第5話 エディオンの正体
エディさんに手を引かれながら、私達は魔王ヴェルカズに会うべく王宮内を歩いている。
私よりずっと背の高いエディさんと私だと、身長差がかなりあるんだよね。
今の金髪幼女の姿だと……体感的に、身体は100センチぐらいはあるのかな?
舌っ足らずな喋り方というのも加味すると、年齢は三歳か四歳ぐらい?
いやまあ、もしこの身体が人間じゃなかったとしたら、実年齢はもっと上だったりするのかもしれないけどさ。
「ねえねえ、エディしゃん。しちゅもんしても、いーれすか?」
「んー?」
エディさんは、脚が短くて歩くのが遅い私のペースに合わせながら、こちらに目線を向けてくれる。
「こりぇから会う魔王しゃまって、どーゆー人なんれしゅか?」
例えば、そう。
これから会いに行く魔王様だって、多分人間じゃないんだろうし!
なんて言ったって、魔界の王様なんだもんね。それが普通の人間だとは思えないもん。
だから私は、自分の身体の正体を知る為にも、この世界の人種について知っておきたいと思ったのだ。
「ヴェルカズか? んー、そうだなぁ……」
「魔王しゃまってことは、フチューの人とは違うんれすか?」
「……まあ、そうなるな。アイツは俺達とはまた違う、特別な生き物なんだよ」
特別な生き物、か……。
「……しょれじゃあ、エディしゃんも?」
「俺かぁ? 俺もヴェルカズ程じゃねぇが、古い一族の血を引いてるぜ。ほら、コレを見てみな?」
そう言うと、エディさんの頭上に二つの三角形が飛び出した。
「え、エディしゃん……それって……!」
ピョコンっ! と現れたそれは──耳である。
白くて先が尖った、モフモフの……
するとエディさんは、また悪役みたいな笑い方をして言う。
「へへっ。耳だけじゃないぜ? 後ろもよーく見てみな」
「うちろ……?」
言われるがままに、彼の背面に顔を向けてみる。
エディさんのお尻で、フワッと白い何かが揺れた。
こ、これはまさか……!
「ちっぽ! ちっぽがはえてりゅ〜!!」
「大当たりだ! 俺は人狼族と炎の悪魔のハーフってやつでなぁ。これでも魔界じゃ、炎の悪魔を統べる一族のトップだったりするんだぜ?」
「あ、あくまなんれしゅか!? エディしゃんは、あくまで、じんろーしゃん……?」
私は改めて、エディさんの全体像を確認する。
真っ白な髪の中からひょっこり現れた、髪と同じ色をした狼の耳。
楽しそうに揺れる白い尻尾と、確かに炎を連想させる赤い瞳。
人狼と炎の悪魔の血が一つになったら、こんなに力強くて綺麗な人が生まれるんだ……!
エディさんが悪魔だと聞いて、不思議と恐怖は覚えなかった。
だってこの人は、森で倒れていた私を見付けて拾ってくれて、ふかふかのベッドで寝かせてくれた。
とんでもなく美味しいフルーツパンケーキもご馳走してくれたし、私の歩幅に合わせて、手を繋いでゆっくりと歩いてくれる。
それに……私、分かっちゃったんだ。
「もちかちて……森で出会ったまっちろなワンコって、オオカミになったエディしゃんだったんれすか?」
だって私が森で大泣きしたあの後、誰かに抱っこされたじゃない?
あの時の腕の力強さと、温かさ……。さっきの部屋で私を抱き上げた時のエディさんと、全く同じ感じだったって思い出したんだもん!
「おいおい、ワンコは無いだろぉ? ……まあ、怖がられるよりはマシだけどよ。でも、よくアレが俺だって分かったなぁ」
「なんとなく、そんな気がしたらけれしゅ!」
「ほー。ルカは勘が良いんだなぁ」
関心した様子で、エディさんはその場で耳と尻尾を元に戻した。
どうやら人狼族のような人達は、自分で耳や尻尾を隠したり、狼の姿でも活動出来る能力があるんだそうだ。
それだけでも十分凄いと思うのに、悪魔としての力もあるんでしょう? おまけに偉い悪魔でもあるみたいだし。
そんなエディさんだからこそ、魔王様の相棒としてやってこれたんだろうなぁ。
……それに、私の予想はそこまで間違っていなかったみたいだしね。
魔界で暮らす人達の中には、エディさんのような人狼族や悪魔が居る。多分、他にも猫耳だったり鳥の姿をしている人も居るんだろう。
そんな人々が生活する場所で、平凡な人間の女の子がほっつき歩いているとは考え難い。
私ももしかしたら、エディさんみたいに何かの動物の姿になれたりするのかもしれないよね。
そういう力があるんだと分かれば、これからの生活に役立てられるはずだもん!
「……俺様、やっぱ良い拾い物をしたなぁ」
「エディしゃん、今何かいいまちた?」
「いいや、こっちの話だ。さあ、この階段を登ったらもうすぐだぜ」
「あーい!」
エディさん、独り言とか言うタイプなのかな?
……でもよく聞こえなかったし、まあいっか!
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