武器商人は忙しい!/ 大和タケル 様

 作品名:武器商人は忙しい!

 作者名:大和タケル

 URL: https://kakuyomu.jp/works/16817330668619289315

 ジャンル:現代ファンタジー

 コメント記入年月日:2024年1月8日


 以下、コメント全文。


 はじめまして。

 この度は『批評&アドバイスします』企画にご参加いただき、ありがとうございました。主催者の島流しにされた男爵イモです。


 現時点で公開されている内容は、一通り拝読致しました。

 作品としては既存の要素やネタがふんだんに盛り込まれており、ボリュームのあるものに仕上がっていた印象です。そのことによる問題は後述しますが、盛り込まれた要素のいずれかに興味を持った読者を引き込む力は強いといえます。文章は非常に簡素なものではありましたが、ラノベという観点でみれば許容範囲なのかもしれません。物語はシンプルで、たとえ一部を忘れていたとしても問題なく読み進められる。そうしたスキマ時間でも就寝前でも気軽に楽しめる読みやすさが、本作の売りだったのではないかと思います。


 その他、人物同士のシュールなやり取りも魅力的でした。全編に漂う、シリアスながらもギャグの多い進行や台詞。それらが物語を軟化させていました。この手のジャンルの作品は硬い作風が敬遠されることもあるので、それらが上手く作用していたように思います。同時に登場人物たちの性格に親近感が湧くことになり、読者は感情移入しやすくなっていたのではないでしょうか。作風から、大和様は中高生をターゲットにされているように見受けられたので、ギャグを主体とした物語は求心力につながっていたと考えられます。


 それでは、続いては気になって点をまとめていきます。

 以下に箇条書きにした順で解説していきます。

 ➀視点のブレ

 ➁描写力の低さ

 ➂足し算によるオリジナリティの問題点


 まずは➀、視点のブレについて。

 作中では主人公は一人称視点、他の人物は三人称視点といった風に視点の混在がみられます。そのために語り手の調子が安定せず、地の文を読んでいて違和感ばかりが強くなってしまいます。本作は群像劇の形がとられているので、すべての視点を三人称に固定するのが無難です。あるいは「三人称一元視点」を使ってもよいでしょう。この視点は、そのときにスポットの当たっている人物に限定して、一人称視点での心情を三人称視点の中に落とし込むことのできるものです。本作でたとえるなら異世界パートでは創真、現世パートでは真壁といった風に。そうすれば地の文でキーパーソンの心情を書きながら、三人称視点で客観的に状況を補足できるので一石二鳥です。


 次に➁、描写力の低さ。

 ラノベなので意図的にそうされているのかもしれませんが、描写はとにかく無味乾燥で地味なものになっています。周辺環境の説明と簡素な心情に終始しているので、小説というよりは日記の色が強くなっています。ラノベは文章表現よりも刹那的な面白さが求められますが、それは描写を蔑ろにしていい理由にはなりません。場面の雰囲気を作るためにも、描写は表層的なことの一歩先を目指すことに越したことはありません。建物ならば質感や造りはどうなっているのか、街中ならば道の傷み具合や風に乗る匂いはどんなものなのか、自然に関しては草花や土の状態など。長ったらしく書かなくとも、要点だけを押さえるだけで描写力は化けます。想像することが難しければ、多くの作品に触れて表現技法を学ぶのも手です。そうした細部が詰められれば、作品のクオリティはさらに上がることでしょう。


 ➂、足し算によるオリジナリティの問題点。

 こちらは、本作の最大の課題といえます。冒頭の話の続きですね。本作は設定や世界観の足し算によるオリジナリティの模索がされていますが、その足し算が過剰です。多くの要素を合わせることは容易である一方、まとめるにはかなりの技量が求められます。どんな業界でも言われることですが、一つのものに多くの要素を取り込むことは、時としてすべてにおいて中途半端であることにつながります。本作の場合はそうしたことが、「物語の中弛み」、「異世界と現世の接点の少なさ」、「設定を詰め込みすぎ」ということを招いています。


 第一に「物語の中弛み」は、創真の二度目の異世界転移から始まっています。現世に現れたゴブリンに有効な武器を持ち帰るために異世界で奮闘するわけですが、喫緊の課題である「現世に現れたゴブリンに対処する」ことは事実上あと回しになり、緊迫感が消え去っています。それどころか異世界での出会いや討伐に文字数が多く割かれて、物語の趣旨が怪しくなることに。このことには「異世界と現世で時間の流れが違う」と本文で説明されていますが、読者目線ではもどかしくもあります。本文およそ八万字の内容として考えると、どうしても冗漫な話運びに思えてしまいます。


 加えて「異世界と現世の接点の少なさ」が目立ちます。本作における異世界の役目はゴブリンに有効な武器を集める場所の提供ですが、それだけでは存在意義が弱いです。本文からは伏線のような匂わせがある一方、それは物語の本筋との関連は薄い状態にあります。なので読者目線では、無理に異世界要素を作品に入れている気がしてしまうのです。そうした指摘を躱すには、異世界の役目を必要不可欠なものにする必要があります。私が思いついた範囲で仮にさらなる役目を与えるのなら、「ゴブリンは、現世と異世界を行き来している」という設定を加えます。そうすればゴブリンの発生源を調査、報告、破壊するという選択肢が増えますし、現世とのつながりも生まれます。武器の仕入れと現地民との交流の他に、なにかしら異世界の特色が読者に伝わる形になると尚良い作品になるかと思います。


 そして「設定を詰め込みすぎ」ですね。こちらは主に創真が祖先の声を聞き取れるようになったこと、ゲームのような視覚、新選組をなぞらえた部隊など。どれも理由は本文で明かされていますが、どうにも設定が散らかっているように感じます。本当に必要なのか、作者が書きたかっただけではないか、と邪推してしまうものが多いです。すべて不要などという暴論を吐く気はありませんが、もう少し設定を厳選されてもいいと思います。足し算によるオリジナリティの醸成における短所は、設定の詰め込みすぎによる物語の破綻なので。


 これらのことから、本作は現状ではまとまりの悪いものになっています。改善方法としては前述したように足し算の材料に意味を持たせること、数を減らすことが挙げられます。私は大和様の創作上のコンセプトを否定したいわけではありませんが、何事も過ぎたるは猶及ばざるが如しです。ときには引き算も取り入れてみてください。


 最後に、小説の基本ルールと誤字脱字の報告になります。それぞれ箇条書きです。

 小説の基本ルールに関しては、順守するかどうかの判断は大和様に委ねます。

 ・中黒(・・・)ではなく、三点リーダー(…)を偶数個で使う。

 ・「」内の文章は原則、改行しない。

 ・数字は固有名詞を除いて漢数字を使う。年代は表記が特殊。例)1800年→一八〇〇年



 第2話より:~~お茶を喉に詰らせている隊長を見て笑い出した。→詰まらせて。

 第7話より:香織は両親の顔を見つめ、大きく深呼吸をしてから話し始めた。→行頭の下げ忘れ。

 第8話より:「~~不審者で話しを合わせないか?」→話を合わせないか?

      :香織ママの嵐の様な喋りの後に香織も去っいき、~~。→去っていき、

      :「・・・本当です。」→「」の末尾に句点は不要。

 第9話より:香織パパは冷や汗をかきながら話しを変えた。→話を変えた。

 第10話より:太鼓持ちの官房長官が話しを挟むが総理が制する。→口を挟む、が適切。

       :「今日は創真君に話しがあって伺ったのですが、~~」→話があって。

 第11話より:香織パパは一呼吸置くと話しを始めた。→話を始めた。

      :陸は謎という言葉に訝しむも、話しを続ける。→話を続ける。

 第17話より:~~トレイにお金を乗せて再びカウンターに出てきた。→載せて。

 第20話より:最初に香織パパが話しを切り出す。→話を切り出す。

 第22話より:「~~その情報が今朝の掲示板に張り出されてよ〜、」→貼り出されて。

 第23話より:そう言えば、深夜の素振りでをタケじいが言ってた言葉、~~!→「を」は不要。

       :アルミラージが危機せまる顔で横っ跳びをするが、~~。→鬼気せまる。

 第23話より:「玉子が先か鶏が先かの話しになってしまうが、~~」→卵、話。

 第25話より:話しもついた所で、オレ達はギルドの換金窓口へ顔を出した。→話。

      :~~銅貨50枚をトレイに乗せて渡してくれた。→載せて。

 第27話より:~~一瞬動きを止めて飛び掛かる体制を取る。→体勢。

      :仲間と話しをしながら食べる昼食は格別だった。→仲間と話を。

 第29話より:近藤が気を効かせて皆を座らせると、説明を始めた。→気を利かせて。

      :近藤が陸に話しを振った。→話を振った。

 第34話より:そして、又の間からは大量の血と共に緑色のゴブリンの幼体が顔を出した。→股の間からは。

      :山南がゴブリンを又から引き出して原田に渡す。→股から。

 第35話より:~~廣田本部長を見て話しを切り出した。→話を切り出した。

      :「はい、現在は薬で寝むっております。~~」→眠っております。

      :山南は少し考えてから話しを始めた。→話を始めた。

      :話しが終ると、2人はミンミンの病室へと向かった。→話が終わると、

 第38話より:ロイドの矢は振れる事なく、真っ直ぐに魔鳥の胸に突き刺ささった。→突き刺さった。


 以上になります。

 ここで述べたことが、作者様の創作活動の役に立ったのなら幸いです。

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