第13話

山麓での作戦会議の末、私達の作戦は盤石たるものとなった。


その作戦とは、銀狼が到着した瞬間に銀狼と私達3人でマルタの軍勢をはさみうちする作戦だ。


まあ…私達の力と数じゃ、力不足感はあるけれども、それは学長という百戦練磨の魔術師がいるから大丈夫だろう。




そして、私達はその作戦を決行すべく、山麓で銀狼の到着の合図である狼煙が上がるのを待った。




そんな中。




メアリーが突然、私の背後を見て、何か言う。




『なんで…?どうしてここに…?』




私もその背後を見た。




心臓が飛び出るかと思った。




だが、同時に安堵した。




いや、安心したのだ。


何故なら、私の後ろには私のお母さんがいたのだから。






私はお母さんを抱きしめた。


抱きしめて、抱きしめて、抱きしめてやった。


今までの不安も、苦しみも、新天地特有の興奮さえも…全てお母さんへの抱擁に込めてやった。




お母さんはそんな私に微笑んで、言った。


『よく頑張ったね』




私は前世を含めたら、相当な年だ。


恐らく、私の今の母親より年上だろう。




なのに。


私は情けない。


涙が溢れて、しょうがないのだから。




涙がぽろぽろ、と流れ出す。




そんな私の気持ちを察してくれたのか、私の涙が止まるまで学長は口を閉ざしてくれた。


そして、私達のハグが終わり、学長がお母さんに問う。




『エリー。お前…魔王の幹部に襲撃されたと聞いてたが…大丈夫だったか?』




『私は大丈夫でしたが、私の夫が…死にました』










…え?




お母さんは私の瞳を見て言った。


『ごめんね…シャーナ。私も何がなんだか分からないの』






私はそんなお母さんを抱きしめてやった。




すると、お母さんは嗚咽が止まらなくなっていた。


『ごめんね!ごめん!私が情けないばかりに…!シャーナに…!!こんな幼いシャーナに…!!こんな思いをさせるなんて!!』


お母さん。


私は幼くないんだ。




だからね。


お母さん。


私。


お母さんを…もっと幸せにするね。










『ごめんなさい!!!シャーナさん!!!』






メアリーはそう叫んだ。


メアリーは私の瞳をじっと見ていた。




気づかなかった。




メアリーの瞳を見て、やっと気づいた。


メアリーは何か嘘をついている。




とても大きな嘘を。


きっとそれを今から話すのだろう。






でも。


何を?




メアリーは言う。


『ごめん!!シャーナさん!!今まで言えなくて!!黙ってて!!』


『え…?何を?どうかした?メアリー。教えて』


私はとりあえず、聞いてみた。


『もう…死んでる』


『え?』


『きっと魔王に操られてる』


『誰が?』


『あの日、2人で雨宿りした日、情報屋の人が言ってた』


『だから何を?』


『貴女のお母さんはもう死んでる』


『え?』


『シャーナさん!!貴女のお母さんは…!もう死んでます!!二度と生き返らない!!』






え?


すると、お母さん?はニヤッと笑った。


胸が熱い。


気づいたら、私はそいつに心臓を刺されていた。

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