤めてたの。企画担当だったから、仕事も兼ねて休日は旅行ばっかりで。新しい企画の相談に寄った観光局で働いていたお父さんと知り合って。一緒に仕事をしてるうちにね、まあ、その。そんな感じよ」
恥ずかしがって両手で顔を覆ってしまった。可愛らしい人だ。瞳さんは、三回、大きく息をすうはあして顔を上げた。
「今度こそ、おしまい! さあ、会議を続けましょう」
皆なんだかやる気が出たようだ。輝く思い出は力になる。たとえ、他人の話であっても。
「大家さん、お願いがあるんですけど」
時也くんがしっかりと姿勢を正す。
「カフェの店舗として、ホライズン荘の一階を借りることは出来ませんか」
「いいですわよ」
「いいんですか!?」
ちょっとあっさりしすぎたか。時也くんは喜びの前に驚愕の方が先に来ている。目が飛び出しそうだ。少し難渋してみせてから許可した方がドラマチックだっただろう。まあ、焦らして若者の貴重な時間を潰すのは悪いか。
「大家特権で入り浸らせてくれるなら、ね。内装も好きにいじっていいんですのよ。お風呂なんかも取っ払ってしまえば、キッチンも増設できるのじゃないかしら」
「大家さん、なんでそんなに乗り気なんですか」
時也くんがぼんやりながらも疑り深い目で見てくる。そんなに信用がないとは心外だ。
「暇だからですわよ。旅行ばかりしていても飽きてしまって。若者が働くところを見るのは楽しそうだわ」
島彦ちゃんが袖を引いて存在をアピールする。
「大家さん、僕も働くんだよ」
「そうなの、島彦ちゃんは偉いのね」
「うん!」
「島彦ちゃんはどのメニューを提案したのかしら」
「おにぎり! 虎狼くんのおにぎり、美味しいんだよ!」
にこっと笑いあって心を通わせてから、視線を移す。
「虎狼くんはシェフなの?」
「いえ、素人なんですが」
謙遜しているのだろうけれど、自信がそこはかとなく漏れ出ている。朋美ちゃんが謙遜の後を引き継いで言葉を足す。
「小野さんは料理上手だからキッチン担当で、私がフロア、時也くんが会計で始めようと思ってます」
島彦ちゃんが身を乗り出して朋美ちゃんに尋ねる。
「僕は? 僕はなにをしたらいい?」
朋美ちゃんが、ぐっと拳を握ってみせる。
「私と一緒に、お掃除をしよう」
「ぞうきん、出来るよ!」
元気に発言する島彦ちゃんは嬉しそうに、にこにこしている。
「島彦ちゃんは本当に偉いのね」
頭を撫でてあげると、身を捩って恥ずかしがった。シャイな幼児だ。朋美ちゃんが卓袱台に身を乗り出して尋ねる。
「あの、今日は台所を使わせていただけますか?」
今さらな質問に、噴き出した。
「良いに決まってるじゃないの。なにを作るの?」
朋美ちゃんがリーダーらしく胸を張って答える。
「虎狼くんのお母さんのレシピを教えてもらうんです。カフェのメニューにどうかという話になっていて。筍と鰆のちらし寿司です」
「まあ、素敵。日本に帰って来たっていう気がする料理名だわ。私も味見させていただけるかしら」
瞳さんが上品に口を開く。
「まあ、召し上がってくださるんですか? なんだか申し訳ないです」
「瞳さん。私、こう見えて大食漢なんですの。食べることが大好きです。ちらし寿司、期待してもよろしいかしら」
気が弱そうな雰囲気が瞬時に消えた。料理が好きで、腕に覚えがあるのだろう。
「ご満足いただけるものを作りますね。そろそろ始めましょうか、虎狼」
「ああ。じゃあ、大家さん。台所を占領します」
「ええ、頑張ってね」
親子は揃ってお茶の間を出て行く。身長はだいぶ違うのに、母子の背中は似た雰囲気を持っている。すっと伸びた背筋のせいかもしれない。
「鳥子ちゃんはカフェ店員じゃないのかしら」
「私は仕事を持ってますから。休日の助っ人くらいは出来るかもしれないけど」
「じゃあ、鳥子ちゃんも、いざというときのために、ウエイトレスの練習をしておかなくちゃね。私と一緒に、頑張りましょう」
島彦ちゃんが伸びあがって顔を覗き込んでくる。
「大家さんも働くの?」
「たまあに、お手伝い程度ならね」
とたんに島彦ちゃんの顔がぱっと明るくなった。
「わあ、僕たち、仕事仲間だね」
「そうね。私たち、もう仲よしね」
島彦ちゃんは真っ赤になって「えへへ」と笑った。頭を撫でてやる。
「島彦はあっという間に大家さんが大好きになったんだね」
「時也くん、しーっ!」
島彦ちゃんの顔がさらに赤くなる。
「なあに、島彦ちゃん。私との仲は秘密なの? 私たち、大人の関係ね」
島彦ちゃんは恥ずかしがって俯いたが、離れていこうとはしない。なかなか度胸が据わっている。本当に見どころがある男だ。
朋美ちゃんがノートと鉛筆を手に、にじり寄ってきた。
「大家さんはどんな料理が好きですか?」
考えるまでもなく、答えは一つだ。
「お酒に合うものなら、なんでも」
「お酒が好きなんですか」
「ええ。お酒なら日本酒でも洋酒でも中国酒でも」
朋美ちゃんがメモしている間に、時也くんがぼんやりと宙を見つめる。なにかを思い出しているのか、大きなため息を吐いた。
「すごいよ、大家さんは。焼酎を一升空けても、顔色さえ変わらないんだ。たまに付き合わされるけど、潰される」
朋美ちゃんが元気に手を挙げる。
「私もお酒好きなんです! カフェにも色々置きたいなって思ってて」
「あら、素敵。お酒を決める時には立ち会わせて。好きなお酒、入れて欲しいわ」
「ぜひ! 大家さんなら世界のお酒にも詳しいんじゃないでしょうか」
「ふふふ、任せて。今回の旅行でもたくさん買ってきたの。船便で届くから、着いたら見せてあげる」
「楽しみです!」
時也くんは卓袱台に俯せになって、ぐったりしてしまった。
「虎狼も鳥子ちゃんもお酒に強いから、四人で飲み会したらいいですよ」
「僕も一緒にしたい!」
手を挙げて申し立てる島彦ちゃんを時也くんが一蹴する。
「島彦はお酒飲めないよ」
「でも、したい!」
頑なな幼児は嫌いじゃない。
「じゃあ、島彦ちゃんにはノンアルコールカクテルを作ってあげるわ。そうだ、良かったら試食会でお酒も出すのはどう? よろしければ私、バーテンしますわよ」
鳥子ちゃんが嬉しそうに言う。
「大家さん、カクテル作れるんですか」
「なんでもござれ。鳥子ちゃんもお酒好きなのね?」
「うちの家訓は、『さけなくて、なんのおのれが桜かな』です」
「あら、素敵。桜が咲けないに、お酒を掛けているのね。風流だわ」
島彦ちゃんが不思議そうに見上げてくる。
「それ、なんの話?」
「昔の日本の言葉の話。島彦ちゃんが中学生になったら勉強すると思うわ」
「今、勉強したい」
「うーん、まだちょっと難しいかな。お酒の話より、お料理の話を先に覚えた方がいいかもしれないわ」
「わかった。僕、勉強する」
殊勝な心掛けだ。また頭を撫でてやる。
「ちらし寿司をどうやって作るか知ってるかしら?」
「知らない」
「じゃあ、台所を覗いてみましょうか」
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