第128話 ヘブラァ、最期の作戦

 100億匹のダークソルジャーは一瞬にして塵と化した。

 俺の指パッチンの衝撃波で、秒で砂になる。


「あぐぅうううううううううッ!!」


「安心しろよ。お前はこんな風に倒さないからさ」


「あわわわわわわわわ……!!」


 突然、脳内にヘブラァの声が響く。


(こ、こうなったら奴の力を奪うしかない。 究極アルティメット 吸収魔法ドレインタッチで、全ての能力を奪ってやる)


 ふむ。

 どうやら、さっき一緒に入った 大賢者の輝く部屋ワイズマンルームの効果が残っているらしい。

  同期シンクロ状態を調整すれば、相手の考えていることが、俺だけにわかるようになるんだ。もちろん、俺の考えは向こうに伝わらないようにしている。

 なので、ヘブラァがなにを考えているのか一方的にわかる。


「だったらこれはどうだぁあああああああああああああああああ!! 100万匹の 地獄火炎鳥弾ヘルフレアバードだぁああああああああ!!」

(これは目眩しにすぎん。炎の鳥で奴の視界を奪う。消滅させる瞬間でもいい。奴の背後に周って 究極アルティメット 吸収魔法ドレインタッチで奴の能力を全ていただく! ククク。バカが! レベルが上回って油断したな!)


 安心しろ。

 俺は油断はしない。


「死ねぇえええええええええええええええええええええええええ!!」

(さぁ、油断しろ!!  地獄火炎鳥弾ヘルフレアバードを消滅させるんだ。その瞬間が命取りだ!!)


 俺はヘブラァの背後に回った。


「もちろん、 地獄火炎鳥弾ヘルフレアバードは消すさ」


 俺の手はヘブラァの背中を触っていた。


「なに!? いつの間に!?」


地獄火炎鳥弾ヘルフレアバードが爆発したら世界は滅ぶからな。そんなことはさせん」


パチン……!!


 指を鳴らすと100万匹いた 地獄火炎鳥弾ヘルフレアバードが花火のように破裂した。


「うぐぅうう!」


「それとな。 究極アルティメット 吸収魔法ドレインタッチは俺も使えるんだ。だから、お前の力を奪わせてもらった」


「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!? ど、どうしてそのことを!?」


「ああ、そんなことより、自分のステータスを確認した方がいいんじゃないか?」


 ヘブラァは汗を垂らした。

 自分のステータス画面。そのレベルが666になっているのだ。


「ろ、666だと? 666だとぉおおおおおおおおおおお!?」


「初心忘るべからずってやつだな。それがおまえの初期の実力だろ? 大きさが2メートルくらいなのは神聖ヘブラァの名残だな」


「あああああああああ……!! そ、そんなバカなあぁああああああああ!!」


 さて。

 俺の出番はここまでだな。


「じゃあ、アルジェナ。あとは任した」


「あは! 流石はザウス! わかってるじゃない!!」


「いつもの正義のやつ。頼む」


「任せといて! 正義の鉄拳を喰らわせてやるわ!」


「みんなの怒りを代弁してやってくれ」


「当然よ! 正義の拳が悪を砕く!」


「……あくまでも代弁な」


「ふふふ! 当然よ! 正義の鉄拳なんだから!」


 アルジェナは鼻息を荒くして満身創痍。拳をパシンパシンと叩いて嬉しそうだ。


「さぁて、魔王ヘブラァ。おしおきの時間だね」


「ふ、ふざけるなぁ!! 雑魚種族の人間がぁあああ!! 貴様ごときがわれに触れることもできんわぁあああああああ!!」


「安心しなよ。今のあんたなら 七段階強化チャクラ イヴォークは使わないからさ」


「ク、クソがぁあああああ!! 殺してやるぅ! 死ねぇええええええええええええええ!!」


 ヘブラァが彼女に襲いかかる。

 しかし、それよりも早く、アルジェナの拳が奴の頬を捉えた。


「オラァアアッ!」


「ほげぇえッ!? な、なにぃいいいいい!? 人間の攻撃がわれに当たるだとぉおお?? ざ、雑魚種族が??」


「雑魚かどうかは私のレベルを見てから言えっての」


 そこにはレベル24万の表記。


「げっ!」


「んじゃああ、みんなの想いをこの拳に乗せていってみますか」


「ひぃいいいいいいいいいいい!」


「ジャスティス アルジェナ マシンガンパンチ!! オラオラオラオラオラァアアアアアアア!! よくも私たちを殺してくれたわねぇえええええええええ!!」


 アルジェナの連撃。

 彼女の鉄拳がヘブラァの体をボコボコにする。


「まずはあたしの怒りだぁああああああああああああああ!! オラオラオラァアアア!!」


「ホゲァアアアアアアアアアアアアッ!!」


 うん。

 まぁ、私怨を晴らすことも重要だろう。


「ザウスをこけにしまくった分だぁあああああああ!! オラオラオラァアアアアア!!」


「ハギャァアアアアアアアアアアアアッ!!」


「そして、お前に殺されたみんなの怒りぃいいいいいいいい!! オラオラオラオラァアアアアアアアア!!」


「ブベラァアアアアアアアアアアアアアッ!!」


「最後にぃいい、正義の鉄拳──」


 と、彼女の拳がヘブラァの顎を捉える。


あたしの怒りだぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 やっぱり私怨が強かった……。


 ヘブラァは遥か彼方へ飛んでいった。

 商人のナンバは目を瞬かせる。


「あいつ……。死によったんか?」


 ふふふ。

 まぁ、悪党の最期はこうなると決まっている。


「殺すなんて優しすぎるさ。奴には、それ相応の罰を受けてもらわないとな」

 



〜〜魔王ヘブラァ視点〜〜


 うう……。


 こ、ここはどこだ??


 わ、われは死んだのか?


 いや……。


 い、生きているぞ……。


 木の天井が見える。


「ブラァアアアアアアアアアアアアアアアアア……!!」


 ここがどこかは知らんが、われは生きている。

 バカめがぁあああああ!! あのアルジェナとかいう女。ミスったな。

 クハハハハハ! 


われは生きているぞぉおおおおおおおおお!!」


 突然、扉の向こうから笑い声が聞こえる。

 それは老人の声だった。


「フォッフォッフォッ。気が付いたかの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る