第一章『希望のエデンシティー攻略』編

第7話

こうして、私は魔法使い養成学校に入ることになり、今、その入学式を受けているところだ。


この魔法使い養成学校の名前はエトワシア国立魔法学院で、名前の通り侵略国家エトワシアのお膝元にある魔法学校だ。





確かに、私はまだエトワシアのことを恨んでるのかもしれない。


実際、私のエトワシアに対する感情はグチャグチャだ。


私の祖国アルデシアを滅ぼした国がエトワシアだけど、同時に…


私の父親は、実は2年前にエトワシアの英雄になっているから。


そして、アルデシアは占領した国民をほとんど誰も殺さなかった。


だから、恨めない。


それに…もうアルデシアは地図に存在しないから。


私の淡い夢でしかないから。


だから…




恨んでもしょうがないのだ。





そんなことを考えていたら、学長先生が前に出てきたし、流石に憂鬱な考え事をやめて、真面目に聞くかな。って思い、私は襟を正した。




『まずは、この魔法学校に入学おめでとう。そしてだが、この学校は諸君らも知っての通り、民を守るための魔法使い養成学校だ。生半可な覚悟の者は立ち去るが良い』




…覚悟…か。


それはもう決めてるから。


だから、ここに来た。


ここにいる。




だから私達はここにいる!




『なるほど。立ち去る者がいない…か。なら、続けるとしよう。それでは、今日は何の日か…諸君らは知っていると思うが、少し考える時間をやろう。ヒントを言うとこの日にこの地の3人の重要人物がこの世を去っている』




…戦慄した。


そういや、今日は…前世の"私"が死んだ日だ。


そして、その1年前に私の元夫のヘルクが死んだ日でもある。




つまり、このクイズは私と私の元夫を題材としたクイズだ。


でも、不思議と、そんなに気分は悪くなかった。


何故なら、私達はアルデシアを守れなかったから。


エトワシアの新たな王が侵略の方針を変えて、殲滅作戦を取りやめ、自治を大幅に認めた同化政策に舵を切ってくれなかったら、国民はどうなっていただろうか?


もしかしたら、侵略によってみんな死んでしまったかもしれない。




全ては私達夫婦の責任だ。


だから、なんとでも言うが良い。




…そんなことを思っていたら、クイズの思考時間が終わりを告げた。


『さあ、終わりだ。その答えは…』


その"答え"は悪寒のするモノだった。




『旧アルデシアのアンナ元女王とヘルク元国王…そして、旧アルデシアの侵略を手助けし、突如アンナ元女王の遺体と共に遺体として発見されたマーガレット名誉貴族だ。そして、諸君にこの話をしたのは意味がある』






…え?


マーガレットが…死んだ?


私と…前世の私の父親を殺したマーガレットが……


あのマーガレットが……


死んだ??






…なんで知らなかったんだろう。


あれはかつての私の狂気が生んだ化物だ。




だから、残念だ。




…私がこの手で殺そうと思っていたのに。






ほとんど誰も殺さないでいてくれたアルデシアは許せても、祖国を売り、父親を殺し、復讐のために祖国の殲滅作戦をエトワシア政府に指示していたあの女だけは許せない。




絶対に、許せないから。


だからこそ。


殺せなくて残念だ。

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