ミステリー

獄中マンガ家 / ALT(altar twin)様

 作品名:獄中マンガ家

 作者名:ALT(altar twin)

 URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330652997885435

 ジャンル:ミステリー

 コメント記入年月日:2023年12月4日


 以下、コメント全文。


 初めまして。

 この度は『熟読&批評します』企画にご参加いただき、ありがとうございました。

 主催者の島流しにされた男爵イモです。作品の方は、現時点で公開されているぶんは一通り拝読致しました。


 まだ文字数が少なく物語の先行きが不透明ではありますが、作者様が伝えたいことは理解のできる序盤でした。文章も読みやすく、読書が苦手な人でも取っ付きやすい作品かと思います。内容に関しては、個性を模索しているようにみえます。他とは違うなにかを書こうとしているような。そのことによる弊害は後述しますが、これは本作の評価できる部分です。明かされない情報や伏線を駆使した物語は、度を越えない限りは読者をつなぎ止める力になるので、是非ともこの作風を維持してもらえればと思います。


 また、物語においては主人公以外の登場人物にも、特徴的な面々が揃っていたのは興味深かったです。個性的な看守たちや、なにかしら闇を抱える受刑者たちなど。意味深な発言や謎が多分に含まれていたので、おそらくは今後の鍵となるのでしょう。そうしたものが物語の中で、どのように料理されるのか。興味の尽きない部分かと思います。行方知れずの看守長と、二面性を匂わせるハイド。特にこの二人は、アンテリナムに次いで作中では異彩を放っていました。


 では、続いては気になった点について。こちらは大まかに分けて二つ。

 一つは先に触れた、個性を前面に出そうとすることの弊害の話です。これは物語を不必要に複雑化させている側面があります。というのも、作中では様々な事柄が描写されます。要太の秘密にはじまり、蝶の存在や漫画を描くこと、不思議な監獄、暴動の兆しなど。これらが考察の材料、伏線として機能するのであろうことが窺える反面、要素が散らばりすぎという印象を受けます。すべてが最終的につながるとしても、詰め込みすぎ感は否定できません。


 そのことによって、物語の主軸が読者に伝わりづらくなってしまいます。結局、作者はなにを書きたいのか。要太はなにをしたいのか。監獄で漫画を描いて過ごすor自身の秘密を知りたいのか。これらの事柄をまとめ、序盤のうちに方向性を定めることが肝要です。本作のスケールはわかりませんが、中編ないしは長編を想定しているのならば、冒頭およそ二万字の中で作品の方向性を定めることを意識してみてください。この部分がおろそかになると、物語は徐々に間延びしていくことになるので。そうして主軸を確立したうえで伏線を作品に盛り込んだ方が、読者は物語への理解を深めやすくなります。「文中のほとんどの出来事が伏線」と言えば聞こえはいいですが、裏を返せば自己満足の色が強いとも捉えられかねません。


 もう一つは、小説を書くうえでのルールについて。小説には書くうえでのルールがいくつか存在します。趣味で書く分には自由ですが、商業作品においては、このルールを破ることは禁忌となっています。また公募では基本ルールが守られていない作品は、内容以前の問題として選考から弾かれることもしばしば。作者様のプロフィールを拝見したところ、公募も視野に入れられているということなので、この点は早めに押さえておくことをお勧めします。以下に箇条書きで、現時点で守られていないルールを羅列します。


 ・段落のはじめは一字下げる。→編集画面の「段落先頭を字下げ」を押すことで対応可能。

 ・「」内の文章は原則、改行をせずに続ける。

 ・途中で文章を切るときは、必ず句点(。)を挟む。

 ・文中で補足する意味で使う場合、長音符(ー)ではなく、ダッシュ(—)を使う。

 ・「」内文末を除き、感嘆符(!)や疑問符(?)のあとは全角で一マス空ける。


 最後に、気づいた範囲で誤植の報告を。

 第3話より

 ・面倒臭くなるって……業務上、看守が言っていいこと何ですか?→なんですか

 ・そういえばアンテリナム看守、何で坊の中で俺たちと話しているんですか?→房

 ・これからしばらく坊内待機のお時間だから、かなかなに色々教えてあげてほしいにゃ→房

 ・坊内に響くのは微かな振り子時計の音と、→房内


 第4話より

 ・ハイドくんの指差す方向を見ると、俺たちの坊から少し離れたところでアンテリナム看守が立っていた。→房


 第5話より

 ・どんな人何だろう……→なんだろう

 ・アンテリナム看守は次々と坊の鍵を開けては囚人達を並ばせ始めた。→房

 ・俺がそう思ったと同時に俺達の坊の鍵が開いた。→房


 第6話より

 ・と、アンテリナム看守に頼んでみたら、坊から出た後に大浴場に連れてきてくれた。→房

 ・ぼくらが坊を出てから今まで……気付いてなかったんですか?→房

 ・…………こっ、断りずらっ。→断りづらっ

 ・自分より弱い者の無様な抵抗が、相手には滑稽に写っているようだ。→映っている


 第8話より

 ・坊に帰ってきたらこれがベットの上に置いてあったのだ。→ベッド、房


 第9話より

 ・というかまた、坊の中に来ているんだけど。→房


 第10話より

 ・僕たちから見て向かい側の坊に入っている人で→房

 ・にいちゃん車でこいつずっとひとりぼっちだったからよ。→来るまで

 ・おいおい、お前ヤクザはヤクザはヤクザでも下っ端だろ?→ヤクザは、の重複。

 ・その安息を壊すそうに…………銃声が響き渡ったのは。→壊すように


 以上になります。

 もし批評に関してご不明な点や不備があれば、私の近況ノート『11/3開催 自主企画専用ページ』にて対応致します。ご要望に応じて批評内容の具体化にも努めますので、ご希望であれば気軽にお申し付けください。この批評が、作者様の創作活動の一助となれば幸いです。

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