第47話「圧倒的格上!達樹vs悲哀」
突如達樹の前に現れた上級憎愚である悲哀は抜き打ちテストと称し達樹へ襲いかかる。
悲哀は自らが両手に持つ二丁拳銃。『
猛スピードで敵の肉体を射抜く事だけに特化し、破壊力のみに特化した『
(くっ……!!捌き切る事だけでやっと……!いや、捌き切れてすらねぇ!)
達樹は風の刃を放ち一掃すればいいと考えていたが達樹の放つ一撃よりも悲哀が放つ弾丸、玉数の方が圧倒的に早い。尚且つ弾切れの様子も一向に見られない。
(余りにもジリ貧すぎる……こっちは着実にダメージを蓄積し続けてる。
この明らかに毒々しい方の虫は多分あんま触れちゃダメなやつだ……!この前のデブ憎愚の時見たくろくに動けなくなる!)
疾風の力を会得した事で近距離での肉弾戦以外にも戦闘の幅が広がった達樹であったがその力を十分に扱うに至るには余りにも日数が経過していない。
現状高度な技術を持ってしての技は完全顕現した上で春風大我に代行してもらう必要がある。
「無い頭こねくり回して考えろ。どうすればこの状況を打破出来るか。どう立ち回れば俺に一撃入れられるか……余り時間はくれてやらねぇぞ」
「上から言ってくれやがって……!!」
(奴の武器は二丁拳銃のみ。近距離戦闘に持って行きさえすれば俺のペースに持っていける。憎力切れでの弾切れを待って捌く事に集中してたが……奴の余裕ぶりから見てあんま考えない方がいいな)
相手は上級。達樹がいくらアイドル因子の力を引き出すことに成功したとは言えそれだけでは埋まり切らない圧倒的差が確実に存在していた。
一向に勢いが衰えない悲哀の猛攻。達樹は想力を一定数消費し自分の周りに疾風の刃を発生させ衝撃波を放つ大技「サイクロッドフィネル」で弾丸を一気に薙ぎ払う。
「お見事だが……その場凌ぎにしかなってねぇなそれは」
再度仕切り直しにこそなったが余り意味を為さず悲哀から大量の弾丸が射出される。
想力を浪費しスピードを上げ、弾丸から距離を取るため絶え間なく移動を続ける。
(圧倒的格上……上級は恋さんですら倒し切れなかった相手だ。倒し切るって線は悔しいが一旦捨てて撤退させる事を念頭に入れて戦うしかねぇか。
それにあいつは俺を殺しに来た訳じゃなく抜き打ちテストだと言ってた。隼人の時も似たような感じだったし何がしてぇんだこいつらは……!)
そう思考してる間にも蟲という弾丸達は達樹へと徐々に距離を詰め始めていた。
(全速力でも追いつかれる……っ!?上等だ、だったらこのまま行ってやる!)
達樹は一直線に悲哀に向けて拳を構え、弾丸達を率いて突撃する。
「うぉらああぁぁぁぁぁ!!!」
相手は拳銃以外何も持ち合わせてはいない。達樹はここぞとばかりに想力を込めて渾身の拳を悲哀へ向けて放つ。
だが突如悲哀の左腕に現れた装甲が達樹の拳を容易に防ぎ切ってしまう。
「いかにもバカが考えそうな安直な策だ。そんなもんは誰しも考えつく平凡な思考だぞ。つまり何が言いたいのかというと……」
「退屈だ!」
悲哀の左腕を纏う装甲は瞬く間に形状を変え、巨大な鉄槌状となり防御の間に合わなかった達樹を捉え殴り飛ばす。
「があっ!!」
強力且つ鈍重な一撃。悲哀の主戦闘は遠距離からの銃撃によるものだが近接戦においてもきちんと対策がなされている。
「一筋縄じゃいかねぇか……」
(ちっ……圭太の憎力が増してってる……!こんなとこで足止めくらってる訳には……)
だが敵もこのまま素通りさせてくれる気は毛頭ない。頭をこねくり回して次の手を模索する達樹に大我から提案が入る。
『私に変われますか』
「策はあんのか」
『あります……かなり荒っぽいですが、確実にあいつに一矢報いる事ができます。その代わり、今日は表に出て来れなくなるかも』
「無茶する気だろそれ」
『無茶しすぎくらいじゃないとあいつには効かないですよ。それに毒性の攻撃をしてくる以上、圭太さんとの戦闘も想定しなきゃならない今長期戦は避けるべき。一気に畳み掛けるしかありません』
完全顕現は己に宿るアイドルを自らの肉体を通じて現世に顕現させる事でスペック自体の大幅増加を一時的に可能とする。
だが力の源そのものを剥き出しにする完全顕現は心臓を剥き出しにして戦うようなものであり文字通り諸刃の剣。致命傷を負う事は両者の死へ直結しかねない。
『心配しなくても絶対私は死んだりしません。まだまだやりたい事、たくさんありますから』
「……わかった。頼む」
達樹は身体を明け渡し春風大我を完全顕現させる。
その外観は勇猛な志を備えた幼い少女となる。
「まぁそうするしか無いわな。ここでハッキリするぜ。てめぇらが今後この世界で生きる価値がある存在かどうかがな」
悲哀は再度二丁拳銃から無数の蟲達を放ち無数の弾丸が大我へ襲いかかる。
「疾っ!」
大我は脚へ想力を注ぎ疾風の如くスピードで移動し追従を回避し続ける。
「お前も逃げるだけか?これが全速力とは思ってねぇよな?」
悲哀の言葉の通り弾丸のスピードは大我の移動速度を上回り始める。二種の弾丸を避け切れない分少しずつ着実にダメージを負っていく。
時間が経過するごとに肉体へのダメージは著しい。
だがそれでも大我は攻め入る絶好のタイミングを伺い続ける。
とめど無く撃ち放たれる弾丸達。その母数が十分すぎるほど蓄積された今大我は瞬時に後方へ移動する。
「ウィンドゥネルグラップ!」
風の想力で創り出した巨大な手が縄状へと形状変化。蟲達をその手中に収め捉える。
そのまま拘束した蟲達を盾にし、蟲の盾を削られながらも無数の弾丸を掻い潜りながら真っ直ぐと悲哀へと全速力で飛び込む。
「良い判断だ。だが全力を出してなかったのは速度だけじゃあない」
「!?」
(でかいのが来る……!!)
「
「
大我へ向けて豪大且つ強靭で鋭利な角を突出させヘラクレスオオカブトを模した憎力の塊が射出される。
そのエネルギー体は自らが打ち出した蟲達を容易に消し炭にして行き瞬く間に大我の懐を貫いた。
「がっ……ぁっ!!」
「ったくこんなもんかよ……もうちょっと頑張って欲しかったんだが……」
「……?」
だがここに来て抱く違和感。
(血が出てない……?)
そして背後に現れた一人の気配。悲哀の背後を取ったのは春風大我。
篦苦失が射抜いたのは春風大我の幻影。霧を元にし自らの虚像を創り出し身代わりとして機能させた。
「あまり頭使うような事は苦手だけど、あなたが舐めててくれたおかげで上手く行ったみたい」
大我は右腕にフル出力の想力も疾風の力を込める。
そして放たれる渾身の拳による衝撃波が悲哀へと炸裂する。
「ドルネイドブラスタァァァァァァ!!!」
全力を込めた一撃悲哀へと直撃する。その必殺の右拳は見事悲哀の左半身を絶大なる破壊力を持ってして消し飛ばした。
「……お見事だ嬢ちゃん。ここは大人しく引かせてもらうとしよう」
想像以上に手痛いダメージを負った悲哀。自らが生み出した渦の中へ入り込みこの場を撤退した。
全力を使い果たし意識が朦朧とする大我は完全顕現を解除。身体の主導権が達樹へと戻る。
「大我!!」
『えへへ……やりましたよ……達樹さん……でも、今日はもう動けそうにありません……最後にこれだけ……』
大我は最後の力を振り絞る。ヒーリングウィンドを使い達樹の毒を解毒するとそのまま意識を失ってしまう。
「よくやった……!後はゆっくり寝てろ。圭太は俺が絶対止めてやる!!」
―――― to be continued ――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます