第48話「憎力の膨張!暴走する一抹の醜欲」
上級憎愚。悲哀を大我と協力の元退けることに成功した達樹達。大我が甚大なダメージを負い完全顕現は不可能となってしまったが圭太の元へ急ぐ。一方で光也と隼人は野々原圭太と交戦中であった。
「おらぁぁぁっ!!」
圭太の身体は時間経過により憎力に完全に蝕まれその姿は完全に異形と化してしまっている。その外観は言うなれば蟷螂の化け物。
鋭利且つ強度の増した鎌状の腕が光也達は襲いかかる。
戦闘が開始してから光也達は防戦一方。十分に責め切れずにいた。
「ちっ……話にゃ聞いてたがここまでやりにくいもんとはな……!」
「奴は内在型……まずは外殻をなんとかしないと」
――――――――――
両者最愛恋からの教えを思い出す。
「内在型って憎愚が中にはいてね。そいつはまーめんどくさくて。人間の身体の周りを憎力が鎧となって囲ってる状態なの。だからただ倒せば良いわけじゃない」
「まず大前提としてその外殻である憎力。憎愚部分をひっぺがしてから処理しないといけない。じゃなきゃ元の人間もろとも死んじゃうからね。それだけ頭に入れとくよーに」
――――――――――
「つまり憎愚を分離させるまでは致命傷に至るほどの踏み込んだ攻撃は出来ない……だがやわな攻撃じゃ外殻を剥がす事は出来ない」
「……悪いが手先は器用じゃねぇぞ」
「だとしても……」
「やれってんだろ!クソがっ!!」
光也は葬刀へ雷の想力を集中。迅雷の如く圭太へ距離を詰め
「
二刀の刃は圭太の憎力で形成された肉を抉り取る。
微かに見えた人間部分は片腕を突っ込むには十分な範囲。光也は引き摺り出すため片手を突っ込む。
(っ……思ったより重い……っ!!)
「た、助け……!」
「!!」
「……余計な事をするなぁ!!」
圭太に振り払われ光也は距離を取り、隼人の元へ退避する。
憎力により形成された鎧から自力で引き摺り出すには想像を絶する程の腕力が必要であった。
「かなり惜しかったよな。何で無理だった」
「想像以上に重かった。どっかの脳筋バカなら引っ張り出せたかもしれねぇけどな」
輝世達樹はつい先日まで肉弾戦主体の戦闘を行っていた。筋トレなども三人より積極的に行っており故に腕力を始めとした物理攻撃関連のスペックは三人中最も高い。
「……つくづく相性ってのが悪いらしいな」
「それでもやるんだろ」
「わかってんじゃん」
光也と隼人はそれぞれよ刃を研ぎ澄まし再度圭太へ立ち向かう。
極限までに集中された攻撃は丁寧に的確に憎愚の鎧を削り斬って行く。
このまま押し切ると意気込んだその矢先、圭太に異変が起こる。
「り……莉乃ちゃ……気配……!」
莉乃達を乗せた車が徐々に近づいて来ている事を感じ取った圭太。それを機に憎力が一気に増長し光也と隼人を吹き飛ばす。
「ちっ……もうちょっとだったのによ!」
「!……待て!……何か様子が変だ!」
「あ……あがががぁぁぁ!!」
みるみると圭太の両腕の憎力が膨れ上がっていく。それはやぎて生物の姿を形成し切り離され新たな憎愚が産まれ落ちる。
一体は赤と黒の斑点を全身に彩るテントウムシを想起させる見た目をしており、もう一体は黒く長い触覚を携えたカミキリムシ型の憎愚。
憎力を膨大に注いだ圭太は一時的に人間の姿へと戻る。
「行ってください主人様。あやつらは私達が足止めを」
圭太は無言でこの場を憎愚達へ任せて空高く飛翔する。
「待て!!」
飛び立つ圭太を追いかけようとする光也と隼人だが案の定二体の憎愚に阻まれる。
「行かせませんゾ。お二人共恐縮ですがここでぶちのめさせていただきマス」
「オ覚悟を」
「こいつらはやっちまっていいんだよな?」
「問題ない」
――――――――――
同日 原宿ラフォーゼ 関係者出入口 9:10分
「おはようございます!本日はよろしくお願いします!」
マネージャーを含む桂木莉乃ら4名が現着。各スタッフ達に挨拶を済ませてライブに向けての下準備を始める。
リハーサルや音響チェックも完了しゲネプロに向けて休憩に入る。
「練習の甲斐もあって歌もダンスも完璧ですねっ!」
「うん!後は本番で出し切るだけ!」
数時間後に控えたライブに想いを寄せて莉乃達三人は仲良く控え室へ向かう。
その最中突如莉乃達の目の前に交差する廊下から現れたのは人の形をした野々原圭太。
想いを寄せる人間に向ける物とは思えない虚な目を莉乃へ向け莉乃達を通さんとばかりに立ち尽くす。
「け、圭太君!?」
「まだ一般開場時間にはなっていませんよ。それにここは関係者以外立ち入り禁止区域です」
見るからに様子がおかしい圭太から庇うように咲弓ら莉乃と園華の前に出て冷静に対応する。
「関係者以外……?またお前達は自分たちが特別だと!!俺は決して交わることのない存在だと!!俺を蔑ろにするのか!!?」
圭太は身に宿る憎力を解放。両腕、両足がどす黒く変化する。周囲には禍々しいオーラが出現し目にも止まらぬ速さで咲弓と園華の胸ぐらを掴み壁へ投げつけ気絶させる。
「園華!咲弓っ!!だ、誰か!!」
「無駄な事はしないほうがいい。今の俺の姿は莉乃ちゃん達以外には見えてない。まぁ仮に誰か来ようが容赦なくぶちのめすけどな」
「なんでこんな事するの!?昔の優しかった圭太君に戻って!」
「違うんだよ莉乃ちゃん。俺は優しくなんかない。優しいフリをして莉乃ちゃんに好かれようとしてただけの偽善者で薄汚いクソッタレな人間なんだよ。今や愛しかった君に何を言われても憎悪しか湧いて来ないんだ……」
常軌を逸した発言。行動。外観。莉乃は本能的に自分が置かれている状況を理解した。
このままでは命が危ない。だがそれは自分だけに限った話ではない。自分に関わる関係者、仲間、友達。全てが危険に晒されていると理解した莉乃は恐怖心を必死に拭い倒れる咲弓達の元へ駆け寄る。
「近づかないでっ!!」
「この状況で逃げずに身を挺してでも仲間を守ろうとする……上っ面だけの信頼関係じゃないようだな。あぁ……やっぱり素敵だな莉乃ちゃんは……でもそんな莉乃ちゃんは俺の事なんてただのモブの内の一人でただの集金対象でしかないんだよなどうせ」
「そんな事ない!いつも全力で楽しんでくれてる圭太君を見て私も頑張らなきゃって思ってたんだよ?」
「黙れ黙れ!!女は呼吸をするかのように嘘を平然と振り撒く。それ以上綺麗事を吐くのはやめろ!!俺の心を弄ぶなあああぁぁぁぁ!!」
圭太は憎力を解放し再び鎧が形成。見た目は再び蟷螂型の憎愚となる。
「ごめん莉乃ちゃん……もうわからないんだ自分の事も君の事も……頭の中がこんがらがってもう……どうしていいかわからないんだよおおおぉぉぉぉ!!!」
圭太は心を痛めながらも強靭な鎌を振るい莉乃へ襲いかかる。
必死に咲弓たちを守ろうと決して背は向けない莉乃だが同時に初めて見る異形の化け物が殺意を持って向かってくる恐怖で全身を支配され動けないでもいた。
目の前に迫る化け物に恐怖し涙がこぼれ落ちる莉乃。殺意が込められた鎌が莉乃を捉えようとした直前。目の前に現れたのは見覚えのあるサイドテールを携えた男。振るわれた鎌は男の頑強な拳に打ち砕かれ顔面を殴り飛ばされる。
「達樹……?だよね……?」
「細かい事は後だ。今はあいつの目をとっとと覚めさせる」
「絶体絶命のピンチに駆けつけるヒーローってとこか。ドラマチックだなぁ……ときめいちゃうよなぁ気に食わないなぁ。お前らの全部無茶苦茶にしないとやってられないなぁ!!」
両者共に拳が再び混じり合い、戦いの火蓋が切って落とされる。
―――― to be continued ――――
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