第2話

−私が魔女の家の娘シャーナとして転生してから、5年が経った。




私はまだ幼子だ。


だけど、前世の経験もあって1年で普通に歩けるようになったし、魔法や剣術もかなり優秀で、もちろんこの世界の言葉は最初から全て分かっていた。


全て前世の賜物だ。


私は神童ではない。


それでも、周りは私のことを神童と呼ぶ。





本当は違うのに。




私は…大切な人も…守るべき祖国も……


何一つも守れなかった役立たずなのに。






そんなことを考えて、私は静かな草原の中、一人嗚咽した。


私はずっと自分を追い詰めていた。


私はそんな大切なことを大切で尊敬している母親や父親にすら、そのことを言えていなかったのだ。




ずっと私は一人で悩もうとしていた。


抱え込もうとしていた。






−彼の優しさを知るまでは。






その同い年の少年エリュガードは同じく神童と呼ばれる剣術に秀でた少年であった。


その少年とは、家が隣であったので、それなりの交流かあった。


そして、同時に彼は心優しい少年で、泣いてる私に物怖じせずに声をかけてくれた。


『泣いてるのか?』




私はその言葉を聞いて、すぐにエリュガードだと分かった。


すると、エリュガードは真剣な声で言ってくれた。


『そうか。神童と口うるさく言われて泣いているのか』


私は頷く。




私は彼の眼を見た。


彼は真剣な瞳をしていた。


彼の目は真っ直ぐだったのだ。


そんな彼は私に言ってくれた。


『安心しろ。お前は神童なんかじゃない。俺がいる限りお前は神童にはなれないんだ。だから、もう悩まないで欲しい。苦しまないで欲しい。そんなお前を俺は見たくない』




その言葉は私の涙腺を壊した。


私は目から涙がポロポロ、と出るのが分かった。




エリュガードはそれから私の小さい背中を、まだ小さな手でポンポンと叩いて言った。


『今日は泣いて欲しい』


そうやって私は今日、涙が枯れるまで泣くのでした。




(……………)


(夜になり、視点がエリュガードに移る)


俺は自室のベットに寝転がり、考え事をしていた。




俺は確かに神童かもしれない。


実際、俺は前世から剣術が優れていた。


それは今も変わらない。




ても、俺はクソ野郎だ。


俺は、前世で自分の大切な母親を守るために国を裏切った。


それが結果的に、アンナを裏切ることになった。




俺はアンナにも、2年前に滅んだかつての祖国にも、あわせる顔はない。


こんな俺をアンナは許さないだろう。


こんな王を民は許さないだろう。




だから、今度こそ。


俺は大切な人を守ってみせる。


それで君は笑ってくれるかな?


シャーナ。




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