第5話

朝、起きた。


顔を洗った。


朝食を食べた。


歯磨きをした。


でも。


言えない。


お母さんに本心を打ち明けるのが怖いんだ。




だって、お母さんは私のことを愛している。


私のことを愛しているから、あんなことを言ったんだ。




だから、言えない。


言えないんだ。






違う。




…そんなんじゃ駄目だ。


決めたはずだ。


昨夜、エリュガードとこのことを話した時に。


お母さんを説得することって、決めたはずだ。




なのに…恐れてどうする?




恐れちゃ駄目だ。


逃げても駄目だ。


立ち向かえ。


私の大切な人に。


私の愛しい人に。




お母さんへ。


私は初めて、貴女に立ち向かいます。




リビングにお母さんはいた。


なので、私はリビングに行き、お母さんに声をかける。


『あの!お母さん!』


『どうしたの?シャーナ。そんな真剣な顔をして』


『私を魔法使い養成学校に行かせて!』


『どうして?…それはどうして?』


『私!広い世界を見てみたい!それに!みんなの為に戦いたい!』




やはり、お母さんは依然として頑固なままだった。


『駄目よ。シャーナ。戦争というのはね。とても、怖いものなの。運良く私達の村は巻き込まれなかったけど、2年前のアルデシアが滅亡した戦争だって…』




『それでも。私は戦いたい』


『なんで?どうして?』


『この国の人の為に戦いたいからだよ。お母さん』


『どうして?貴女は生まれたばかりだから、この国の人達にそんなに執着はないはずよ』


『それは…』


私は言葉を詰まらせた。




『行かせてあげよう。エリー』


そんな時、お父さんが階段を降りて、私のもとに来てくれたのだ。


『ロビンソン。どうして?』


『シャーナの人生はこの娘の人生だ。なら好きにさせてやるべきだ。違うかい?』


『……………』


『それに。僕は嬉しかった。この娘が魔法使いになるって言ってくれて。僕は幼い頃から魔法使いに憧れていたからね。僕はなれなかったからね』


『それって貴方のエゴ?』


『それはエゴだよ。だけど、シャーナに自分の人生を胸を張って生きて欲しいってのは本当だ。…なあ。シャーナ。君には胸を張って生きて欲しい。父さんからの願いだ』




私は頷いた。


『ありがとう。お父さん』




すると、お母さんは遂に折れた。


『分かったよ。シャーナ。魔法使い養成学校に行くことをお母さんは許します』


『良いの!?お母さん!』


『うん。良いよ。元気でね。お母さんは貴女のことを心の底から愛してるからね。当分会えなくなるのは悲しいけど…それでもお母さんは貴女のことを想っているね』


『お父さんもシャーナのことを愛してるからね。お母さんと一緒だよ』




私はお父さんとお母さんを抱きしめた。


そして、叫んだ。


『お父さん!!お母さん!!だあいすき!!!』










こうして、私はエリュガードと一緒に、魔法使い養成学校や剣士養成学校のある首都メイデンに向かうことになったのでした。

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