第6話

私とエリュガードは電車に揺られ、首都メイデンを目指していた。


私はエリュガードと色んなことを話した。


気になることはたくさんあったから。




これからのことをたくさん話した。




例えば…


住む寮のことや、毎日食べる寮のご飯への期待だとか。


それと、先生はどんな人かな、だとか。


他の生徒と仲良くできるかな、とか。


友達できるかな、だとか。




それと…


魔法使い養成学校に入ったら2人離れ離れになるね…って。


だって、悲しいから。


魔法使い養成学校と剣士養成学校の生徒は、お互いに在学中話すことすら基本的に許されないことから。


修練の為らしいけど…


やはり、私は悲しかった。


せっかく、仲良くなれたのに。






…あれ?


私…おかしいな。


涙が出てきちゃって。


エリュガードの前ではもう泣かないって決めたのに。


私駄目だなあ。


駄目だよ。本当に…え?






エリュ…ガード…?


その刹那、私の心は彼の物になった。


何故かって?


それはね。


エリュガードの唇は私のほっぺたに口づけしてくれたから。




私は乙女にならざるを得なかった。




だから…ずるいよ。ずるいんだよ。


そんなんじゃ。


私…エリュガードのことが好きになっちゃうじゃん。




すると、エリュガードは優しく微笑んだ。


『これが俺の気持ちだ。これで…たとえ離れていても俺達の心は一つだ。だろ?シャーナ』


私は微笑んで、エリュガードの瞳を見た。


やはり、真っ直ぐだった。


そんな真っ直ぐな彼に私はほっぺたにキスし返してやった。


すると、エリュガードは嬉しそうだった。


そんな彼に私は言う。


『私もエリュガードのこと好き』


車輪の音が止まった。


どうやら、汽車が駅に着いたようだ。


私はやっぱり寂しそうな彼に言った。




『またね!エリュガード!今度会うときはお互いの高みで!』




こうして、私達はお互いのまだ小さな拳ををコツン、として誓いを交わし、お互いの進むと決めた道に向かうのだった。







私は…


あと数年はエリュガードも、お母さんにも、お父さんにも会えないだろう。


でも。


心はここにある。




みんなは。


ここにいる。








〜序章『旅立ち』編終了


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