現代ファンタジー

そして無限の錬金術師 / おとも1895 様

 作品名:そして無限の錬金術師

 作者名:おとも1895

 URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330665672441821

 ジャンル:現代ファンタジー

 コメント記入年月日:2024年1月4日


 以下、コメント全文。


 はじめまして。

 この度は『批評&アドバイスします』企画にご参加いただき、ありがとうございました。主催者の島流しにされた男爵イモです。


 現時点で公開されている内容は一通り拝読致しました。

 交差世界という名の異世界への転移を描いた物語には、王道ならではの迫力があったように思います。同時に、その世界特有の異能を駆使したバトルは、独自性と意外性を兼ね備えたものになっていた印象です。主人公が持ち前の錬金術の特性を生かし、戦闘において形勢逆転を図っていたのは本作の醍醐味ではないでしょうか。また、それぞれの登場人物のもつ能力の抽象的な名前は、かえって読者の想像を掻き立てるものなっていました。特に『風神』は伏線も相まって、今後の可能性を感じさせていました。


 物語の内容に関しては粗削りではありますが、ラノベとして必要な要素はしっかりと押さえられていたように思います。登場人物の容姿や性格の描写をはじめ、台詞主体の話運びやカタルシスを誘う演出など。それらがちょうどよいタイミングで、最新話まで開示されていました。とりわけラノベは斜め読みや台詞だけを追う読書という、コスパを最重要視する読者を相手にする側面もあるので、本作はそうした読者のニーズに応える形になっていたかと思います。そのことによる弊害は後述しますが、「内容を分解しても、大まかな物語はわかる」というのは本作の強みといえるでしょう。


 では、続いては気になった点について。

 これらは箇条書きでまとめたあと、順に解説していきます。

 ➀描写と視点

 ➁物語の本筋はどこにあるのか

 ➂文字数に拘る必要性


 まずは➀、描写と視点について。先に描写に触れていきます。

 作中では情景描写が欠けています。最低限、場所や時刻は文中で記されていますが、場の雰囲気は完全に読者の想像力に依存しているのが現状です。たとえるならば、なにもない舞台の上で、ナレーション交じりの人形劇を見せられているイメージです。絵面としては非常に地味で、面白味に欠けます。これは前述したラノベの特性(作者様が、意図してのことかはわかりませんが)に、比重を置いたことによる弊害ですね。ラノベを好む読者は情景描写にはさほど拘りませんが、少しくらいは加筆されてもよいでしょう。学園の場面では広さや床のワックスのことの他、園内を行き交う人の様子や空気感をさらに足してもいいかもしれません。みこととの模擬戦闘回では、地形の描写を補足するなど。そうした細部にも描写が行き届くと、作品としてワンランクアップするはずです。


 次は視点の話になります。

 こちらは、自由気ままに書かれている印象です。作品形式が群像劇ということから「神の視点」が使われているとわかりますが、現状では「一人称と三人称を詰め込み、時制の乱れた視点」になっています。そのために視点が安定せず、違和感ばかりが膨らんでいくことに。前提として、視点の混在にはデメリットしかありません。仮に作者様が、視点の使い方でオリジナリティを出そうとされているとしても、それは初心者のうちは悪手です。読者には稚拙と捉えられかねません。加えて「神の視点」は上級者向けの視点です。この視点は作品のあらゆる情報を開示することができる一方で、使い方を誤れば文字ばかりが嵩張っていくことにつながります。本作は群像劇ということで、ただでさえ物語の進行は遅くなるので、そのことが裏目に出た場合どうなるか想像に難くありません。なので、代わりに「三人称一元視点」を使うことを提案させていただきます。これは三人称視点の中に一人称視点を落とし込んだ視点であり、初心者から上級者まであらゆる作家に重宝されています。いうなれば自由度が高く、それでいて扱いやすい視点です。運用方法はネットで公開されているので、もし興味をお持ちでしたら調べてみてください。


 ➁、物語の本筋はどこにあるのか。

 これは本作の目的ですね。最新話まで読んだ限り、現段階では天智見広がカギとなることが窺えます。しかしながら彼についての情報は少なく、物語では進の学園生活がメインに描かれているのが現状です。ここまでの作品の内容は修行パートとしてみることもできますが、停滞しているとも受け取ることができます。これでは先を読み進める意欲が削がれてしまいます。およそ四万字の内容に対して、明らかに物語が進んでいないというのが正直な感想です。そのことの要因には伏線の多さと、天智見広への言及を故意に避けていることが挙げられます。そのために物語の本筋が薄れてしまい、なにをする物語なのかがわからなくなってしまう。読み進めるうちに謎ばかりが増えて、次第に物語への関心すらなくなってしまう。掴みが壮大だっただけに、その反動は大きいです。


 このことを解決するには、すべてを伏線にしないことが重要です。物語を進めるうえで読者に知っておいてもらうべき事柄、その中に天智見広の情報を加えておくのが無難です。そうすれば物語の本筋は明確になりますし、読者はそれを追って作品を読み進めることができるようになります。伏線は多用しすぎると、物語を空虚なものに変えてしまいます。それを防ぐために、読者向けのガイドとして情報が必要なのです。既出のものだと、オリジンの世界観や文化、異能についてなど。それらと、物語に深みをもたせる伏線とを併用してみてください。


 そして➂、話の進め方について。

 ➁を補強したものになります。作品の概要欄に「50万字以上目標。」とあったので、そのことに軽く触れておきます。私は小説執筆歴二年の初心者ではありますが、経験上、数に拘るのはオススメできません。そればかりが目標になり、物語の本質がおろそかになってしまうからです。文字数は、時間と根気があれば誰でも増やせます。しかし、その結果に完成度は必ずしも結び付きません。よくあるのは、物語を延々と引き伸ばした大長編作品です。そうしたものを作っても、執筆スキルは上がりません。重要なのは、いかに必要最低限の文字数に物語を落とし込めるかです。特に初心者のうちは多く書くのではなく、適切な分量に物語をまとめる技術を磨くべきだといえます。それがのちに情報や設定の取捨選択、物語のペース配分といった小説を形作るものを調整するときに役立つので。作者様がこれからも執筆を続けられるのなら、このことは頭の片隅にでも置いておいていただければ幸いです。


 最後に、気づいた範囲で誤字や約物ルールなどの指摘を。

 一つ目、三点リーダー(…)は偶数個で使用。

 約物ルールはプロを目指すわけでもない限りは遵守する必要はありませんが、取り入れると作品の体裁が整います。参考までに。以下、目を通した範囲での指摘。


 プロローグより

 ・進は話かけてきたクラスメートとの対話プラス弁当を楽しんでいた。→話しかけて。

 ・「サボり魔ってなんだよ、ネタ晴らししてやろうか?。~~」→ネタばらし、疑問符と句点の混在。

 ・「~~家の用事は入ってなかったとは思うんだけどな…。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・「…あぁ。そうだな。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・何故かははからない。→わからない。

 ・おそらく、はっきりとした他殺だったが…。→表現の矛盾(おそらく、はっきり)。

 他殺の線が濃厚ではあった。or自殺や事故でないことはたしか。あたりが無難。

 ・誰という質問に対してはこう答えていれば分かるか?。→疑問符と句点の混在。

 ・全回行ったことを踏まえて私はまだあなたを許しているわけじゃない。→前回。


 第1話より

 ・「~~いつもの顔じゃない。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・「~~つか、俺、いつ電話に出た?。」→疑問符と句点の混在。

 ・「~~でも、彼はここさえも通らなかったらしい。」→「」末尾に句点は不要。


 第2話より

 ・「~~…で、早速で悪いんだけどあなたをここに呼んだ本題に入っていいかな?。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・「~~君、数千年後の別世界に行くことになってるの。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・「~~やっぱり、《ウエポン》ありとなしじゃ、歴史の方向性が異なってくるしね。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・当たり前だろう?。→疑問符と句点の混在。

 ・「~~すごいでしょ。」→「」の末尾に句点は不要。


 第3話より

 ・若干、躊躇しながら体温計に手を…どこだ?。→疑問符と句点の混在。

 ・「~~彼らの心理描写をもとにすれば、案外楽なんじゃねぇの?。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・どちらのほうがましだったか?。→疑問符と句点の混在。

 ・一夕一朝ではいかないのが《錬金術師》なのだろう。→一朝一夕。


 第4話より

 ・お前はいったい、いつも時代の人間じゃ!。→いつの、感嘆符と句点の混在。

 ・叫びまわってもいいかな?。→疑問符と句点の混在。

 ・顔は、マスクと防止によって隠されていてよく見えない。→帽子。

 ・「あんたの攻撃を散々食らわせられて分かったけど、~~」→食らわされて。

 ・「~~いや、今話それよりも…」→今はそれよりも。

 ・そんな彼の言葉を、目の前にいる人間は「ハッ。」と吐き捨てた。→「」の末尾に句点は不要。


 第5話より

 ・どうして情報がこんな近くなのに出回っていない?。→疑問符と句点の混在。

 ・見事の大破されている。→見事に大破している。

 ・「~~ただこの場の勝者ウィナーは俺だって話だよ。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・どうして敵は、横方向に(物理的に)ぶっ飛んでいった?。→疑問符と句点の混在。

 ・しかし、すぐにその獣のような目をほころばせると、→「ほころばせる」は、主に口や顔に対して使います。目は不自然。

 ・大丈夫、生きてますか?。→疑問符と句点の混在。


 第6話より

 ・他人に合わせて歩いてはいないか?。→疑問符と句点の混在。

 ・一人で進んでいき、もがき苦しんでいる人間はいないか?。→疑問符と句点の混在。

 ・数日前に気に行って、編入を誘った進が今日、編入してくるからだ。→気に入って。

 ・「~~そろそろ、ってか本当に眠いから。」→「」の末尾に句点は不要。


 第7話より

 ・(陰キャ席だって? 知らないねんそんなこと。~~)→知らないね、そんなこと。

 ・その双方の眼球にやっと笑いの波が引いてきたみことが映る。→かっこいい言い回しにしたい場合は、「双方の眼球」を「双眸」と言い換えるのがオススメ。

 ・同時に何か彼の風格の何かに気圧されて、うっすらと旋律に近い感情を知る。→「何か」の重複。

 ・「~~それは数学的に行くと、どこまでも続く無数の点の集まりだが?。~~」→疑問符と句点の混在。

 ・「~~あの問題はいつ出てくるんだ? ってなるやつ。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・「~~No3を殺し損ねた、なんて言わないでしょうね。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・「~~私に力を示してみろ。」→「」の末尾に句点は不要。


 第8話より

 ・「~~地上に出てこないと、とか。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・メチャクチャ決め顔いていたお互いが面白くて。→決め顔をしていた?

 ・「よくわからんが、海中で戦うとかいう無茶ぶりじゃなければ、だいたい大丈夫なんじゃね?。~~」→疑問符と句点の混在。

 ・「っと、こうか?。~~」→疑問符と句点の混在。

 ・流起友野と天智未来は、ふとランク戦、いやフリーマッチ見る目を右に動かした。→フリーマッチを見る目を

 ・「~~いつもは、そんなんじゃないだろ。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・「~~あいつは。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・「~~絶対に、誰にも。」→「」の末尾に句点は不要。

 ・「…どうして、お前は、いや、何でもない。」→「」の末尾に句点は不要。


 以上になります。

 ここで述べたことが、作者様の創作活動の役に立ったのならなによりです。

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