第12話

 私達は学長の力で、難なくその関所を超えることができた。


しかし、双子山はどちらも高さ1万メートルほどある世界最大級の山で、その旅路はそんなに短くはなかった。


というわけで、学長は私達と双子山の麓にて作戦会議を開いた。




学長は私達に何か作戦はあるのか?と聞いた。


その前に、私達は学長に聞きたいことがあると言った。




その質問は、何故学長は私達を助けに来たのか。


その行為は明らかな学園や国家への反逆であるのだから。




学長は私達に1から説明してくれるそうだ。




学長曰く、希望のエデンシティーという生贄の為の機構が黙認されてきた何よりの理由は宗教上の理由らしい。




―曰く、この双子山付近の地に住まう人々には原罪があり、その人達は生贄を捧げ続けることによって罪を償わないといけない。


その罪滅ぼしを邪魔する者は、エデンの名において軍事的な報復を受けることになる。


つまり…




ー何人たりとも、我々に関わるべからず。


もし破れば…手段は問わない。




これがエデンシティー側の主張だ。


馬鹿げている。


でも、エデンシティーは軍事力がある。


遠い昔に、私と私の元夫が国を治めていた時にエデンシティーを潰せなかったのはそれが理由だ。


エデンシティーの軍事力は一国の軍事力に相当する。




しかし、放置できない理由が生じた。


魔女が生贄にされるのだ。




魔女とは1000年に一度、滅びゆく世界を救うために産み出される英雄のことだ。




つまり、このままではいけない。


何故なら、魔女が死ねば、この世界は大魔王に抗うすべを無くすのだから。




では、大魔王とは何か?


それは1000年に一度、封印から解き放たれる魔族を統べる王のことだ。




また、大魔王の名前は最初からあるわけではない。


大魔王の名前は封印されている間は存在しない。


しかし、あるタイミングで大魔王は名前を得る。


大魔王にとっての新たなる大切な人が名前を与えるのだ。


これが封印解除のタイミングである。


それは必然であり、防ぐことができない。


ではどうするか。


大魔王の大切な人を殺し、名前を失った大魔王を魔女の力で封印するのだ。




この魔女が死ぬことを防ごうとしたのが学長だった。


彼は自らの私有している軍隊を動かして、希望のエデンシティーを攻め滅ぼすことを決めたのだ。




その軍隊の名前は銀狼。


学長が商売で儲けて手に入れた私財をふんだんに使った鋼の魔剣士の軍団だ。


学長は、こうなることを想定してこの軍隊を持ち、その軍事力を背景に国に軍隊保有を黙認させたのだ。




学長は、その軍隊をこの地に向かわせている。


あと1時間ほどで関所に到着し、そこでエデンシティーの衛兵との戦闘を開始するそうだ。








…そして。これから、エデンシティーとの全面戦争が始まるのだ。


私達は決意を燃やした。


燃やさなければならなかった。










しかし…




この時の私は知らなかった。


この革命の厳しさを。


そして…


メアリーの"あの言葉"の意味を。




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