26:表ダンジョン攻略RTA!
「ふうん、これが【表】の妾ね……」
師匠はつまらなそうにそう呟くと、炎の曲刀を右手に顕現させた。師匠のエネミースキルが一つ【
対する表ダンジョンが10Fのボスモンスター【スケルトンキング】はエネミースキル【
「あ」
「あ」
――【コメント】――
『あああああああああああああああああああ!』
『初手【
『はいゲームセットwww』
『誰もが一度は通るゼロターン撃破きたああああああああああ!!!!』
『いやボーナス引くなし師匠www』
『わさわざ玉座ハメしないであげたのに自害すんなwwwwww』
――――
スケルトンキングは自分の頭部をおもむろに掴み上げて、師匠に向かって投擲した。師匠がそれをさっと避けると、しゃれこうべは地面に激突して木っ端みじんに消し飛んだ。
それと同時に、頭部を失ったスケルトンキングの骸骨ボディも光の粒子となって自壊していく。
スケルトンキングは頭部とボディを分断することで勝利することができる。つまり、【
師匠はただ、ため息をついた。
「こらー! お姉さまは自分と戦えることを何気に楽しみにしてたってのに、自滅なんかするなー! もう一回起き上がってこーい!」
そして、師匠の横で、すでに光となって魔石とモンスター素材だけを残した元スケルトンキングに文句を言っているのが、芒野こっこだった。
黒髪にピンクのアシメカラーと、パーカーを肩からずり落として着こなすスタイルが特徴的な、この表ダンジョンを唯一制覇した最強の少女。
――俺はというと、そんな二人の行く末を、自室のモニター越しに眺めている、いちリスナーだ。
師匠はこっこに連れられて、表ダンジョンを攻略することになった。
というのも、師匠を連れてダンジョン探索に赴くには、師匠もダンジョン・ダイブ用ヘッドセットが必要だったのだ。
ダンジョン・ダイブは本来、表ダンジョンからスタートするのが当たり前。
俺はなぜか最初から裏ダンジョンにダイブしていたわけだが、師匠も一緒に裏ダンジョンに潜るにはやはり、正規ルートから攻略していくしかないのだった。
「じゃあ、私がサポートしてあげる! お姉さまと一緒に表ダンジョンに潜らせて―! あと配信もさせてー!」
――そんなわけで、師匠が表ダンジョンを攻略していく光景を、こっこのチャンネルで配信しながら、俺をその行く末を見守るといった構図となったのである。
なんせ、俺は表ダンジョンに行けないからな……。画面越しに見守るしかないのだ。
配信のタイトルは【お姉さまの表ダンジョンRTA!~裏ダン10Fのボスがガチで表ダンジョン攻略してみた!~】である。
さすがはこっこ。
面白そうなタイトルセンスじゃねえか。
案の定、コメントは大盛り上がり。ミラクルチャットも止めどなく溢れた。
「まったく! けどまあ、
こっこの暢気な掛け声で、二人はさらなる下層へと潜っていった。
といっても、道中の雑魚モンスターでは話にならないほど、二人は強すぎた。
「お、こっこだ! すげー!」
「げ!? 一緒にいるのは、前に配信でやってた、カズキの師匠!?」
「生きたモンスター素材……!? てかダンジョン探索してるってことは、人なのか!?」
たまたま時を同じくしてダンジョンに潜っていた他の冒険者が、こっこや師匠とすれ違う度に、驚きの声を上げていた。
13Fでは、俺がかつて苦戦していたタイラントマンティスの二周りくらい小さく細い個体を軽く蹴散らし、さらにどんどん進んでいく。
17F。18F。19F。
そしてもうそこは、20Fのボス階層。
「お姉さま、ここのボスは二体同時にくるから、気をつけてね!」
昔、こっこの配信で見たことがある。
一匹は屈強な肉体で大斧を持った、頭部が牛の
もう一匹は、槍のように柄の長い棘付き棍棒を持った、これまたムキムキで頭が馬。
20Fは動き回るには狭く、障害物のないステージで、強制的に二体同時の討伐が余儀なくされる。
一見、冒険者に不利なように見えるが……。実は、そうでもない。
というか、牛頭も馬頭も図体が大きく、そして武器も巨大なものだから、狭い空間では思い切り武器を振り回せないのだった。
せっかくのパワーと武器のリーチも、これじゃ宝の持ち腐れ状態。
それでも二体同時に相手をするのは、複数戦を経験していないと立ち回り辛いかもしれないが、数回挑めば慣れるので、サクッと攻略できるとのこと。
俺も、裏ダンジョンて次に挑戦するのはここだ。
ちょっとでも参考にするべく、師匠の立ち回りに目を凝らす……。
──なお、縮地二回で、決着がついた。
うーん、参考にならねえ!
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