ボクは童貞という存在を知らない / 金沢出流 様

 作品名:ボクは童貞という存在を知らない

 作者名:金沢出流

 URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330662634092517

 ジャンル:現代ドラマ

 コメント記入年月日:2023年10月17日


 以下、コメント全文。


 初めまして。

 この度は『自作品への意見や提案がほしい方へ』企画にご参加いただき、ありがとうございました。主催者の島流しにされた男爵イモです。


 作品の方を拝読致しました。

 綺麗にまとまっていた短編だと思います。社会的信用を隠れ蓑にしたグルーミングというテーマを扱っていた一方で、話の流れや落としどころは淡泊で、それゆえにかえって考察が捗る作品になっていた印象です。文章も読みやすく、純文学に抵抗を持つ人でも比較的馴染みやすいものに仕上がっていました。内容も文章もある程度のレベルには達しているので、あとは作風が好みか否かの問題になるでしょう。


 その前提を設けたうえで、一つだけ気になった点を挙げます。

 個人的に、本作は事実を無理に脚色しようとしているイメージが強かったです。不用意に話を展開したり、心理描写に無理に意味を持たせようとしたり。そのために、この系統の作品の悪い部分が目立っていました。純文学、私小説によくみられる「だからどうした」という読後感です。それに加えて、構成がマイナスに作用しています。本作は「童貞」の使い方が肝だと思います。これをグルーミングや暗喩につなげるのなら、作中でこの単語を連発するのは悪手です。結末に向かう途中で、提示された情報からオチがわかってしまいます。そのために暗喩の面白さが半減します。


 いっそのこと、作中ではひたすらに仄めかす程度に抑えた方が良いと思います。読者には、タイトルと提示された情報のみで事象を察してもらう。私小説で純文学の趣を出す場合は、語りすぎてはいけません。本作は事象を詳らかに語りながら、暗喩を使っている状態です。読み込めば読み込むほど、この違和感は大きくなっていきます。本作に愛着や作者様の創作意欲の源があるのなら尚のこと、それを表現する方法をさらにブラッシュアップすることを視野に入れていただければと思います。


 以上になります。

 少しでも創作活動のお役に立てたのなら幸いです。

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