第38話「三分間に全てを賭けろ!闇夜失闇での死闘」
金塚謙也を未萌奈が創り出した仮想戦闘特化空間。
その持続時間は約3分。この約3分間金塚謙也は五感全てを剥奪されている。
未萌奈への反撃を許さない程の怒涛の連続斬撃を一切の隙を与えずに絶え間なく与えていく。
通常であればこの3分間で容易に仕留め切れる大技であるが未萌奈は発展途上にあるため過剰に想力消費を喰らう闇夜失闇中は後半に至るまでその破壊力は著しく劣化してしまう。
現在1分半が経過。徐々に
ザシュッ!!
斬りつけられた謙也の横腹から血が飛び散る。
未萌奈はこれまでとは違う確固たるダメージを与えた手応えに喜悦するが慢心はせず攻撃の手を緩めない。
(残り1分ちょい!このペースならいける!奴も完璧に感覚を取り戻してる様子は見られない!押し切れる!!)
謙也の身体が無数の斬撃を帯びて行く。各箇所から飛び散る血飛沫。着実に未萌奈は想力を取り戻していきつつあった。
刃にありったけの想力と殺意を込め重く手痛い一撃を加えて行く。
確実に謙也を追いやって行く中。残り時間は10秒を切る。
(ここらが潮時……一気に首を刎ねて、殺す!!)
残り時間限界寸前となった未萌奈は黒鴉の太刀筋を謙也の首元へ向けて全想力を込め思い切り止めの一撃を振り切る。
だがその刃は首筋を通る事はなかった。謙也は左手で鷲掴みにし未萌奈の太刀筋を止める。未萌奈は全身に悪寒が走った。
「俺の首取りたきゃ四肢全部斬り落としてからにするんだったな」
「なっ……!?」
謙也は力強く握ったままの黒鴉を手繰り寄せ、未萌奈へそのままボディーブローをぶちかます。
あまりにも鈍重な一撃に防御に割く暇は一切無く、勢い良く殴り飛ばされる。
「う……ぅぅ……!」
「なんで土壇場で対応出来たんだこいつはって顔してやがるな。気分が良いから教えてやるよ。土壇場だからこそだ」
「ど……どういう意味よ……」
「あの空間内ではほぼ全ての五感が9割9分無かった。お前の姿だって見えないし痛覚もねぇもんだからまともに攻撃をくらってても実感がねぇ。
どうしたもんかと思ってたんだが時間が経っていくに連れて少しずつ五感が戻って来てる事を確信した。ぼんやりだがお前の姿も捉えられるようになってた。」
「な……にぃ……」
「同時にお前の攻撃も少しずつ威力が増していってる事もわかってた。この仮想空間が解けるギリギリで全力の一撃をかましてくるだろうってのは容易に想像出来た。
後はそれ待ちで想力の高まりと殺気を迅速に察知して対処するだけ」
「五感は完全に奪ってた……!効果時間だって後半になるに連れて弱まっていくなんてあり得ない……!!」
「んなもん知らねぇよ。最後の一撃、俺にはハッキリと見えたぜ。お前の姿も殺気も視線も全部な。察するにお前の練度不足ってとこだろ」
「…………っ!!」
「でもまぁ凄いと思うよ。本気で殺すって意思がビンビン伝わって来たし……まじで死ぬかと思ったからな」
「まだ……終わってない……!」
未萌奈は未だ勝機から目を背けていない。必死に次の手を思考する。
だが先ほど受けた一撃は昨晩に比べても威力は更に増しておりろくに立ち上がる事すらままならなかった。
「ははっ!辞めときなって。もう立つ事すらできないだろ。あばらだってイってる筈だし」
「うるさい……あんたは私に殺される事だけ考えてろ」
「良い加減さ。屈服して欲しいんだよね俺に。力の差はもうわかったでしょ?
俺にとって女は2種類しかいない。俺が何もしなくても俺を溺愛してくる女と嫌悪感剥き出して俺を拒んでくる女。
前者は飽きて来たら適当にボコして殺すだけだけど後者が特にトキメクんだよね」
「わからせ?って言うのかな。そういう反抗心剥き出しで死ねだのキモいだの言ってくるやつを気が済むまでボコボコにする。
そうしたらきっと女だからってここまで殴られたりした事なかったんだろうなぁ。無様に泣き喚きながらもうやめてだのなんだの言ってくんの。そっちから喧嘩売って来たのにな。
そっからは媚びへつらわせて奴隷みたいにしてよ。飽きたら捨てるってのが俺の生き甲斐なの」
「まぁ簡単な話。今すぐ人権捨てて無様に土下座でもしてちょうだいって話だ。お前のその醜態見るまで殺したく無いんだよ」
「……気色悪い趣味」
「はぁ……うっかり殺しちゃわないか心配なんだけど……仕方ないか」
ドゴッ!!
バキッ!!
ズガァッ!!
倒れ込む未萌奈に対して容赦なく死なない程度に蹴り続ける。
「ほらほらぁ痛いでしょ?もうやめてって縋りついて来いよ早くさぁ!!」
どれだけ痛めつけても折れない未萌奈に対して苛立ちが募って行く。謙也の蹴りもより過激になり未萌奈は必死に蹲ることで耐え忍ぶ。
我慢の限界が訪れた謙也は未萌奈の頭を掴み、そのまま片手で持ち上げる。
「いつまでも気長に待ってやる程気は長くねぇんだ。そろそろ飽きた。みっともなく死んでくれ」
謙也の拳に憎力が漲って行く。
明確に実感し出す。目前まで死が迫って来ている事を。
未萌奈は意識も朦朧と始め身動き一つ取れない。発言一つもままならないでいた。
(悔しいな。絶対勝ってやるって思ってたのに。結局みんなの足引っ張っちゃっただけだったな……)
――――――――――
『未萌奈は……幸せな旦那さん見つけてずっと幸せな人生送ってね……ちゃんと長生きしなきゃダメだよ』
――――――――――
親友の最後の言葉を走馬灯の様に思い出す。
(ごめんさゆ。約束守ってあげれないや)
「死ね!!!」
謙也の拳が未萌奈の顔面を向けて繰り出される。
死を覚悟して未萌奈は静かに瞳を閉じる。
ドガァァ!!
直後激しい打撃音が鳴り響く。だが不思議な事に痛みはなく目を開けると謙也は突如颯爽と現れた一人の男により蹴り飛ばされていた。
倒れ込む未萌奈を男はサイドテールを靡かせながら優しく抱き抱える。
「わりぃ。遅くなっちまった」
「達……樹……」
ーーーー to be continued ーーーー
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