第33話「漢としての意地!全力を込めたデストヴィアインパクト!」
「うおらぁぁ!!」
両者タイマンでの戦いが勃発する。達樹の激昂しながら振るった拳を謙也は敢えて顔面で受け止める。
「なにっ!?」
「あぁ〜〜やっぱり緩いなぁ……全然痛くない……綺麗すぎるんだろうなぁ」
「んだと……っ!」
達樹は怯まず連撃を加えていく。だが攻撃を加え続ける達樹の手足には手応えが無いにも関わらず反動のダメージが蓄積されていく。
「俺の力はシンプル。殴る蹴るくらいのシンプルな事しか出来ないが、その肉体の強度は女を虐待する毎に増していく!対象の女が俺に強い感情を抱いていれば尚更その効力は高まる!!」
ドガァ!!
達樹の腹部へボディーブローがクリーンヒットする。これまでの殺して来た女の数。先ほどの未萌奈との戦闘により謙也のスペックは軒並み上昇していた。
膨大な血を吐き達樹は殴り飛ばされる。
『達樹さんっ!!大丈夫ですか!?』
「……大丈夫だ」
(いってぇ……!一気に削られた。狙われたくねぇ所を的確に射抜いて来た……!)
『でもフラついちゃってますよ……!ここは私が一旦変わって相手の弱点を探って……』
「ダメだ!危険すぎる……あいつは何としてでも俺が仕留める」
『で、でも……』
「大丈夫だから!!あいつは邪悪だ。俺に任せとけ」
少女は達樹の内部へと潜める。
「見てるだけで伝わってくるなぁ……俺みたいなDV振るうような男は同じ男として許せない!って感じでしょ。
ガキくさい思考だよそれ。出来る男はみんな女をボコって手懐けてるの。わかる?」
「わかんねぇよ……!!」
(一か八か使わせてもらうぜ!!)
達樹は足元の地面を思い切り踏みつけ、土属性の力を宿した想力で簡易的な土壁を作り出す。
これは以前の最愛恋との実戦演習時に恋が使用した技である。
原理、成り立ちは全く理解はしていない。なんとなくの記憶を頼りにしての突貫工事で作り出された土壁は硬度はほぼ無く恋ほどの精度は持っていない。
だが達樹の狙いは防壁を作ることでは無くあくまで一瞬だかでも隙を作り出す事であった。
「?」
達樹の狙い通りほんの1秒にも満たない間であったが謙也に隙が生じた。
なんの意味もなさない防壁を作り出した達樹に対して何がしたいのかと疑問に思った隙に達樹は想力を脚へと込めて高速移動、瞬時に謙也の懐に入る。
(持久戦は出来ない。これで決めるしかねぇ!!)
「デストヴィアインパクトォ!!」
持ちうる想力を込めた全力の右ストレートが謙也を捉える。だが……。
「ちょっとうってしたな」
(く、クソッタレめ……!!)
「お前は女の事何もわかってない。寄り添ってやれてない。そんなしょうもない男が俺に勝てる訳ないだろ」
「ぐっ……!!」
達樹の顔面が鷲掴みにされ身動きが取れなくなる。
ドゴォォォ!!!!
達樹の顔面を謙也の右ストレートが直撃する。そのままの勢いで吹き飛ばされ達樹の幻身が解かれる。
「じゃあ邪魔者もいなくなったし、遠慮なくそこの地雷ちゃん殺させてもらうね」
「や、やめろ!!!」
止めようにも身体がぴくりとも動かない。
想力も切れており幻身する事もできない。
何の一切の抵抗ができない。
「くそがあああぁぁぁぁぁ!!」
気を失っている未萌奈に謙也の殺意を込めた拳が迫る。
未萌奈へその拳が直撃しようとしたその瞬間。地を這う巨大な斬撃が急襲。謙也の右腕を両断し咄嗟に謙也は後退する。
「なんだ!?」
「それ以上の愚行は……控える事を勧める」
「み、巳早さんっ!」
未萌奈と達樹の窮地を救うべく馳せ参じたのは仙道巳早。
片手にサーベルを携え圧倒的な威圧で謙也の動きを封じる。
(凄まじい圧だ……一瞬でも気を抜けば意識を持っていかれかねない……!!)
謙也は後退りしながら徐々に戦線離脱を図る。
「身の程は弁えてるつもりでな。あんたとはやり合わない方が良さそうだ」
「このまま逃がすと思うか?」
「……選りすぐりの女をあんたにあてがってやると言ったら?」
「間に合っている」
「……だろうな」
逃亡しようとする謙也に対して瞬時に巳早は高速の斬撃を飛ばす。
だが謙也を捉えようとした瞬間異空間への渦が現れる。
その渦は謙也を吸収し消滅した。
(奴の能力では無いな……別の憎愚が瞬時に介入したか)
「…………うっ……」
「!……達樹君!」
気を失った達樹に巳早が駆け寄る。
――――――――――
「うっ……ここは……」
渦に巻き込まれた謙也は人気のない高架下へ移動していた。
困惑する謙也の前に人影が現れる。
「間一髪だったね。いやまじで」
「あ、あんたは……?」
「僕は負薄。今の君の生みの親でもある」
「!……じゃあずっと俺に語りかけてきてたのはあんたか」
「そう言う事。僕からしたら可愛い息子のような物だからさ。みすみす殺されるのを黙って見過ごせなかった訳」
「あ、ありがてぇ……助かったよ」
「いえいえ、それに君の思考は結構僕好みだからね。期待してるんだ」
「へへ、心配しなくてもちょっと休んだらすぐ女共を皆殺しに行ってやるよ」
「是非ともそうしてくれ。頑張ってもっと強くなってね。ディブ君♪」
――――――――――
同日 Delight 救護室 23:10分
「……ん、ここは……」
達樹が目を覚ますとその場所には見覚えがあった。
Delightの救護室。身体には治療の跡があり大きな傷はあらかた治っていた。
「目が覚めたか」
「巳早さん……」
声の先を見るとそこにいたのは巳早。あの後重症の達樹と未萌奈をDelightまで運び治療を受けさせていた。
横のベッドを見ると静かに眠る未萌奈が横たわっていた。
「ありがとうございました。巳早さんが来てくれなかったら……俺も未萌奈ちゃんも殺されてた……」
自分の非力さを悔やむ。全く歯が立たなかった。しかも今に始まった話じゃない。
今回の憎愚は5年間という月日を経て力を蓄えていた強敵。だとしても負けていい理由にはならない。誰かを守れなくていい理由にはならない。
もっと強くなりたい。だがその意思に反して自らの力は何故か共鳴する事がない。その現実に歯痒さを猛烈に感じる。
「今の自分よりも格上の敵は確実に存在する。だがその抗いようのない現実の前に焦り、自分を見失う事こそが強さへの遠回りになる」
「で、でも……!」
「山田京子は今日はDelight施設内にて保護される事になった。達樹君の身体も一晩明かせば良くなるだろう。
だから今一度、自分自身と向き合ってみるといい。何か答えが見つかるかもしれん」
「自分自身と向き合う……」
巳早はそれだけ言い残し病室から去っていった。
それから日を跨ぎ時刻は2時を超える。自分なりに振り返り問題点や反省点を考えていたがそれらしい答えは見つからなかった。
「……ん……」
横のベッドから微かに声が聞こえてくる。
ずっと眠っていた未萌奈が目を覚まし身体の痛みに抗いながらも上体を起こす。
「おい、無理すんな。寝とけって」
「……うるさい、指図しないで」
そう言う未萌奈の目からは非力な自分を許せない怒りの感情が伝わって来た。
未萌奈もまた達樹と同じように金塚謙也という許せない存在に対して一矢報いる事もできなかった自分に耐えられないでいた。
「明日は街に散策に行く。あいつを見つけ出して確実に殺す」
「なっ……無茶だ。お前重症じゃねぇか!今度こそ殺されちまうぞ!」
「うるさい!!私はあいつが許せないの……!あんな奴がこの世にいて今も誰かを襲ってるって考えただけで腑が煮えくり返りそうになる。なんとしても殺さないと気が済まないの……!」
「なんだってそんな……」
「私には親友がいた。たった一人の……私にとってかけがえの無い大切な友達。
でもその親友はカスみたいな男のカスみたいな理由で殺された」
「な……」
―――― to be continued ――――
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