恋愛

一本線のいけないこと。/ Asahi₋Yuhi 様

 作品名:一本線のいけないこと。

 作者名:Asahi₋Yuhi

 URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330663414276203

 ジャンル:恋愛

 コメント記入年月日:2024年1月20日


 以下、コメント全文。


 はじめまして。

 この度は『批評&アドバイスします』企画にご参加いただき、ありがとうございました。主催者の島流しにされた男爵イモです。


 現時点で公開されている内容は、一通り拝読致しました。

 恋愛模様に重きを置いた作品ということで、登場人物たちの人間らしい矛盾した心理はもちろんのこと、複数人が絡み合った関係性は本作を特徴的なものにさせていたように思います。彼らが意中の相手と望む関係性を築くために、様々な策を弄して高度な心理戦に挑んでいたのは面白い部分でした。それゆえの葛藤や罪悪感なども深く描写されており、それは登場人物たちをよりリアリティ溢れるものへと昇華させていたのではないでしょうか。物語は始まったばかりの様相を呈していますが、ここまでに盛り込まれたギミックや絡み合った人間関係の描写には、ある種の生々しさがあったことかと思います。


 文章面に関してはデメリットを後述しますが、読みやすさでは群を抜いていた印象です。台詞主体の話運びと端的な場面説明、心理描写の掘り下げ。これらがちょうどよい塩梅に仕上がっていたので、易しい話運びが目を引きました。普段あまり読書をしない、小説を読むのがはじめて、という方でも取っ付きやすい文章だった印象です。まるでケータイ小説かのようなシンプルさは一長一短ではあれども、本作においてはプラスに働いていたと考えられます。まさにスキマ時間でも楽しめる手軽さは、本作の最大の強みだといえます。


 では、続いては気になった点をまとめていきます。

 全部で三つです。

 ➀描写のポイント

 ➁物語の進み方

 ③小説の基本ルール


 ➀、描写のポイント。

 前述した作品の特性上、意図的にそうされているのかもしれませんが、作中では情景描写がかなり簡素化されています。読みやすさが強みである反面、代わりに表現力を犠牲にしているといったところです。時間、場所、人の数。たいていの場面説明はこの三つに留まっているため、場の雰囲気が伝わりづらくなっています。先の内容では美点のみを挙げましたが、客観的にみると台本を読んでいるような乾いた話運びであるとも取れます。小説は、読者に想像させてこそ意味のある媒体です。ときには想像の余白として、あえて多くを語らないという手法もありますが、作者はまず想像するに足る材料を提示する必要があります。描写においては場面の視覚情報を書くだけでなく、そこから雰囲気も演出しなければなりません。


 たとえば教室であれば座席順や床に薄っすらと積もった埃、廊下を行き交う学生、窓から差し込む陽光、チョークや食べ物の匂い。そこから生まれる喧騒や笑い声など。それぞれの描写に応じて、場の雰囲気の演出を変えることもできます。ついでに登場人物たちの容姿も描写されてもよいでしょう。背格好の他に、制服の着こなしや固有の特徴など。本作は人物で魅せるという側面もあると思うので、なにかしら人物像を想像する材料が提示されれば読者は一層、作品に感情移入しやすくなるはずです。小説は物語の前提となる舞台や材料の説明を怠ると、片手落ちなものになってしまいます。台詞による進行と、それを補足する地の文。是非とも両者を上手く活用して、内容を補強していただければと思います。


 ➁、物語の進み方。

 こちらは趣向が凝らされている反面、やはり恋愛一辺倒の物語であることに違和感を覚えます。恋愛小説なので当たり前ではあるのですが、やり取りがそればかりに終始しているといいますか。伏線を除き、たいていの場面は「誰が誰を好きで、一緒にどこかに行く」というものになっています。まだおよそ四万字の話だとはいえ、単調さが表れ始めているのも事実です。恋愛模様や台詞のやり取りを楽しむ読者には些末事でしょうが、先の展開を期待する読者は現状を「停滞」と認識してしまうおそれがあります。


 そこで、物語に意外性を加えてみるのはいかがでしょうか。簡単な例ですと、トラブルメーカーの登場。登場人物たちの恋路を妨害したり、嘘を吹聴して関係が拗れるように仕向けたり。そうした読者のヘイトを集める人物。他には女性の乱入など。BLでそれは禁忌なのかもしれませんが、登場人物の誰かが異性に目を付けられることがあれば、良い意味で人物たちの関係性が複雑化するのではないでしょうか。もちろん、これらは一例にすぎません。あえて物語に意外性や障害を作り、話を膨らませるための手法です。これらの例に関係なく、他の手法を取っていただいても構いません。なにかしら物語に刺激が生まれれば、それは話をさらに魅力的なものにすることにつながるはずです。


 ③、小説の基本ルール。

 まずは、それに該当するものをいくつか挙げさせていただきます。

 ・「」の末尾を除き、感嘆符(!)や疑問符(?)のあとは一字空ける。

 ・「」の末尾に句点(。)はつけない。

 ・中黒(・・・)ではなく、三点リーダー(…)を偶数個で使う。


 プロを目指すわけでもない限りは、これらのことは無視していただいても構いませんが、作品の体裁が整うことは間違いありません。とりわけ紙の小説に慣れ親しんでいる人ほど、基本的な作法の守られていない小説を敬遠する傾向にあります。読者の裾野を広げることを希望されるのなら、取り入れて損はしない事柄です。参考までにどうぞ。


 最後に、気づいた範囲での誤字脱字などの報告になります。


 作品概要欄より:ちょっと除いてみてください。→覗いて。

 第4話より:流架くんはからはすぐ返事がきた。→流架くんからは。

 第8話より:翌日、学校着くと一番に朔くんにそう言われた。→学校に着くと。

      :「いいよ~。早く移してね~。」→写して。

      :頬膨らませていじけるように言った。→頬を膨らませて。

 第9話より:「ごめんね。教室で聞くべきじゃんかったよね。」→聞くべきじゃなかった。

 第14話より:海里もベットでちゃんと寝ていた。→ベッド。

 第15話より:そう言って鍵を開けて海里のことが部屋に向かう。→海里の部屋に?

 第16話より:俺にまで迷惑を葬るな。→迷惑をかけるなor俺まで迷惑を被りたくない。

 第17話より:相変わらず煙たがれているな。→煙たがられているな。

 第19話より:この一部始終を海里に見られていたとはとは俺は知らなかった。→「とは」の重複。

 第28話より:嫌な妄想もしてしまうけど、僕はそのから離れられない。→そこから?

 第30話より:朔くん質問にらいくんはそう答えた。→朔くんの質問に。


 以上になります。

 作者様の創作活動の一助となれば幸いです。

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