【第14話】 炭鉱の鉱石 3
「
「わたしの血に引かれたの?」
ランプの灯りを受けるヴィーリアの瞳が、なぜだかうっとりと艶めいた。
「……わずか数滴でしたが、渡る理由には十分なほどに」
傷をつけた薬指を強く掴まれて、滲みでた血を吸われたことを思い出す。もったいないとも言っていた。
わたしの血の依代はヴィーリアをこちらの世界に引いた。
日頃からの、野菜でも、肉でも、魚でも、果物でも地産地消の新鮮採れたて栄養満点食生活のおかげだろうか。
大地の恵み万歳! 家庭菜園万歳! 美味しい食事を作ってくれるコック長万歳! 自分の血液ながらも優秀な働きをしてくれたことを、よくやったと褒めてあげたい。
地下室で召喚の儀式を行ったのが十日前の朔の夜のことだ。今は十日前とは状況が百八十度変わった。
では……もしも、もしも。
わたしの依代に、ヴィーリアが引かれていなかったとしたら……?
「……ヴィーリアが来てくれなかったら、違う『人の理の外の者』が召喚されていたの?」
風が窓枠を打ち付けて、がたがたと
「まず、その仮定に意味はないですが。……そうですね。違う者が
……わたしの血液が偉すぎる!
ヴィーリアを引ける血を持っていたことは本当に運がよかった。
だけど……考え方次第では、そもそも運がよかったらヴィーリアを召喚する事態にもならなかったともいえる。
……わたしは拾われた子だ。男爵夫妻に育てられたのは特大に運がよい。でも、なにかしらの事情があるにせよ、産みの親はわたしを男爵家の門前に置いていった。それは運が悪いというのだろうか?
……考えれば考えるほど解らなくなっていく謎かけのようなもの。
……ヴィーリアの言う通り、仮定に意味はない。
それは考えても仕方のないことだ。過去は変わらない。今、最善の選択をすればいい。
目の前にはヴィーリアがいる。もう、今はヴィーリアが召喚されなかったことなど考えられない。今さらほかの『人の理の外の者』などは考えられない。
すっかりヴィーリアが
これが魂に、魔法陣の紋章を刻印されたということなのかもしれない。
「ヴィーリアでよかったわ。……それで、わたしをどうするつもりなの?」
「……」
ヴィーリアは更に目を細めて、吟味するようにわたしを眺めた。頭からつま先まで品定めをされているようで大変に居心地が悪い。もぞもぞと身じろぎしているとヴィーリアが妖しく哂った。
「まだ時間はありますので……ゆっくりと考えておきましょう」
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